春から夏にかけてのフィールドでの楽しみといったら、何といっても山菜ですね。つぼみをほんの少し開きかけたフキノトウを摘んで、サッと湯がいて味噌とあえる。口に入れたとたん、早春を感じさせるほのかな苦みが広がります。日当たりのいい斜面に生えた刺だらけの枝の先端にはタラノメが顔を覗かせていれば、さっそく一番芽を摘んでテンプラ。さらにキャンプサイトの周りに自生するヨモギ、イタドリなどをちょっと摘み採って、ディナーのオードブルに……。
夏から秋口にかけては、木イチゴや木の実の季節。朝の散策で木イチゴをたっぷり集めてきたら、シェラカップに砂糖と一緒に入れて、弱火で煮つめて山の香りいっぱいのジャムを作ります。
そして、秋たけなわともなれば、キノコの季節。イグチ、ナメコ、シメジ、ヒラタケ、キクラゲ……。この楽しみにとりつかれたら、ついつい時間のたつのも忘れ、山に分け入ってしまいます。
高山や北のほうの山でのキャンプなら、夏の間は高山植物が目を和ませてくれます。
最近では、木の葉の図鑑を持ってキャンプサイト周辺を散策するのが日課になっています。木の全体を見てはなかなか見分けがつかないのに、一枚の枯れ葉を拾い上げて形を比べれば何の木なのか一目瞭然。「宇宙はディテールに含まれる」そんな言葉を思い出す一瞬です。
自然のまっただ中に身を置いていることをもっとも実感するのは夜だといったら、逆説的に思えるでしょうか。鳥の声や樹木の息づかいは都会生活でも身近に感じられないことはありませんが、息を飲むほどの星空が天空に広がる光景は、都会では絶対に味わえないものです。
とくに、シュラフカバーひとつで、天蓋の下に眠るビバークの晩などは、その息を飲む透明さと広がりに心を捕らえられて、いつまでも呆然と天を眺めていたりするものです。
日時を合わせるだけで、そのときに見えている天体を表示する星座早見表があれば、世界はもっと広がります。一つ一つの星座を確認しながら、夜空と向き合っていると、古の人々が、天体を眺めるうちに人類創世神話や壮大な夢をそこからつむぎ出した感性が、自然に理解できるものです。
一方で、スターウォッチングには、ルートファインディングという実用的な側面もあります。太古より、北極星は、夜を進む冒険者たちにとって、たのもしい道しるべとなってきました。
●追記
オートキャンプで荷物の積載に余裕のあるときは、必ず星座盤を持参します。薄い皿型の円盤を二枚組み合わせただけの簡単なものですが、日にちが刻まれた外周リングに内側の時刻のリングをあわせると、今見えている天球の様子が窓に出るとても便利なものです。星座をまったく知らなくても、今頭上に輝いている星の配置と同じものが星座盤の窓に表示されるので、照らし合わせてみればいいだけです。ちなみに、ぼくは、日本のワタナベ製のものを使っています。本格的に星座観測がしたいときは、ヘッドランプに、セロハンなどで自作したフィルターをかけて、星座盤を見たときの光の残像が残らないようにします。