◇◆◇◆◇
吐息が耳にかかる。
あなたが私の耳たぶを甘く噛む。
くすぐったいような、少しだけ痛いような感覚。
私は肩をすくめて、白いシーツを探り、
少しだけ身をよじった。
それでもあなたは私の体から離れず、
耳だけではなくて、首筋や唇を啄ばんでは軽く噛む。
触れるか触れないかのささやかな感触で、
指先が私の体の輪郭をなぞる。
あぁ、と吐息のような声を漏らすと、
あなたは、薄暗い、月明かりだけの部屋の中で、
甘く微笑んだ。
そんな風に笑えるだなんて、
随分余裕な態度に少しだけ腹を立てて、
私はそっぽを向く。
私を見てはくれないのですか?
懇願するような言葉に、つい視線を戻してしまう。
悲しい顔なんてしていない。
あなたはやっぱり甘い笑顔のまま。
月の淡い光に照らされて、
瞳を煌かせ、浅黒い肌を艶かしく輝かす。
艶のある姿に、私は一瞬言葉を失うけれど、
何か反論したくて、口を開く。
けれど、開かれた唇に、あなたは唇を重ね、
差し入れられる、赤い舌。
二人で奏でる水音が耳の奥で響く。
息苦しくて、くらくらしてしまう私の頭を、
あなたは、昔よりずっと逞しくなった腕で、支えた。
唇を離して、あなたの指先は私の膨らみや、
湿る場所を探る。
同時に、私の肌を滑るようにあなたの唇が這っていく。
動きにあわせて、あなたの長い黒髪が、
するりと落ちて、微かな刺激を私に与える。
そんな小さな刺激でも、
私は声をあげずにはいられない。
ふと、あなたの動きが止まり、
静かに私と見つめ合う。
きっとそれが合図。
私は『愛して』とだけあなたに言った。
薄暗い部屋で、あなたの肌の色がより一層濃く見えた。
重なる肌からあなたの香りがする。
遠い異国の香り。
ここはどこ?
どこか遠い国なの?
一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなる。
そんな、幻のように危うい時。
前後も左右も感覚を無くして、
私はうっすらとした痛みと、
眩暈を起こすような快楽と、
あなたへの愛に翻弄されて、
この時が幻でない事を心の奥底で願った。
火照る私の体を、
あなたは何度も何度も強く抱きしめる。
貫かれる体から、
何かが溢れてくる。
「愛しています・・・ティムカ。」
それは、月の光のもとでしか言えない言葉。
あなたがその言葉を飲み込むように、
私に激しいくちづけをした時。
私はあなたへと溶けた。
そして、
月の光を二人で浴びて、
私達は、最大の禁忌と、
最上の愛を手に入れた。
end
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ほぅ。
語りたきこと多々あれど、ただため息をひとつ零して。
サテここは、ふたりの愛と
お読みになった皆様のその余韻を壊さぬよう。
ただそっと。
月明かりも届かぬ闇にまぎれてピエロは退散いたしましょう ――
(ええとですね、AIRさん宛てに送信したメールには、もっとアホな叫びが書き連ねてあったのです(笑))
なお、一緒に頂いた絵はこちら→
「月光」
でも、これは語ろうかな。
この物語を頂くまでの経緯です。
先日、
AIRさんのサイトで本棚の改装が行われて、背景に素敵なイラストがかかれておりました。
ティムカや、エルンストや、ジュリアスが各本棚で本を読んでいるのですが、その後ろになにやら
アルファベットでかかれた文字があったのです。
『Au clair de la lune 』からはじまるそのおそらくは詩。
それが私は、どうにも気になって、いろいろと調べてみましたら。(インターネットって素晴らしい)
フランスの童謡であることが判明。
さらにその歌詞を訳してみたらば、まあ、まあvvv
なんて、思わせぶりな内容ですことvvv
(私はフランス語はさっぱりです。英語版がGoogleですぐに見つかったので、それを辞書首っ引きで(笑))
さて、そのとき実はAIRさんのサイトでミニイベントをしていました。
「本棚にかかれている歌の題名をあててください。正解者にプレゼント」
そっこで応募しました(笑)
題名は『Au clair de la lune』
そして頂いたのが、その歌の歌詞からイメージされたと言うこの物語なのです。
歌詞が気になる方は、ぜひ調べてみてくださいねー。
日本語に訳してあるサイトもあるそうですv
佳月 2005/01/22