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ノベルゲームとしてはいたってフツー、と言えるでしょう。
舞台は、山を背に、海に面した片田舎の町、那波町。
主人公はごく普通の高校生である。
ごくごく普通に高校生活を過ごし、夏休みを迎えようとしていた矢先、事件は起こった。
交通事故に遭い、記憶をなくしてしまったのである。
全てを忘れてしまった主人公。
だが、一つだけ憶えていることがあった。
毎晩夢に現れる少女。
果たして、何者なのか。
主人公と関係のある人物なのだろうか。
記憶の戻らぬまま、高校へと再び通うことになる主人公と、その仲間たちの、長い夏が始まろうとしていた…。
こんな感じで始まります。設定が非常に地味。記憶喪失から始まる物語も珍しいものではないでしょう。むしろポピュラーな方ではなかろうかと思います。ジャンルもいまいち分からないし、インパクト(=店頭で手に取らせるパワー)には欠けているようですが…。
しかし。プレイし始めると、それがプラスの方向に働くのです。誰もが経験のある学生生活、そして中でも最も大きなイベントである、夏休み。主人公には感情移入せざるを得ません。さらに記憶喪失と言う設定が効いています。ゲーム開始直後、ストーリーを追い始めた頃は、私たちには主人公の生活ぶりも、周りの友人のことも、学校のことも分かりません。分からないことだらけです。
そしてそれは、記憶喪失の主人公も同じなのです。これがプレイヤーと主人公キャラクターの一体感をますます高め、物語に入り込ませることになります。恐らく美少女ゲームを楽しめるかどうかは、いかに感情移入できるかにかかっていると思います。その点で水月は、しっかりツボを押さえていると言えますね。そしてさらに、オープニングの夢の謎が物語を引っ張っていくわけです。
で、シナリオ。ヒロイン中でも主役と言える那波のシナリオは、美少女ゲームとしてはかなり特異です。民俗学の知識をベースに、ちょっとSFっぽい、いやファンタジックな物語が語られます。微妙に謎を残したまま、解釈をプレイヤーに委ねている部分もあり、非常に興味深く感じました。いや、民俗学とか知っていないと楽しめないと言うわけではありません。現に私は知りませんから。適当に自分で解釈して楽しめれば良いと思います。他の女の子のシナリオはまた全然違っていたりしますから、全部やりきったら、きっとお気に入りのシナリオがあるでしょう。私は花梨のシナリオが特に気に入っています。
もう一点。どのお話においても、主人公の気持ちがしっかり描かれているのが印象に残ります。それぞれの女の子が持つ悩みに自分を重ね合わせる主人公。記憶喪失と言う困難に対峙し、自分のあるべき姿を探す主人公。一人称の語り口からは、彼の思い、そしてやさしさが伝わってきます。ちょっと照れたり、恥ずかしかったりしながら(一人で)読んでください。きっと何かがあなたの心に残るはずです。
以上。
…やっぱ、足りませんか。
それでは、登場する女の子を私なりに解説。好きな順に。
香坂 マリア
文句のつけようがないデキです(ダビスタ風)。顔、体型、服装に至るまで、まるで私に意見を聞いてから作り上げたキャラのようです。ちっちゃくてショートカットで肩紐のワンピースで水着の跡まであるとは…。恥じらいの表情に、萌え。激しく萌え。
宮代 花梨
ステレオタイプな元気少女かと思っていたら、そうでもありませんでした。表情も服装も色々変化して、見ていて非常に気になります。会話も楽しいですね。やっぱり元気少女ラヴ。そして「髪の毛で犬耳」ラヴ。いやこれ本当に可愛いんですってば。
琴乃宮 雪
メイドキャラなのですが、私としてはメイド服より外出時の服装がヨイです。ネクタイってこんなに可愛いんだと初めて知りました。あ、でも私より身長高いんですか(172cm)。そうなんですか。ショック。
香坂 アリス
マリアちゃんの双子の姉。どうしてもマリアちゃんと比べてしまうのです。いや、でも二人揃ってこそなのでしょうか。人によって好みは分かれそうですが。うーむ。
新城 和泉
プレイしていた当初はあまり気に食わないキャラだったのですが、いつの間にかけっこう、いやかなり好きになってしまいました。何故でしょう？ 性格的にはあんまり好みじゃないのかも。あとこの娘は真のメガネっ娘です。メガネかけていた方が可愛いです。素晴らしいです。
大和 鈴蘭
性格は馬鹿っぽく、私にはツボに来ないのですが、なんだかんだ言って、スパッツの威力は強大であります。動き回っているのを愛でるだけで満足です。
牧野 那波
不思議な雰囲気。馬鹿丁寧なお嬢様口調。主役であるがための設定が私のハートに響かず、残念でした。全体的にどことなく憂いの残る表情がなぁ…。エンディングの晴れ晴れとした表情が一番印象に残っています。続編で(出るのかは知りません)明るい那波ちゃんを希望。
P.S.
それにしても、○○○○(詮索禁止。プレイすれば分かります)する娘が多かったです。いや、嫌いじゃないんですけど。…すいません。嘘つきました。正直に書きます。けっこう好き。
参考図書
水月ビジュアルファンブック 株式会社エンターブレイン発行 2500円
CG、ラフスケッチはもちろん、オリジナルショートストーリーも入っています。水月をプレイし終えた方にお薦め。ぜひ。
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