おしろのなぞ ―― 神鳥編


■一連の「聖獣お子様ギャグシリーズ」(「直球で行こう!」を含む)
をお読みになっていると、理解しやすいかと思われます。


◇◆◇◆◇

「なあ、本当にあれでよかったのかな?」

神鳥の宇宙。ここはマルセルの執務室であるが、不安そうに言ったのは風の守護聖ランディ。
彼がナニを気にしているかといえば、つい先ほどあった 襲撃 来客についてである。
それはマルセルの執務室で、神鳥の元祖お子様三人組がたわいもない会話をしていたときのこと。
聖獣の新お子様三人組の来訪があり、一応書類を持ってきたという口実ではあったけれど、三人も雁首そろえてやってきたのには理由があった。
その理由というのが、先日セレスティアの外に出来たお城形の謎な建築物が何であるか、を聞きに来たというから恐ろしいったりゃありゃしないではないか。
(詳しくは「おしろのなぞ」を参照のこと)

ランディだって、十八歳の、まあ、コーエーの公式資料にのっとれば「青年」であるからして。
あの建築物がいわゆるラブホと呼ばれるシロモノだということは知っていたし、どんな利用のされ方をしているのかだって、自分自身の利用の予定は全くもって無いけれど、知識だけはある。
だからここはひとつ、先輩(?)として、教えてあげるくらいの気概を見せたほうが良かったのはわかっているのだが、あまりに唐突に聞かれて、慌てまくった挙句、ゼフェルが「ルヴァに聞け」と、超・無責任なことを言っているのを黙って見過ごしてしまったのである。
たぶん、あと五分くらいしたら聖殿中に響き渡るような絶叫が聞こえるんじゃなかろうか、ルヴァ様ごめんなさい、などと。
ランディは申し訳なく思っている。
一方ゼフェルは
「ああん?あのままジュリアスんところに行かれるよか100倍マシだろ?」
なんて言ってる。確かに、そうではあるんだけどさ。
でもなぁ、って感じでしょげているランディを、マルセルが元気付けるように言った。

「大丈夫だよ、ランディ。ルヴァ様が答えられるとは微塵も思わないけど、最終的にオリヴィエ様とか、チャーリーさんあたりに聞いて丸く収まるんじゃない?」
「う、そうか。そうだよなって、マルセル!!!お前、知って……!」
さっき、聖獣の三人が来たときは、「僕も知らないんだ」な〜んて言ってたくせに、今の台詞の中身から察するに、どうやら知ってた模様。
マルセル、けっこう底が知れない奴だな?
いや、こうでなくっちゃっていう気もするけれどね。筆者的には。
「やだなぁ、ランディ。当たり前じゃない。僕が知らないって、本気で思ってたの?」
屈託無く返されて、流石に横にいたゼフェルも硬直中。
どうやら、神鳥聖地の十七歳と十八歳は、十四歳の最年少少年が純情だと信じていたらしい。

「でもまあ、そうなんだよね。僕ってそういうイメージあるらしいじゃない?だからあそこであんまり生々しい回答しちゃうより知らない振りしたほうがそれっぽいかな〜って思ったんだ。ふふふっ」

おいおいおい、ランディもゼフェルも青い顔してるよ。
だけど気にせず続けるマルセル。
「でも、別に僕だけじゃないと思うよ?」
「なにが僕だけじゃない、なんだい?マルセル」
不信そうに聞くランディに、マルセルはにっこり笑って。

「聖獣の最年少さんも、けっこう、察しがついてたみたいだと、僕は睨んでるんだけどな。 さっき、複雑そ〜な顔して僕等のやりとり聞いてたもの。案外、僕等十代組みの中で、今のところ利用予定があるのも彼だけだったりしてね?」

おいおいおい。
このサイトのマルセルは、いったいどういうキャラなんだ。
「り、利用予定って、ティムカがだぁ?!そんなワケ、ねーだろ、う …… よ …… ? …… ?」
十三歳の頃からの知り合いで、彼のことを自分の子分だ、っくらいに思ってたゼフェル (「ティムカ子分説妄想」参照・別窓) が一旦反論しかけたけれども、語尾が曖昧にきえちゃってるのを見るに、十三歳Verはともかく、妙に育っちゃった十六歳Verは「そんなハズない」とは言い切れない、と思い至った様子。

まあ、いずれにしろ神鳥も、聖獣も。
ことにソッチ関係の話となると、十七歳やら十八歳よりも、最年少の方が進んでいるのかもしれないなぁ、と。
青い顔のまま考えちゃった、ランディがいるのでございます。ハイ。

◇◆◇◆◇

さて、そんなちょっぴり衝撃的な事件があった数日後。
ルヴァ様がなんか、知恵熱で一日寝込んだっていう騒ぎ以外は平穏な日々が続いてる。
あの後聖獣の三人組が無事正しい答えを得られたかどうかの情報は伝わってきていなくて。気にならないって言ったら嘘になるけれど、積極的に確認するのもアホらしいものだからランディは特に行動も起こさず、大人しく執務をこなしている。
と、執務室の扉を叩く音がした。
いったい誰だろうと思いながら入室を促すと、顔を出したのは聖獣の風の守護聖ユーイではないか。

「やあ、ランディ様。書類を持ってきたぞ」

同じ力を司る守護聖同士は、時折やり取りする情報や知識があって。だからランディの場合こうしてユーイと繋がりを持つのはあまり不思議なことではない。
ただ正直なところ。
ユーイの場合「風の守護聖」じゃなくって「台風の守護聖」とか、「嵐の守護聖」じゃないのか?なんて。
自分のことは棚に放り上げて、思っているランディがいるんだけどね。

ただ、今日の来訪は予定してたことではないけれどちょうど良かったかな、とも彼は思っている。
ほら、その件(くだん)の、謎。
きちんと回答を得られたかどうか、確認するにはうってつけの機会じゃないか。

最初はきちんと執務の話をして、お仕事を終えた後。
ひとつ咳払いをしてから、ランディはユーイに聞いてみる。

「あ、あのさ。この間のセレスティアのお城の件なんだけれど …… 結局、何かはわかったのかい …… ?」

場合によっちゃ、ここはひとつ俺が説明してやろう、なんて。
先輩っぽい使命感に背中を押されつつ、けれども微妙に躊躇いながら聞いたランディとは対照的に、照れも迷いもせずに、ユーイは言い切った。

「あれだろ?性行為するための場所なんだって聞いたぞ」

もうちょっと歯に衣着せて言えよ、ユーイ。
あまりの直球発言にランディ凍結状態。でも、いつまでも凍ってもいられないので、自らの意思で解凍かけて、恐る恐る聞いてみる。

「だ、誰に聞いたんだい?」
「ティムカ。」

ち、ちょ、ちょっとまてユーイ。その発言は誤解を招くから、ちょっと待て。
いや、本当はティムカだってユーイに聞かれてそんな直球な回答をしたわけじゃないのよ。
いろいろ一生懸命遠まわしに伝えようとして、それでもさっぱり理解してくれないから、最後に自分がチャーリーに教わったときのことを思い出して、チャーリーの例に倣って説明したわけだ。
したら、ユーイが勝手に。
『なんだ、性行為するための場所なのか?それならそうと、最初っからそう言えばいいんだ』
なんて。
勝手に納得して、ティムカを撃沈させたんだってば。

けれども、そんな経緯をこの場でランディが知ってるわけも無いから。
穢れ無き十八歳の青年の脳裏には、先日マルセルが、ふふふ、と笑いながら言った言葉が点滅してる。

『僕等十代組みの中で、今のところ利用予定があるのも彼だけだったりしてね?』

そんなランディに、ユーイが追い討ちをかける。
「誰かを誘う予定があるんなら、誘い文句準備しておくのが重要なんだってさ。オレには実感わかないけど」
って。
多分、それ。
ティムカ自身がチャーリーに言われたセリフを、ヤケになってユーイに向かって言い添えた感じがギュンギュンするんだけど。
でもやっぱり、この場でランディがその経緯を知るわけも無い。

―― ティ、ティムカってそういう奴だったのか?! ポストオスカー様?!

いや、実際そういう奴かもしんないけど、ちょ〜っと誤解があるような気がする。
特に「ポストオスカー」のあたり。
ティムカ当人が聞いたら、すっごく嫌がりそう。

ランディは一人遠い世界に旅立ってしまって。
ユーイが最後に

「だって、誘い文句なんてさ。『オマエが欲しいから一緒に来い』って正直に言えばいいだけだろ?用意しておく意味なんか、あるのか?まあ、いいや。こんどエンジュを誘ってみよう」

って。
超爆弾発言をしたことに気づかずにいる。
それにしてもユーイ、さっき『オレには実感わかないけど』って言ってたのは、利用予定が無いからじゃなくて、誘い文句を準備する必要性を感じてないだけかよ。

さて。
考え込んだまま反応しなくなってしまったランディをちょっと不思議そうに見やって、ユーイはサラバだ、と執務室を去った。

「俺、ちょっと次からティムカを見る目、変わってしまうかもしれない ……」

一人残されて、そう呟くランディ。
あーあ、可哀そうに、ティムカ。当人の知らないところで思いっきり(一部)誤解されてるよ。
でも、ある意味での本当の最強十代はさ?
さっきまでランディの目の前にいた彼なんじゃないのか?って思うんだけれども。

ま、ここは突っ込まずに、放置しておこう、ね。


―― オシマイ。

◇◆◇◆◇

◇ Web拍手をする ◇

◇ 「虚無の本棚」へ ◇

やっぱりギャグは熱いうちに打つべきだね!!!!(超満足)

ネタが浮かんでから2時間あまりで書き上げました。久々の虚無更新。
「直球で行こう!」にジャンルわけすべきか、とも思ったんだけれど、いちおうこちらに。

2007.03.18 佳月