守護聖対抗大運動会・その7「玉入れ」




◇◆◇◆◇



チーム分けは以下の通りです。
        金組      黒組
      ジュリアス   レオナード
      フランシス   クラヴィス
      ランディ    ユーイ
      ティムカ    リュミエール
      オスカー    チャーリー
      マルセル    セイラン
      エルンスト   ゼフェル
      メル      オリヴィエ
      ヴィクトール  ルヴァ

◇◆◇◆◇


さて、午後の部。
第一競技は、玉入れ。
金、黒、両軍分かれてカゴをかこむ陣形に並ぶ。
こちら黒組陣地では、ゼフェルが眉根を寄せてオリヴィエに詰め寄っていた。
「おい、オリヴィエ、あれ、見てみろよ?」
さも大事件、というようにゼフェルが指差す方向には、敵軍の選手の中で金色に輝くお手玉(略して読まないようにね!?)を両手で弄ぶアリオスの姿があった。
「なんでアリオス出てるんだ?」
「ああ、その件なら、さっきティムカから説明があったよ。フランシスがさっきの大玉転がしのダメージから回復していないから、代わりにアリオスを出させてもらう、って。」
オリヴィエのサラリとした説明では、ゼフェルは納得しない。
「おかしいじゃねぇかよ、それ?フランシスの代わりにアリオス、なんて明らかな戦力アップだろ?人数があわねぇっていうなら、こっちの人数を減らす方向でいけばいいだろぉ!?だいたいあっちの指揮官はヴィクトールじゃなかったのか?なんでティムカなんだよ、っていうかあいついいかげんにユニフォーム着ろよ!!アレからずっと上半身ハダカじゃねぇかよ!?」
エキサイトして怒りがあらぬ方向にむくゼフェルに対し、オリヴィエはあくまで平静である。
「大丈夫だって、ゼフェル。こっちには秘密兵器があるからね〜☆」
「秘密兵器?」
「まぁ、見てな、って!!」
オリヴィエがそう言うと同時に競技開始の合図の笛が鳴る。
両軍一斉に自軍のカゴめがけてお手玉を投げ入れる中、オリヴィエは、違うものを手にしていた。
「ほら、クラヴィス、行くよっ!!」
その掛け声とともにオリヴィエがクラヴィスに投げたものは、玉入れに関係があるようなないような、微妙な一品・・・キャッチャーミットであった。
クラヴィスは、それを受け取るとしばらく無言で眺めていたが、やる気がなさそうに、それを左手にはめた・・・ と、そのとたん、人が変わった様に、キビキビと背筋を伸ばして、その場にしゃがんだ。そしてその姿勢のまま右に左にジャンプし、自軍の選手がカゴに入れ損ねたお手玉を次から次へとキャッチしては、外した選手に投げ返した。そして最終的には、敵軍から大暴騰してくるランディにまで、お手玉を返してやっていた。
「なんだよ、これじゃまったく戦力にならねぇじゃねぇかよ!!秘密兵器が聞いて呆れるぜ!!」
ゼフェルの怒りもごもっともである。
「あ、あれぇ?こんなはずじゃなかったのに・・・」
慌てるオリヴィエに、リュミエールが助け舟を出す。
「オリヴィエ、野球の時このまえと違って、それでは役に立ちませんよ。この場合はこれです、クラヴィス様!!」
そう言ってリュミエールが投げた何物かを、クラヴィスは座ったままミットでキャッチした。
「これは・・・?」
そして素直に渡された、黒ブチの丸メガネをかける。とたんにクラヴィスは身軽に立ち上がり、俊敏に動く。
「クラヴィス様!!」
続いてリュミエールが投げたお手玉を、クラヴィスはしっかり両手で受け止めて、
「クラヴィス様、左手は・・・」
「・・・そえるだけ!!」
キレイなジャンプシュートをキメた。
「あはは、そうか・・・そうキタか。」
オリヴィエがリュミエールの機転に感心している間にも、クラヴィスは次々とゴールをキメていた・・・

一方金組は。
「あぁ、ランディ!!ダメだよ、そんなにチカラいっぱい投げたら!!もう少し手加減しないと!!全部外れてるよ!!ああ〜、向こうのチームのカゴに入っちゃったよ〜!!
ジュリアス様!!別に玉汚れててもいいんですってば!!いちいちふかないで投げちゃってくださいよぉ!!
オスカー様もジュリアス様の真似することないじゃないですかっ!!そんなにまでしてご機嫌とりたいんですかっ!?
ヴィクトールさんもいつまで落ち込んでるんですか!!いい大人がみっともないですよ!?
ティムカー!!投げる前にいちいち転がさないと投げられないのぉ?それが白亜宮の正式ルール?あ〜ん、時間のロスだよぉ!!
メルはナニいちいちビビってるのぉ?君に言ってるわけじゃないでしょ、他の人に言ってるんだからぁ!!気にしないで投げてよぉ!!
エルンストさん、それ全力ですか?全然届かないじゃないですか?もういいです、あなたは玉拾いして他の方に渡してくださいっ!!」
(・・・あぁ、仕事に戻りてぇ・・・)
この中にあって孤軍奮闘するアリオスは、叫ぶマルセルに背を向け、視察に訪れる予定だったジーレの方角を向いて、そっと涙をぬぐった・・・?

結果。
金組:16個、黒組:51個。
クラヴィスの活躍と、金組のあまりのアレ具合で、黒組が一方的な勝利をおさめた。
勝者黒組にのみ30点が加算され、金組76点、黒組95点と、黒組が再びリードを奪う。
アルカディアの青空に輝く太陽は少し西に傾き始めたけれど、勝利の行方は、未だ見えてこない・・・

◇◆◇◆◇


◇ 「守護聖対抗大運動会・その8」へ ◇
◇ 「目次」へ ◇
◇ 「虚無の本棚」へ ◇