(第6回:'98年2月10日掲載) インターネットに接続しているコンピューターは、それぞれ固有のアドレスを持っていて、それを32ビットの数字で表している。1ビットというのはコンピューターが理解できる0か1かの二進数の数字。32ビットは、これが32個並んだものだ。十進数で表すと約40億通り。つまり40億台のコンピューターが接続できるわけだが、それでも将来アドレスが不足することを考え、インターネットのアドレスを拡張しようとする動きがある。 なぜ40億では足りないのか。今回はインターネットの未来を予感させるふたつの技術を紹介しよう。 四国電力が発表した「OpenPLANET」は電気機器をインターネット経由で監視、制御するシステム。たとえば、海外に建設した工場を日本国内から集中的に管理したり制御したりできるわけだ。ホームユースを考えると、すぐに思い付くのは防犯警備システムだが、エアコンや風呂、照明など家庭内のあらゆる電気機器を制御することが可能だ。すでに家庭内には電気配線があり、これを利用すれば電気機器をコンセントに差し込むだけでネットワークを構築できる。現在、電気配線をネットワークに利用するには電力線モデムという機器が必要だが、将来はこの機能がワンチップ化してオーデオ機器やビデオデッキは言うに及ばず、炊飯器や冷蔵庫、洗濯機などにも組み込まれ、家電製品も「インターネット対応」がひとつのセールスポイント、いや当たり前のことになるかもしれない。 こうした近い未来の生活をずっと以前から思い浮かべ、そのための技術や標準仕様を考えていた人がいる。TRONプロジェクトリーダーの坂村健氏だ。TRON(トロン)は工業、通信など多岐に渡る広範囲なプロジェクトだが、その応用例のひとつとして「トロン電脳住宅」がある。 「トロン電脳住宅」は、天井や照明などあらゆるところに千個もの小さなコンピューターとセンサーを組み込んだ実験住宅。 世界中の一人ひとりが千個ものコンピューターに囲まれて暮らし、世界中の車が無線でインターネットに接続された未来では、40億のアドレスではとても足りないのだ。 四国電力ホームページ http://www.yonden.co.jp/index.htm TRONホームページ(東京大学、坂村研究室) http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/ |