[テントの設営]

 テントというと、林間学校やボーイスカウトでお馴染みの家型テントを連想して「設営が大変そうだ」と思う人が、いまだに多いようです。ですが、今のテントは、クロスさせたポールにテント本体を吊り下げるか、テント本体に設けられたスリーブにポールを通すだけで自立するドーム型が主流で、まったくの初心者でも、立ち上げるのにもものの2、3分もあれば十分といったお手軽なものになっています。しかも、グランドシートがウォールと一体になっているので、周囲に雨避けの溝を巡らしたりする必要もまったくありません。
 テントの設営で、押さえておきたいポイントは3つあります。
 第1は、テントを設置する地面をフラットに均すこと。
 少しでも凹凸があると、極端に寝心地が悪くなりますから、細かい石も丁寧にどけることが大切です。基礎工事のしっかりした住宅の居心地がいいのと同じことです。
 第2は、テントのゲートから風が吹き込まないように設置方向に注意することです。一般的に、沢沿いのキャンプサイトなら風は沢の流れに沿って吹くことが多いので、ゲートが流れの方向を向くようにします。海や湖の沿岸では、風は海と陸の間を往復するように吹きますから(時間帯によって海風になったり陸風になったりします)、海に対してテント側面を向けるようにします。その他の場所では、周囲の地形から、風の吹く方向を見定めてから、テントのゲートが風の流れに向かないようにセッティングしましょう。
 第3点は、フライシートとテント本体との間になるべく隙間を作ることです。フライシートがテント本体と密着してしまうと、テント内の換気が悪くなり、テント内部に結露が生じたりして不快なだけでなく、中でストーブを使ったりすると酸欠になる危険性もあります。
 以上の3点を押さえれば、快適なキャンプ生活が半ば約束されたといってもいいでしょう。
●追記
 第一の点は、それこそしつこいほど整地をすれば、その分快適さはアップします。ガレ場のようなところでは、完全に石を取り除くことは難しいですから、枯葉を集めてクッションにするといいでしょう。また、砂地は、一見そのままで気持ちよさそうですが、テント内で動き回るうちに砂が寄って凸凹が生じたりします。そのように軟らかな地盤のところでは、逆にある程度踏み固めておくのがコツです。踏み固めておくのは、雪上の場合も同じです。
 第二の点は、とくに突風のおこりやすい尾根や谷筋にテントを張るときにはよく注意しなければいけないところです。北アルプスの涸沢あたりでは、無人のテントが空を舞っていることがよくあります。トレッキングを終えてキャンプ地に帰ったらテントが丸ごと飛ばされていたなんて、目も当てられないですよね。とくに、グランドシートと一体になったセルフスタンディングのテントが主流になってからは、風をはらみやすいので、要注意です。
 だんだん設営に慣れると、ずぼらになってきて、ペグも打たずに、「荷物がアンカーになるから大丈夫」なんて、ザックをほうり込んで安心したりしますけど、これも痛い目に会う原因となります。ぼくは、そのずぼらのせいで、テントを風で引きずられ、グランドシートにかぎ裂きを作ったことがあります。どんな場合でも、慢心は怪我のもとですね。
 第三点は、装備を選ぶという項でも触れましたが、「安物買いは銭失い」どころか「安物買いは命失い」なんて洒落にもならなくなりますので、テントは必ず品質のいいものを購入しましょう。それから、テント内で快適に過ごすためには、本体とフライシートの間の風通しをよくすると同時に、室内換気に常に気をつかうことがポイントだということをお忘れなく。

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