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…だって、気になる、もの。掃除手につきそうにないもの。

もうちょっとだけ、オーストリアさんごめんなさい!そう思って、そっと箒を持ち替えようとして。
思いのほか緊張していたのか、指先がうまく動かず、手元を離れてしまった箒はそのまま倒れ、扉にぶつかってかん!と大きな音を立てた。
「!!」
硬直していると、がちゃ、と開く扉。
「…ハンガリー?」
「す、すみません、箒倒しちゃって!」

あは、あははははと笑顔で誤摩化す!
だってまさかすみません盗み聞きしてましたーなんてノリで言えたりする人じゃないもの!イタちゃんならするけど!
大丈夫大丈夫、ばれてない、はず!

でもその、鋭い、不審そうな視線が怖くてそれでもなんとかかんとかえ、えへ?と作り笑いを浮かべていると、気をつけてください。とため息。
「はい!」
もう二度としません。心臓に悪い。

「まあ、ちょうどよかったです。ハンガリー。」
「は、…はい?」
「話があるんですが、私はこれから仕事で出かけます。」
「はあ。」
「今聞きたいなら手短かに話しますが…どうしますか?」
…話。なんの話、だろう…。
いやべつに何も悪いことはしてないはずだし…。
なら、あ、そうか。さっきの電話に関係ある?
それはすごい気になるなあ…。
「ハンガリー?」
「え、あ、え、えーと、」

ど、どうしよう?

「忙しいでしょう?後でじっくり聞きます。」
「…今、聞いてもいいですか?」