[救難信号]

 万が一、フィールドで遭難という状況に陥ってしまい、自力での脱出が困難となったら、救助を期待するしかありません。そうなったら、いかに早く救助してもらうかが課題となります。そのためには、まず、捜索隊に自分たちの位置や状況をアピールしなければなりません。
 エマージェンシーホイッスルを鳴らして自分の居場所をアピールする、シグナルミラーで相手に合図を送る、目立つウェアを振ってアピールする、あるいは木や石を並べて航空機にむかって合図を送るなどの方法が考えられます。それぞれ、自分の置かれた状況にいちばんあった方法を選ぶことが重要です。日本では信号弾の陸地での使用は見とめられていませんが、ぼくは海外のフィールドに出かけるときは、ペンシル型の信号弾を用意します。これに代わるものとしては、焚火の煙(狼煙)があります。夜間なら、救難信号用のフラッシュライト(カメラのフラッシュと同じようなもので、断続的に発光する光りが2、3km先まで届く)やコンサート会場でおなじみの発光スティック(サイリウム)などがあります。それらは、アウトドアショップで手に入れることができます。なお、木の枝や石などを並べて特定の意味を伝える救難信号が国際規約で定められているので、その代表的なのを覚えておいてもいいでしょう。
●追記
 装備の項で、アメリカでは、たいしたトラブルでもないのに、携帯電話で気軽に救助要請するケースが増えていると紹介しましたが、日本でも同様なケースが急増しているそうです。
 登山者が動けなくなったという連絡で、救助隊がヘリを飛ばして駆けつけたら、ちょっと足をひねっただけの人が、山小屋のすぐ近くから電話していたとか、風邪っぽいのを無理して山に入り、熱が出てだるくなったので救助を要請したとか。
 一刻を争うシリアスな事態に陥っている遭難者が、こういったモラルのない人間のせいで救助される機会を失って、命を落としてしまったら、やりきれませんね(実際、ちょっと下痢をしただけなのに救難ヘリを要請した登山者がいて、そちらに対応している間に、べつなところで岩場から転落して救助を待っていた登山者が亡くなってしまったという例もあります)。アウトドアに踏み込むということは、街で普通に生活しているのとは違って、それなりのリスクを覚悟するということですから、自分が本当に救助が必要な状態なのか、きちんと判断できるだけのモラルは身につけていたいものです。
● さらに追記
 本格的な登山を行う場合は、事前に各自治体や所轄の警察宛に『登山計画書』を郵送などの方法で提出することが奨励されています。また、登山道の起点には、『登山者カード』や『入山カード』と、それを投函するポストが設置されています。カードには、自分が入山する日時や目的地、予定コース、下山予定日などを書きこむようになっています。救助隊は、それらの資料があれば、それをもとに捜索コースなどを絞り込んで、効率的に捜索が行え、結果的に救助が早まることになります。何日もトレースの少ない山域に入る場合は『登山計画書』を提出し、入山するときはカードに必要事項を記入する習慣をつけておきましょう。

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