山奥にまで開発が進んだため、今までは接近遭遇する危険が少なかった野生動物と計らずして出くわしてしまうことも多くなっています。とくに、クマの出没地域でキャンプするときは注意が必要です。
以前、東北の山奥でキャンプしたときに、残飯をテントの前に放り出したまま眠ってしまい、明け方クマの訪問を受けてしまったことがありました。幸い、このときは30分あまりで残飯あさりに飽きたクマはそそくさと帰ってしまったので、事なきを得ましたが……。残飯をそのままにしておくなどというのは、わざわざ動物を呼び寄せるようなもの(SETP7の『クマ避けのデポ』では、当の本人が食料や残飯は野生動物を招き寄せてしまうのできちんと処理しなければいけないと解説しながら、まったくお恥ずかしい例です。でも、この事件以降このセオリーはしっかり守っています)。
ふつう野生動物は、人間よりも先に気配を察知して姿を隠してしまいます。だから、こちらがいることをアピールしていれば、万が一の出会い頭という事態が避けられるはずです。クマの出没地域に入るときは、クマ避けの鈴をザックにつけておきましょう。よく、山菜とりの人が、クマが潜んでいそうな気配を感じると爆竹を鳴らして威嚇しますが(音とともに硝煙の匂いをクマが本能的に嫌がるという説があります)、これは山火事の危険があるので、あまりお勧めできません。
そして、不幸にして、出会ってしまったら、とにかく焦らないことが肝要です。背中を見せて逃げ出したら、間違いなく襲われて致命傷を負わされることになります。なにしろ相手は時速50kmは出せる足を持っているのですから、逃げ切ることは不可能だし、木登りも人間よりはるかに上手です。
不幸にも出くわしてしまったら、まずは、相手の目をにらみ、動かぬこと。もし、しばらく我慢しても相手が逃げる気配がなければ、ゆっくりとザックを足元に置いて、後ずさりして逃げるといいといわれます。クマは好奇心が強いので、ザックに気をとられて、後を追うのを忘れてしまうのだとか……。
実効があると言われるのは、クマは蛇が嫌いなのでベルトを外して振り回すという方法や、唐辛子エキスを主成分としたクマ避けのスプレーを使うこと。また、クマはインセクトリペレント(虫避けの塗り薬やスプレー)の匂いが嫌いなので、これを塗っていると近づいてこないといった説もあります。
いずれにせよ、間近ではお目にかかりたくない動物ですね。