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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case028 イムコス(Goopon)
2002.07.25東京第15回 事例報告−2

"Goopon"が拓く新マーケティング・モデル

株式会社イムコス 常任顧問 尾崎厚夫氏
http://www.goopon.com/

はじめに

 当社は昨2001年5月の設立です。新しい形の電子クーポン運営と付帯サービスを提供する目的で生まれました。社名のイムコスは“Interactive Marketing & Communi-cation Service”に由来します。消費者を主体としたIT時代の製配販の新たなプラットフォーム形成に貢献できればと願っています。概要をお聞きいただき、一人でも多くの方々のご理解ご賛同いただければ幸いに存じます。

グーポン誕生の背景

 私どもの電子クーポンは「グーな買い物、グーなポイント」というキャッチフレーズから「グーポン」と呼んでいます。いま何故「グーポン」なのか?
 かってクーポン社会のアメリカに倣って、いずれは日本もクーポン漬けの時代が来ると思われていた時がありました。しかしそうはなりませんでした。流通構造や消費者行動の違い、メーカーマーケティングの違いなど、さまざまな要因からクーポンの普及に至らなかったことはご存知の通りです。
 そして迎えた21世紀、未曾有のデフレスパイラルの環境下、一方ではITの革新とインターネットの急速な普及・浸透によって、すべての企業がマーケティングの革新を迫られております。メーカーや小売業の違い、或いは業界の違いにかかわらず叫ばれている革新のコンセプトは「お客様(消費者)が見えるマーケティング」ということのようです。
 特に小売業の店頭での顧客獲得競争が、小売業自身もさることながらメーカーにとっても共通の課題としてクローズアップしてきたことが、お客様から店舗や商品を見直そう、お客様の情報の共通理解から一緒に問題を解決しようという認識が出てきたと思われます。
 イムコスのグーポンはこうした状況下で生まれるべくして登場したともいえます。情報、有益な情報、消費者・小売業・メーカー誰にとっても有益な情報、その双方向の交換によって生まれる価値を軸にした新しいマーケティング・プラットフォームが、このデフレスパイラルへの1つの答えを提供するものと考えられます。勿論、ITという与件なしにはあり得なかったことも事実です。



 こうしてご覧のような方々の出資と体制でわが国初の電子クーポン(共通ポイント・サービス)会社が誕生しました。

グーポン・サービスの仕組み

 ではグーポン・サービスをご説明いたします。会員登録(入会金・会費とも無料)をした消費者がグーポン発行企業のグーポン商品(ポイント付与商品)を買うとポイントが付き、貯まれば用意されたメニューから好みのものが還元されるものです。この消費者メリットを中心にしてメーカーの役割・メリット、小売業の役割・メリットを統合したのがグーポンのビジネスモデルです。図を参考に補足します。(下図)

 会員登録は携帯電話あるいはパソコンからWeb上で行ないます。メールアドレスは必須です。登録が済むと個人ごとのホームページ「My Page」が開設され、グーポン発行企業からの告知がグーポンセンターを通じて毎週木曜日にメールでなされます。その情報を基に会員は加盟店での購入に役立てます。購入されるとその情報がグーポンセンターの”POS DB” ”会員 DB”へ入りポイントが付与されます。発行企業には会員ID付きのPOSデータが週次で報告されます。

 店頭ではPOPやコーナー展開などで訴求します。基本的には定番展開商品、非価格プロモーションです。
 会員への還元メニューはVISAギフトカードとかデパート商品券などいろいろありますが、将来は買物割引券とか小売業のポイントカードへの振替、外部景品業者との連携など発展が考えられます。

 以上の基本的な仕組みをご理解いただいた上で、若干、各関与者のメリットを補足してみますと、

  *消費者:日常の買物でのポイントの他に、アンケートや懸賞への参加による加算機会が増えます。(後述のグーポン・サービスの種類との関係で)
  *メーカー:「誰が、何時、何処で、何を」というリアルな情報から、営業、マーケティング、調査などへのインテリジェンスの質が格段に向上。
  *小売業:ハウスカードの有無にかかわらず買上点数・来店頻度の増加、的確な販促企画、ロイヤリティの向上などが期待できる。

などです。

 グーポン・サービスをベースにメーカー様への提供メニューは様々なものが考えられていますが、スタートしたばかりなので具体的にご提供できるのはこれからというのが現状です。
 いずれにしましてもこのビジネスモデルが機能するためには第1に会員数の拡大、第2にグーポンがスキャンされる機能の拡大=参加小売業の増大、第3にグーポン商品=参加メーカー数の拡大、この3条件が出来るだけ早い時期に、ある程度の閾値を越えないと成り立ちません。課題というより、それは大前提条件です。
 小売業の参加については、3月三徳様3店舗(SM)、4月マツモトキヨシ様524全店舗(DG)、7月同じくマツモトキヨシ様22店舗(HC)が稼動。他に確定しているのが10月大丸ピーコック様66店舗(SM)、ファミリーマート様約6000店舗(CVS)など次々に拡がりの緒についたところです。

 メーカーの方は実験参加を含めて7月現在、別表のような各社様になっております。(下図)

グーポン・サービスの種類

 ここでは運用主体、つまりメーカー・小売業の側から見たグーポン・サービスの種類を整理してみます。大きくは4つの領域になります。(下図)

 プロモーション関係では基本サービスとオプションがあります。前者には会員一律発行か属性を選択しての発行かの2種類。後者はアンケート等消費者参加を促す施策メニューがご利用いただけます。
 次に情報サービス関係です。既に幾つかは提供しておりますが、ご要望によってもっと増やしていく考えです。ただし小売業様によってはレジ通貨客数厳秘ということがあり、数量PIで代行するようなこともあります。
 次はリサーチ関係です。これにはあらかじめパッケージ化しておきオンライン上で微調整すれば済むメニューと、クライアントオリジナルとがあります。前者には発売後の反応を追うクイック・リサーチやトラッキング・リサーチ、容器やコンテンツを評価するビジュアル・リサーチなどを用意しています。後者ではクライアント側のマーケティングの検証や仮説構築のための視点からいろいろな活用が考えられます。ご相談に応じる体制を整えつつあります。
 以上、いずれにしても、私どもグーポン・サービス・メニューの特徴は、「会員属性、購買(POS)データ、購買履歴、店舗属性」など言わば「お客様の顔」をある程度見ながらのプロモーションや、実験或いはリサーチが出来るところにあります。今後、ある規模に発展し、データ量も蓄積されますと、もっと可能性が増えてくると思います。価値あるプラットフォームが実現します。



グーポン・サービス、今後の課題

 新しい考えに基づく電子クーポン「グーポン」の概要は以上です。今後の課題など幾つかお話して終わりたいと存じます。

  1.未だ実験または開始間もない状況ですが、グーポンの仕組みの有効性を納得いただけるデータや事例を準備します。三徳様とは8月から3ヶ月間、膨大な計画を組んでいますし、マツモトキヨシ様ともデータと分析が進んでいます。それらからの知見をご紹介できるものと思われます。

  2.メーカー様への説得ポイントの準備、整理が必要です。経営のトップレベル、マーケティングレベルでは理解を得られても、実際に現場の数字を追及される営業段階では「販促費vs効果」を測り難いのでネックとなります。“お付き合い”でのご参加では本来ではありませんので、現状の“補填”やその清算コストとのトレードオフ等、ABC面でのご提案も出来たらと考えています。

  3.何よりも参加小売業の拡大です。業態もSM,DG,HC,CVSと広げるよう鋭意努力中です。その上で多くのメーカー様の参加を促すこと。本来は同時進行なのですが、立ち上がり時期の戦術として特定チェーンに特化もやむを得ないと考えております。

 設立、稼動とも日も浅く、未だ皆様にご報告の段階では無いと思われますが、構想自体は日本の新たな流通インフラづくりを目指しているという自負もありますので機会をいただきました。ご清聴ありがとうございました。

  Q&A

Q:ポイントの率、付け方?
A:グーポンは値引きでなく「景品表示法」の管轄にはいる。1000円以下で100円まで、1001円以上10%未満の規制に順ずる。グーポン1ポイント1円としている。また率はクライアントの状況で様々だが平均5-7%だ。

Q:普及が進むと逆に小売業としての差別化がしずらいので普及の足を引っ張らないか?
A:グーポンはメーカーのFSPという戦略的な発想が根底にある。小売もFSPは重要課題であり、両者の新たなコラボレーションになればと考える。前向きな解決策はありうると思う。(文責:事務局)
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