フィールドで遊ぶためには、具体的な手引きがあると便利です。その筆頭は、やはり図鑑でしょう。英語を勉強する際に英和辞典を引くように、図鑑は、自然の中にある断片を手がかりに自然への理解を深めていくための辞典といえます。
書店のアウトドア関連本のコーナーを覗くと、本書のようなノウハウ本をはじめ、図鑑類の種類の多さには圧倒されます。いったい、どれが使いやすい図鑑なのか悩むところです。そこで、図鑑選びのポイントをいくつか紹介しましょう。
最初のポイントは、カラーページが多いことです。その分野をこれから探求していこうという初心者には、形や細部からモノを同定するのは、けっこう厄介な作業です。その点、モノの違いがいちばん際だつのが色。当然、カラーページの多い図鑑が、まずおおまかな同定をするためには使いやすいといえます。
次のポイントは、コンパクト性です。図鑑と一緒にルーペやビノキュラーを持ちながら観察することもよくありますから、片手で持ててページがめくれるくらいのコンパクトサイズのものがフィールドで実際に使う図鑑としては適当でしょう。
内容は、それ一冊で全てをカバーするような欲張った構成のものではなく、例えば「水辺の鳥」とか「山鳥」、「春の植物」、「実の生る樹木」といったように、限定されたもののほうが、網羅されている事項が少なく、初心者にとって同定しやすいものです。また、限定された内容のものなら、それだけページも少なく、軽いというメリットがあります。他の装備を選ぶのと同じように、図鑑も、季節やフィールドの条件に合わせて選べばいいわけです。
とくにお勧めなのは、日本野鳥の会のような専門団体が発行、もしくは監修している図鑑です。これらは、シンプルながら同定のポイントがしっかり押さえた解説で、非常にわかりやすい構成になっています。
以上のようえなポイントを押さえて、図鑑を選び、フィールドで辞典を引くようにことある毎に広げて、実際そこに咲く花や飛ぶ鳥を同定するようにすれば、知らず知らずのうちに知識が増え、楽しみの幅も広くなるというものです。
●追記
うちの書棚を見渡すと、けっこうなスペースが図鑑で占領されています。
きのこ、海の幸、山の幸、鳥、高山植物、木の実、鉱物、気象……、それぞれの分野で大部なものからパンフレット程度のものまで、いろいろあります。最初は、ビジターセンターなどでもらったパンフレットから興味を持って、次第に、それだけでは足りなくなって、より深い内容をとエスカレートしていくうちに、今度は専門書にまで手を出すというパターンで、いつのまにかたまってしまったものです。でも、それは、自分の教養や知識がそれだけ膨らんだことの証明でもあるわけですから、けっこう自慢でもあります。
アウトドアフィールドは、様々な知的刺激にあふれた場所でもあるのです。