「あわてず、冷静に」がサバイバルの極意]

 サバイバルが必要なほどのシリアスな状況に陥ったとき、生死を分けるのはパニックを起こさずに沈着冷静な判断が下せるかどうかにかかっています。サバイバルというと何か大げさな技術が必要に思われるかもしれませんが、そのほとんどは、ごく一般的なアウトドア技術の応用にすぎません。その技術と知識を身につけ、つねに気配りをしておけば、万が一の場合でもパニックを防げるのはもちろん、事前に兆候を察知して、サバイバルが必要な状況に陥ることを未然に防げるはずです。

[フィールドで多い怪我と病気、その対処法]

・RICE処置

 フィールドで多いトラブルといえば、擦り傷や切り傷などの外傷、それに骨折や捻挫などです。これらの怪我には、共通する応急手当(ファーストエイド)の鉄則があります。それは、RICE処置と呼ばれるものです。
 RICEとは、“REST”,“ICE”,“COMPRESSION”,“ELEVATION”という四つの単語の頭文字を取ったものです。
 RESTは、安静にすること。怪我を負ったまま動くと、出血を助長することになります。それを防ぐためと、怪我人がショック症状を起こさないように気を静めるために、まず、安静が必要なのです。ぼくも血には弱いタイプですが、人によっては大量に出血しているのを見ただけで、気を失ってしまうことがあります。場合によってはショック症状だけで死亡してしまうケースもあるのです。例えば、頭部に外傷を負った場合、怪我の程度はさほどではないのに、大量に出血することがあります。場所が場所ですし、これは、かなりなショックを受けます。自分が怪我を負ってしまったら、努めて冷静になることを意識して、けしてあせらないことです。あせって、状況をかえって悪化させてしまうということがままあります。怪我を負った人に処置を施す場合は、まず、患者が呼吸しやすいような態勢に寝かせます。そして、濡れたタオルで目を覆うなど、患者が余計な心配をしないように配慮してあげます。
 ICEは、冷やすこと。患部周辺を冷やすことによって、そこの血管を収縮させ、出血や内出血を抑えるのです。とくに、打撲や捻挫、火傷の場合は、なるべく早く、急速に冷やすのが鉄則です。十分なICE処置を行っていれば、症状が軽くなり、後の処置がしやすくなると同時にその効果を高めることにも繋がります。小型のコールドスプレーや袋に衝撃を与えると冷えるコールドパックなどをファーストエイドキットに入れておくと安心です。
 COMPRESSIONは、圧迫すること。これは、外傷を負って出血したときに、とくに重要な処置です。傷があまり大きくなければ、傷口を強く押さえます。傷が大きく、出血も激しい場合は、患部より心臓に近い部分部分の動脈を強く押さえ、幹部への血流を止めてやるわけです。ただし、これは長時間やり続けると押さえている部分以下の組織が壊死を起こしてしまうので、ときどき力を緩めて、血液を流してやる必要があります。また、打撲や捻挫による内出血の場合は、患部を圧迫することで、血液が患部に凝集することを防ぎ、腫れを押さえる効果があります。
 ELEVATIONは、高く持ち上げること。患部を心臓より高く持ち上げて、患部に向かって流れる血流を少なくしてやるのです。
 RICE処置は、以上の処置でワンセットです。怪我を負ったら、なるべくすみやかに、RICE処置を何度か繰り返して行います。そして、RICE処置に合わせて、怪我の状況に合わせた応急処置を施します。
 そして、忘れてならないのは、応急処置は、あくまでも医師の治療を受けるまでの「とりあえず」の処置であるということです。応急処置を施しつつ、なるべく早く、専門の医師の治療を受けなければなりません。また、処置を誤ると、かえって事態を悪化させてしまうことも忘れずに、慎重に行う必要があります。

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