[フィールドを十二分に楽しもう]

 キャンプサイトでの過ごし方に、これといったセオリーはありません。
 しかし、テレビもないし、ゲームもカラオケもないフィールドで、ただ漫然と過ごしていたのでは退屈なだけです(もっとも、近頃はテレビもゲームもカラオケもアウトドアでも使えることを歌い文句にしているものあります……こんなものをキャンプサイトまで持ち込む神経は理解できませんが)。「何も遊びがないじゃないか」と、すぐに諦めるなかれ。周りを見渡せば、フィールドには日常生活では味わえない豊饒な世界がいくつも広がっているのですから。

[キャンプライフを充実させよう]

 朝、射し込む朝日と爽やかな鳥の鳴き声に目を覚ます。少し寒いので、昨晩消した焚火をまた起こす。でも本格的に暖まるほどの火は必要ないので、細い枝を何本かくべるだけで、雰囲気重視の焚火。コーヒーをいれ、スープとパンケーキの朝食。その後片づけが済んだら、さて、何をしましょうか?
 トレッキングの予定があるなら、さっそく準備にかかります。これといった予定がなければ、その時の気分と、フィールドの環境に合わせた"遊び"を実践しましょう。
 MTB、カヌー、フィッシング……、フィールドでの遊びというと、すぐにそういったいわば大物のレジャーが想像されるかもしれません。もちろん、はじめからそれを目的に準備していくキャンプでもいいわけですが、ミニマムな装備でフィールドに出かけるベーシックキャンプの枠内でも、十分に楽しめる遊びはたくさんあります。

[読書]

 フィールドを十二分に楽しもうと言っておいて、いきなり読書とくると矛盾するようですが、ナイトライフとも絡んで、キャンプサイトでの時間の使い方としてはけっこう楽しめるアトラクションだと、ぼくは思っています。とくに、雨でテントに中での停滞を余儀なくされたときや、ソロキャンプの長い夜の時間を味わうには、読書が最適です。といっても、くだらない小説やマンガなんぞにうつつをぬかしてはいかにももったいないので、余計な雑音に惑わされず、読書に集中できる環境を利用して、ふだん途中で投げ出してしまいがちな思想書や古典でも紐解いてみてはいかがでしょうか。
●追記
 静かなキャンプの雰囲気をさらに深く味わうとすれば、ソロー『森の生活』や、このコンテンツが手本としているコリン・フレッチャー『遊歩大全』などもお勧めです。『森の生活』は、19世紀後半に、早くも物質文明の人間疎外に疑問をいだいたソローが、ウォールデンという湖の辺に小屋を建てて独りで暮らしたその生活記。慌ただしい情報化社会の中にある我々が置き忘れてしまった大切なものを思い出させてくれます。『遊歩大全』は、ソロで広大なアメリカ大陸を渡り歩くフレッチャーの極めて実践的なノウハウと、フィールドの哲学者ともいえるフレッチャーの示唆に富んだ思索が綴られています。
 他に、キャンプの読書にベストマッチといえる書籍はたくさんありますね。とくにソロでキャンプする場合は、お気に入りの一冊が、心の友になってくれます。

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