続々・きれいなお城 〜分別編


舞台はいきなりお城の中から始まります。
はい、この話し、前回の続きですから。
ああ、でもあまり期待されちゃってもこまるんです。
前回お話しが終わったところから、そうですねえ、二時間数十分経過した時点だと、考えていただければ。ハイ。
んでもって、その前回から現在までの二時間数十分の間にあったかもしれない、あーんなこととか、こーんなこととか、どーんなこととかは、ご自由に想像しちゃってやってください。

んで。今現在、刻々と近づくお別れの時間に、ふたりは名残を惜しんでるわけ。

相見時難別亦難 ―― 相見るときは難く別るるも亦た難し

ってな風情でさ。
自由に逢うのもままならないふたりだから(ほとんとかよ?)逢瀬の時間の終わりはいっそう離れがたいものなのよ。
かといって、いつまでも抱き合っているわけにもいかず。
ここは分別あるおふたりですから。
残り時間十分を切ったあたりで、身支度をはじめた。
んでさ、いちおうここもホテルなんだから、さっき飲んでた飲み物のペットボトルなんか、放っておけばちゃんとお掃除の人が片付けてくれるんだけどさ、なんだかそういうことできない性分なんだろうねえ、コレット、丁寧に捨ててます。

キャップはプラスチックゴミ。
周りにはってあるラベルもはがしてプラスチックゴミへ。
んで、ペットボトルの方は、ペットボトル専用箱へ。
完璧です!

ティムカが、見慣れない所作に首を傾げてます。

「ずいぶん、細かくわけるんですね?」
「先週から、条例が変更されて、ゴミ分別が細かくなったのよ。なんか、今度聖地でも実施するみたいよ?」
「そうなんですか。これから、気をつけなければいけませんね」

みたいよ、ってコレット、聖地ってあんたが法律じゃないの?
まあ、ゴミ分別とリサイクルの決まりまで、手が回らないか。
いやそれよりも。タイトルの『分別編』って『ふんべつ』じゃなくて、『ぶんべつ』なのかよ、もしかして。
もしかしなくても、そうなんだけどさ。

今までゴミ分別なぞしたこと無いであろうティムカが、素直に頷くものだから、コレットもちょっとだけ調子にのっていろいろ説明し出す。

「これはプラスチックゴミだから、こっち。ラベルに、ほら、リサイクルマークがついてるでしょ?」
「ああ、本当ですね」
「あと、こっちのティーバッグの袋も『紙』マークがついてるから、紙ゴミ。紙もリサイクルできるのよ」

紙ゴミって、住んでいる地方によってはイメージが湧かないみたいだから説明しておくと、ティッシュの箱とか、お菓子の紙箱とか、レシートとか、とにかく紙でできたゴミ。これまでは燃えるゴミだったんだけど、最近では古新聞と同じでリサイクルの対象になってるわけだ。
閑話休題。物語に戻ろう。

「使ったティーバッグはどうするんですか?」

今度から聖地でも実施するとあって、ティムカ、実に熱心に聞いてます。
「それは生ゴミ。家庭ゴミとか、燃やせるゴミとか言うわよね。こっちのゴミ箱に、ポイ。こういったゴミは、リサイクルできないから ナドラーガ行き 焼却処理ね」

わかりました、と頷くティムカ。
部屋の中のでここ数時間に発生したゴミを捨て始めます。
そう、ここ数時間で発生したゴミ……。

「これは、プラスチックですね」

素直にラベルを確認して捨てたそのブツは。
某ゴム製品の入っていた袋。
いや、間違ってないけど。
普通そういうのは外から見えないようにティッシュとかに包んで燃やせるゴミとして捨てないか?
べつに、それでも許されるんだし。
(作者註:プラスチック部分と紙部分の剥離が難しいものや、著しく汚れているプラスチックなどはそのように捨ててよい、と作者の住んでいるとことでは許されます)

コレットもそれをみて流石に赤くなったけれど、まあ、間違ってはいないし、なんだか突っ込みいれるのもかえって恥ずかしかったので黙っておいた。
したら、今度はティムカ、なにやら悩んでいる。

「…… これは、どうしましょう …… 」

コレットに聞くにも憚られるという自覚はあるんだけれど、自分では判断しかねるから、つい、口にだして呟いてしまったらしい。
手にもっていたそれは。

後始末したティッシュ。

コレット、真っ赤になりながら手で顔を覆ってつぶやきました。
「…… 生ゴ …… 燃やせるゴミです …… 」
生ゴミ、といおうとして、あまりの生々しさ(文字通り)にわざわざ燃やせるゴミとかっていいなおしてます。
でもティムカは、いまいち納得いってないみたいです。

「紙ゴミじゃないんですか?」

ありえねえから、それ。
どうやってリサイクルすんだよ。
コレット、ちょっとだけ青ざめてもう一度、言いました。

「間違いなく、生ゴ …… 燃やせるゴミですから。捨ててください …… 」

彼女にはっきり断言してもらって、ティムカもその基準はわからないものの頷いて捨てる。
でも、更に難関が待ち受けていた。
流石にこれは聞いちゃいけないと、彼もわかってるんだけど。
でも、やっぱりわからない。

手にもっているのは。
ティッシュ。
ただのティッシュはさっき生ゴミだっておしえてもらったけれど。
今度のティッシュは、中に、使用済み(ぴーーー)がはいってるんだよね。
きっと、ティムカ、脳内では。

外のティッシュはさっきの例からして紙ゴミでなく燃やせるゴミ。
でも、なかのものは?
プラスチックゴミ?
でも流石にそれは。
ああ、でも綺麗に洗えば。
でも、やっぱりそれでも流石に ……

とか、色々ぐるぐるまわってるんだと思うのよ。
コレット、それに気づいて、蒼白な顔で彼の手からそれをひったくり、燃やせるゴミのゴミ箱へぽいっ、と捨てた。
ティムカ、思わず。

「あ、それは他のと違って中に ―― 」

「わかってます、わかってます、わかってますからそれ以上言わないでくださいっ!ティムカ様! アレは生ゴミです!間違いなく生ゴミですからっ!」

―― 十六歳元王様よ、ここは素直に、十七歳元庶民に従っておけや。

◇◆◇◆◇

んで。
数日後、聖地でも新しいルールでのゴミ分別が実施された。
お昼休みのお馴染みの三人のメンバーでも、そのことが話題に上っている様子。

「けっこう、悩むよな」
「うん。つい、いつもの癖でぽいって捨ててから、あっ、って思うことたくさんあるよ、僕も」
「この間エンジュから貰った、どっかの星の菓子の箱、外箱は紙ゴミで、中袋はプラスチックだったし」
「あ、あのお菓子美味しかったよね、僕たけのこの形の方が好きだったな」
「オレは、きのこの方がいい」

とか、そんなかんじで。
ティムカは、まあ、いつもの様子でにこにことふたりの話を聞いていたわけだけど。
ユーイがいつものように、しょーもない質問をする。

「あのさ、悩むんだけど、鼻かんだあとのティッシュって紙ゴミなのか?」

この疑問に。
もちろん、ティムカがにっこり笑って。

「燃やせるゴミですよ」

そう答えたということを、皆さんにはお伝えしておく。


―― オシマイ

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…… 超・シリアスを書くと、ギャグ神様が降りてくる法則 …… (遠い目)

なんつうか。
「故国へ還る日」完成直後に書いた話が、コレ?
コレでいいんですか?私?ほんとに?

我ながら、自分の脳みそ、覗きたくなりました……。

2005.07.24 佳月