・火傷

 キャンプ中の怪我でもっとも多いのは火傷です。
 熱いストーブや火のついた薪にうっかり素手で触れてしまった。あるいは、グツグツ煮えたコッヘルのスープをひっくりかえしてしまった、といったケースですね。
 火傷の応急手当は、とにかく冷やすこと、これに尽きます。患部を流水に浸し、感覚が麻痺するぐらいまで徹底的に冷やす。冷たい流水がなければ、コールドスプレーやコールドパックを患部に当てる。この処置がすばやく行えれば、火傷の程度をだいぶ軽くすることができます。
 患部を十分冷やして、炎症などが広がる様子がなければ、化膿止めの抗生物質配合の軟膏を塗り、包帯などで患部を保護します。
 靴ズレも火傷の一種で、マメは火膨れと同じ。これも冷やすのが最善の処置ですが、トレッキングの途中では不可能です。そんなときは、消毒した針やナイフの先でマメを突いて、滲出液を抜いてしまい、軟膏やヨードチンキなどで処置した上に、バンドエイドなどで保護するといいでしょう。マメはなるべく潰さないようにとした解説書もありますが、ぼくの経験では、潰して滲出液を出してしまったほうが回復が早いように思えます。
●追記
 ぼくも何度かひどい靴擦れになって、縦走中に苦しんだりしたことがあります。まず大切なのは、自分の足に合った靴を履くことです。ぼくは、ハードな登山をしたり長時間ラフロードを歩くときには、自分の足に合わせてオーダーした靴を履いています。もっとも、それは、僕の足が靴屋さんが驚くほどの偏平甲高で、既成のもので合うのが見つからないためです。でも、オーダーシューズを履いていても、シューレースの結び直しを怠ったり、小石が入ったような異物感を感じたのに横着してそのままにしていたりすると、マメができる羽目になります。とくに、皮靴のように通気性が悪い靴の場合は、大休止のときに靴を緩めて通気してやったり、汗で濡れた靴下を換えたりをこまめにしたほうが無難です。

・凍傷

 凍傷は、冬山などの寒冷地で、抹消の血管への血流が悪くなるために起こります。顔や手は、寒さを覚えたときに擦って血行を回復してやれば凍傷を予防することができますが、問題は足指です。ときどきシューレース(靴紐)を緩めたり、靴の中で意識的に足指を動かすなどして、血行を回復してやらなければいけません。
 凍傷の初期は、患部が白くなって、疼くような痛みを覚えます。この段階で、ぬるま湯につけたり、体温が戻るまで入念にマッサージするなどの処置を施せばほとんど大事に至ることはありません。さらに症状が進むと、火傷のような水泡ができます。さらに悪化すると、患部が黒く変色して壊疽を起こしてしまいます。水泡のできる2度以上の凍傷を負ってしまったら、患部を消毒して包帯などで保護し、医療機関で治療を受けなければなりません。

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