・日射病、熱射病

 夏、キャンプサイト周辺で帽子もかぶらず活動していたら、夕方になって頭痛がする。重い荷にあえぎながら、それでもみんなについていかなければならないと、無理をしてアップダウンの激しい山道をトレッキングしていたら、急に目眩に襲われた。日射病、熱射病の典型的なケースです。
 体の内部にたまった熱が、汗などの体温調節機能で処理しきれなくなったのがその原因です。そのまま放っておくと、最悪の場合、脱水症状から死に至ることもあります。予防法はとにかく無理をしないこと。とくに頭を直接陽に当てたり、暑いのを我慢し続けたりというのがいちばんいけません。
 もし日射病や熱射病の症状が現れたら、日陰で風通しのいい場所に横になり、シャツのボタンを緩めるなどして、なるべくリラックスさせ、頭や体を冷やし、水分を補給します。
●追記
 根性論が支配していたかつての体育会では、大汗かいてもむやみに水を飲むななんて言われていました。登山でも、「水分を取りすぎるとバテてしまう」というのが定説となっていました。ところが、運動生理の研究が進むと、発汗によって失われた水分は、なるべく早く補填したほうがいいと言われるようになりました。じつは、発汗による脱水が、日射病や熱射病の伏線になっていたのです。そりゃそうです。哺乳類は、体内で生産された余熱を汗によって外部に排出して体温調節をしているわけですから、その熱交換の触媒である水分がなければ、体温が上昇して熱中症になってしまうわけです。といって、一度に水分をたくさんとると、消化器や腎臓などへの負担がかかりすぎますから、少しずつ、幾度にもわけて補給するのがポイントです。最近は、吸収を早めるためにイオン化されたスポーツドリンクなどもありますから、これを活用するといいですね。ちなみに、ぼくのアウトドアでの定番はゲータレードです。人一倍水飲みのぼくは、いつも飲みすぎでバテていたんですが、日本にはじめてゲータレードが入ってきたときにこれを飲んでバテ知らずとなり、それからずっと愛用しています。

・酸欠、一酸化炭素中毒

 通気性の悪いテントの中でストーブを使うのは極めて危険です。
 吐き気や頭痛といった自覚症状が現れたときには、すでに手遅れになっているケースが多いので、くれぐれも換気には気をつけましょう。テント内でストーブを使っていて、息苦しさを感じたりしたら、ただちにストーブを消し、テントのゲートをいっぱいに開けて換気をします。さらに衣類を緩めて、安静にすること。酸欠の場合などは、突然呼吸停止したりする場合があるので、そんなときには、傍らにいる人がただちに人工呼吸を施さなければなりません。
 *STEP8の"一酸化炭素中毒に注意"の項も参照してください。
●追記
 その昔、冬の早池峰山麓でオフロードバイクに乗ろうと出かけていったとき、あまりにも寒くて、テントを張る気力も起きず、トランスポーターの中でキャンプ?したことがありました。「寒いときは鍋に限る」なんて、ワンボックスの荷室で男三人鍋を囲んでおりました。そのうち、なんだか意識が朦朧としてきて、目が霞んできました。ハッと気づいた一人が、バックハッチを開けると、スーッと視界が開け……。油断大敵です。通気性能の悪いテントの中で煮炊きしたのと同じ状況だったわけです。ワンボックスの荷室で鍋物なんて論外ですが(それを実践していた本人が言えた義理ではありませんけど)、テントはくれぐれも信頼できるメーカーのものを選びましょう。半端な入門書には、テント内でストーブやランタンは絶対に使ってはならない書いてありますが、これはナンセンス。雨や雪に吹き込められたら、たんと内で調理する以外にありません。STEP1でも紹介したように、きちんとしたメーカーのテントであれば、天候不順で停滞しているときにテント内で調理することも考慮して、喚起性能が計算されています(サイドウォール上部に開閉できるベンチレーターが取り付けられていたします)。ぼくも、ごく当たり前のように、テント内で煮炊きします。ただし、テント内でストーブを倒したりすると、火災の危険がありますから、火の元には十分注意してください。

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