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「…今、聞いてもいいですか?」
気になります。そう言えば、そうですか、とうなずいて。


「縁談がきました。」
「……は、い……?」


「…だれ、が、ですか?」
思わずそう尋ねると、私のです。とさらり。
「は……?」
「まあ、政治的な観点が大きいんですが。」
そんなに驚くことでしょうか。首をかしげる彼。
「あまり強い国とはいえませんから。婚姻と同盟と。そういったことで国を強化していくのはあたりまえのことでしょう?」
…ああ、このひとにとっては、そういうこと、なんだ。婚姻って。
でも、昔。彼は、そう。私とも。…でも、けど、だって。
「ハンガリー…?」
不思議そうな声に、指を握り込んでぎゅ、と手のひらに爪を立てて。
仕方ないことなんだ。きっと。
「それと同時に、あなたの独立、も考えているのですが…。」

ああ、そうやって。彼は。私じゃない他の人と。
…暮らす、の?

彼を見る。…あれ、なんかちょっと、おもしろそうな顔、してる?
もしかして。考えて、深呼吸ひとつ。

「…じ、冗談、ですよね…?」
おそるおそる尋ねると、じっとまっすぐに見つめられた。
真剣な瞳に、え、まさか、本当に?と焦ると、彼はゆっくり口を開いて。


「はい。」
………ええ…っと…?
私は冗談ですよね、って聞いて、その答えがはい、なんだから…

「…冗談なんですか…」
「冗談ですよ。」
そんなに焦った顔しないでください。
くすくす。笑い声に、ひどいです!と怒鳴る。ほんとに心臓止まるかと思ったんだから!
はああ、と深くため息ひとつ。ああもう…

…でも、よかった。
本当、だったら、どうしようかと思った。
ああでも、私ってやっぱり欲張りなんだなあ。
彼のそばにいれるだけで十分、とか思ってたつもりだったのに、本心は違ったみたい。

他の誰かより、ずっと、彼に近い存在でいたい。誰にも渡したく、ない。
自分でも気付かなかった独占欲。…恋人でもないのにね。そう思うと少し寂しいけど。

「話は別にあります。」
「は、あ、そっか。はい。」
そういえば、話がありますって言われたんだっけ。さっきので全部吹き飛んでた。
「何ですか?」
首を傾げると、小さく笑う彼。

「あなたの独立が決定しました。」


………はい?


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