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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case023 日本Eピファニー
2002.01.23東京第12回 事例報告−2

次世代CRMの構築ツール"E.5"の概要と導入事例

株式会社日本E.ピファニー 代表取締役会長 徳末哲一氏
http://www.epiphany.co.jp/

はじめに

 私どもはいわゆるコンピュータの業務ソフト業界に属しています。その中でもCRMはあと2,3年は最も脚光を浴びる分野です。今日はシステムのご専門外の方々にも分かり易くとの事務局さんのご要望でしたので、私どものソフトの概要と導入事例を簡単にご説明させていただきます。どうかお気軽にお聞きいただければと存じます。

E.piphanyについて

 6年前にアメリカのシリコンバレーで誕生した会社です。MITのいわゆる天才系の何人かが集まって起こした企業の1つです。その後ITバブルで多くの会社が消えていく中、このCRM業界200社で生き残り10社の1つとして健闘しています。ものごとの本質・意味などを瞬時に直感・洞察することを英語で”epiphany”と言いますが、私どものソフトが顧客企業の顧客に対するリコメンデーションをひらめきのごとく実現する、という意味で社名になったようです。

 会社を簡単にご説明します。2000年度売上$127M、顧客数365+、社員数750+、拠点が世界25箇所+です。顧客はフォーチュン200社の内3、4割が私どものシステムを導入しています。一般に社員が1000〜2000人にならないと海外進出しませんが、グローバル展開の顧客が多いことから私どももグローバルな対応を必要とされている結果です。なお現預金$350M+とありますが、シリコンバレーでは重要な指標とされていまして、この企業は大丈夫かという判断根拠の1つになっています。成長率は564%とナスダックでも飛び抜けています。

 E.piphanyが一般の天才系の会社と大きく違うのは、立ち上がるとすぐ経営のプロ集団に委ねられたことです。KPMGからRoger Siboni、NetscapeからKaren Richardson、また経営諮問委員会にかの有名なMartha Rogersなど錚々たるメンバーが製品の将来性を確信して参加しています。まさにアメリカンドリームを目指したのです。

 日本E.ピファニーは2001年3月に設立しました。残念ながらコンピュータソフトの日米格差は広がる一方で、わずかにゲームソフトでの日本優位が言われているのが現実です。私どもCRMに関するアメリカ生まれのテクノロジーを使いながら、日本の会社として育っていきたいと考えています。
 製品価格が2000万円から20億円と幅がありますが、 事業展開にあたっては日本のSIを背負って立つ方々のほとんどがインプリメンテーションパートナーとなっていただいており、この方々が実際に日本の個別企業に合わせて対応してまいります。
 既にE.piphanyを導入していただいている顧客には、金融関連(シティバンク、三和銀行他)、テレコム(AT&T他)、旅行(アメリカンエアライン、ヒルトンホテル他)、ハイテク(HP、Microsoft、Compaq他)、リテール(Sears、Amazon、GAP他)、製造・流通(P&G、Kodak、アメリカトヨタ、日産アメリカ他)など各分野にまたがっています。因みにMicrosoftは当社最大の顧客ですが、約1億人の顧客リストの様々な活用に利用しています。Amazonの有名なリコメンデーションなども背景にはE.piphanyがあるわけです。変わったところではバスケットボールのNBAも顧客企業に入っています。

製品の開発背景

 私どもの企業ドメインは「カスタマーエコノミーのためのソフトウエアー」提供です。従来は企業側から見た一方的なマーケティングが主流でした。いわゆる「ベンダーエコノミー」、マスマーケティングでした。その成果や効率が低下するに従ってもっと緻密なマーケティングが求められ、セグメンテーションやマスカスタマイゼーションが言われ、インターネットの登場に乗って更に拍車がかかりone to one だ eCRM だとなって発展してきました。しかしそれでも新たな成果に結びついた例はあまり出ていません。本質的にはベンダーエコノミーから抜け出せていないことが原因と思われます。明らかにパラダイムシフトが要るのです。

 そうした状況からの打開策として私どもは「次世代CRM」、カスタマーエコノミーに基づくマーケティング、即ち「ダイアログマーケティング」ということを提唱しています。要は正しいカスタマービューによる生活価値の最大化、あるいはライフサイクルサポートをしましょう、その結果としてカスタマーの中での企業のシェアを向上しましょうということです。

 “From insight to action” が私どものスローガンですが、「顧客を知る(insight)」ことこそ企業にとっての最大の成功要因であると考えられます。Insight というのは例えば

 ・私を知って欲しい。でも、何度も同じ質問しないで
 ・常に適切な対応をして欲しい
 ・私の関心・要求を尊重して欲しい
 ・私のプライバシーを守って欲しい
 ・いつまでもキチンと対応して欲しい
 ・情報へのアクセスを私が自由に出来るように、etc.

ということです。これまで多くの企業はこれらinsight無しに、コールセンター・営業・ディーラー・回収管理等々個別バラバラの顧客情報に基づいた対応をしていたのではないでしょうか。言ってみれば現実と乖離した顧客対応を平気でやっていた!

 真のソリューションとして、これからの企業に課せられていることは

 ・お客様の「シングルビュー」を作りお客様を知る
 ・洞察(insight)から行動(action)の時間短縮
 ・全てのお客様接点(チャネル)のシンクロナイズ
 ・潜在顧客を含め一人一人の価値を理解する
  ・そうした顧客関係から収益性最大化を図っていく

ことではないでしょうか。E.piphanyの製品はそうした課題に応えるべく開発されました。

 つまり「分析系」と「実行系」の2つの領域における様々な機能をシームレスに展開できる統合的ソリューションとしてご提供しようとするものです(図)。社内に散在する顧客データを統合してシングルビューを作り、それをデータウェアハウスに入れレポート化し、データマイニングにより対象の選定後、キャンペーン計画、実施する、ここまでが「分析系」。その後が「実行系」で、メールやDMなど双方向コミュニケーション、営業やディーラーによるone to one、あるいはSFAへと展開してゆきます。ここで「顧客によるセルフサービス」とあるのは最近、20代、30代の人々で人に接するのが嫌いという傾向が強まっていることに対応するシステムです。よりパーソナライズされたCRMでして、今後益々重用になるでしょう。最後はエージェントによるサービスです。これも従来のように注文やクレームを受けるだけの機能から、そうした顧客のシングルビューを判断してオートマチックにクロスセルやアップセルに結び付けられることが分かってきました。

アーキテクチャー“E.5”

 ではE.piphanyのE.5アーキテクチャーをご説明いたします。それは私ども「3本柱」と呼んでいる3つのプラットフォームから構成されています。それに入る前に2つの前提条件を申し上げておきます。

 1つは、「マルチタッチポイントのインテリジェント・カスタマー・インタラクション」環境構築が必要です。電話をはじめ携帯機器、パソコン等のことです。
 2つ目が、何度も申し上げてきたように「顧客のシングルビュー」を作るため、各企業がこれまで作り上げてきたシステムや手作りの仕組みなど総動員して、ETLを使って整理することが必要です。かといって初めから完璧・壮大なものをと言っているわけではありません。メールアドレス位から始めても良いのです。とにかく従来のようなIT主導による行き詰まりの轍を踏まないためには、”Start small, Think big!” がCRM導入の鉄則です。それと”Glow quickly!”でしょう。やってみなければわからないし、やらなければ遅れをとるのも事実です。




 ●アナリティック・プラットフォーム

 第1の柱がアナリティック・プラットフォームです。いわゆる分析系です。分析からキャンペーンマネジメントまでをシームレスに実行し、マーケティングプロセスからの逸脱を防止し、かつ迅速ですばやいキャンペーンの多段階の展開を可能にしてくれます。
 例えばキャンペーン実施のシームレスな流れとは、問題や機会の発見(OLAP)、問題抽出・モデル・スコア(マイニング)、ターゲットリスト作成、そしてキャンペーンの企画までを言います。
 或る商品の伸びが思わしくないという場合、そのことに最も関連が深いとみられる要因(顧客属性)を数理統計分析し、それに基づきターゲットを洗い出し、今回はそのうち何分の1にするかを決めればリストが作成される仕組みになっています。Microsoftなら1億人から、Amazonなら2500万人から絞られてゆくことになります。絞り込んだターゲットに対するキャンペーン企画(内容)は営業企画部門がオーナーシップを執るべきです。実施の中心ツールはe-mailやDMですが、ジャンクメール防止なども自動的に働いて発信されます。これらはデイリーに管理されており、様子を見て2週間後に次のアクションをとるなども簡単に行うことが出来ます。アメリカンエアラインではキャンペーンサイクルが従来9ヶ月かかったのが、E.5の導入で現在は2週間に短縮されました。なおターゲット選定には人間に頼らないターゲティング・スコアリングという機械的処理システムもありますが、営業系の分野の人には馴染まないようです。

 ●リアルタイム・パーソナライゼーション・プラットフォーム
 第2の柱がリアルタイム・パーソナライゼーション・プラットフォームです。コンピュータの高度なアルゴリズムによって可能となったものです。
 ところでパーソナライゼーションとは、日本では未だ「ありがとうございます」程度の対応ですが、リアルタイムのカスターマービューを持つことによって瞬時に様々なリコメンデーションを可能にしてくれます。

 ・Wells FargoのATMはカードが挿入されると顧客の名前とともにグリーティングメッセージを表示する
 ・American Expressは電話でゴールドカードを申し込と旅行保険を推奨する
 ・Amazon.comは、顧客がショッピングカートにJohn Grishamを入れると他のスリラーも推奨する

など、です。

 またキャンペーンでも、伝統的なキャンペーンマネジメントは初めに商品ありきで、この商品に合いそうな人は?という発想でターゲティングしてきました。しかしこれからはお客様ありきで、このお客様にベストな提案は?という形でのキャンペーン、リアルタイム・パーソナライゼーションにならざるを得ないでしょう。

 さて、こうしたリアルタイム・パーソナライゼーションを可能にしているアーキテクチャーの概要が次の図です。


 企業側で待ち構えているのはコンピュータです。あらゆる情報を駆使し分析して、最後に的確なオファーを如何に提示するかまで導いてくれます。ただし、最終的には顧客の受入率と収益性によっていくら儲かるかの判断が重要になります。

 ●インタラクション・プラットフォーム
 第3の柱はインタラクション・プラットフォームです。
 これが実行系の仕組みです。一般にコールセンターないしはコンタクトセンターとして展開されています。またWeb経由へのセルフサービスなどです。
 要点はロイヤリティ(優良顧客)確保に向けて、見込み客→顧客→リピーター各段階でのチャンスを最大限活かすか、そこに迫るシステムです。成否はなんと言ってもリアルタイムなシングルビューが握っています。

最後に

 20世紀は極言すると「場」(店舗)を巡るマーケティングでした。これからは何億人だろうとパーソナルに働きかける時代です。セルフで完結さえしてしまいます。従来の方法を補完する以上のマーケティング方法が出現しています。E.piphanyをご理解いただけたら幸いです。ご静聴ありがとうございました。(文責:事務局)
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