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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case015 NTTドコモ
2001.05.15東京第8回 事例報告−1

ビジネス機会の爆発促進、”iモード”の場合

株式会社NTTドコモ
ゲートウェイビジネス部コンテンツ開発担当課長 山口善輝氏
http://www.nttdocomo.co.jp/

”iモード”のコンセプト

 発想の原点はお客さまとコンテンツプロバイダーとNTTドコモ、この3人の役者の”WIN-WIN”関係づくりにあります。お互いにとってのベネフィットがなければ、この種ビジネスは成り立たないという認識に立っております。しかも単独企業で市場を創り出すことは容易ではない、様々な企業さまがポジティブに動いてフィードバックしていくことが必要だろうという判断もありました。
 5月13日現在、iモードユーザーは約2345万人、提携企業962社1600サイトです。初めはiモードユーザーがゼロ、提携企業は67社からスタートしましたから、一方が増えると片方も増えるという相乗効果が読み取れます。他に一般サイトというものが43,000サイトほど、検索エンジンが既に126ほどありまして、これらがまたポジティブな効果を生んでいるという結果になっています。さらに最近は法人利用も出てきましたので、ユーザーの更なる拡大が見込まれます。
 99年2月のスタートから半年位は、せいぜい月に4万人増のスローペースでしたが、8月頃から月100万人ペースでコンスタントに増加してきました。これには私どもの戦略、つまり提携企業様がiモードという技術に乗って来やすい環境をつくったことに成功のポイントがあると考えています。iモードは携帯電話に取り入れたことは新しいことですが、技術的には何も新しいものではありません。インターネットとしてもなんら難しい技術でもありません。従ってコンテンツメーカーさんも作りやすく、いいものつくればすぐ見てもらえるしお金にもなります。非常に簡単にビジネスモデルも組みやすくなっています。海外で失敗したWAPは携帯ならではの言語にしてしまったことが災いしました。つまり携帯言語でしか作れないという制約から、インターネットを向いた我々のiモードのような広がりをもてなかったのです。
 またiモードの訴求に関しては、ユーザーにも分かり易い方法が採られましたが、その点も普及に弾みをつけたと考えられます。我々は当初、iモードを知らせるのにインターネットとかWebとかを一切出しませんでした。それよりも先ず、iモードで何が出来るかを知ってもらうことに主眼を置きました。ヒロスエを起用した広告でもお分かりのように、いくつかのコンテンツメーカーさんの画面を一緒に載せて「使うケイタイ、iモードはこんなに使える」というプロモーションから入りました。我々としては新しい手法でしたが、このようなユーザーサイドのマーケティングが出来たのも、”Internet Way of Thinking”つまりWAPを反面教師とした「インターネット的に考える」という戦略があったからだと思われます。

”iモード”誕生の背景

 携帯電話会社としての企業事情からみたiモード誕生の背景に少し触れさせていただきます。
 「モシモシ、ハイハイ」の電話としては、既に固定網の普及台数を抜いて6,670万人(携帯6,090万、PHS580万)に達しています。日本の人口1億2,000万に対して8,000万〜9,000万がサチュレーションの限界だろうと数年前から予測はしていました。ではどうするか。

 一つはあくまで人口普及率の世界で、音声がクリアだとか価格が安いだとかの消耗戦を続けていく方向。ここへはあまり入りたくない。そこで当社は、数年前に大西社長が言う「第1次S字カーブから第2次S字カーブをつくる」方向への模索を始めていました。それが”モバイルマルチメディア”の世界です。
 そのためにはiモード以外にもいろいろなことをやっているわけでして、例えば加入者数を増やすという点では各種の自販機への搭載、PC.PDAへの搭載、あるいはペットとか家族とか所有物等大切なものへの搭載などを考えています。例えば高級オートバイにPHSをという一見矛盾したようなニーズもあります。これは高速で通信というのではなく盗まれた時の位置情報が分かるというニーズです。
 また一方、通信単金を増やすという点ではモシモシ、ハイハイからデ−タ通信の増加が不可欠です。広く一般の人々に使われるものが必要です。その一つがiモードでした。メールやWebアクセスなどが飛躍的に増えました。パケット通信と言いますが1人1ヶ月2,000数百円の使用まで来ていまして、当社の収入にも大きく貢献しています。
 つまりモバイルマルチメディア市場といえば携帯PC、PDA、カーナビそれぞれと携帯電話の組合せがありますが、iモードは敢えてシンプル貧弱な画面、しかも電話優先、従って携帯電話機というこの大きさ・形にこだわったところが普及のポイントになったと判断しています。

 ちょっとiモードの使用状況を見てみます。男女比では6:4。年代別では10代7%、20〜39才63%、40才以上29%。また個人当たりのパケット通信量は99年2月を1とすると約3倍に伸びており、普及と共に下がっていくこれまでのパターンとは全く逆の状況です。つまりユーザーはそれぞれに使いこなしている、ステップバイステップでメールやWebアクセスなど新しいスキームに慣れていっていることが分かります。実際、週に1度以上Webにアクセスしたユーザーが当初半分だったのが現在では90%を超えるまでになっています。
 またインターネットではなかなかお金は取れないという中で、iモード契約者の半数が有料のサイトにお金を支払っています。1人平均2サイト。勿論、ベネフィットがある魅力的なコンテンツでないと選ばれないことも事実です。

”iモード”の進化と戦略

 iモードの戦略に関してもう一つこれからについて付け加えておきます。
 この「iモード発展戦略」図は、e-mail、Homepage、Groupware、Java、そしてIMT-2000(Foma)へと、あたかも技術先行で市場を創っていくように表現していますが、実際はそう単純ではありません。技術が次世代に移ろうとも、お客さまには前の世代のサービスが常に見えるようにしておかないと、一気に新しい技術やサービスには飛びつかないと認識しております。お客にとってベースになるものができて慣れ親しんで、その上で付加価値がついたものを納得して徐々に取り入れていくという過程が重要です。一般のお客さまというのは保守的なものです。これはコンテンツを作る側にとっても言えることです。

 またこの図は「縦の進化と横の進化」とありますが、縦すなわち技術、横すなわち提携企業とのアライアンスを表しています。縦の進化と横の進化との無理の無い組合せによってお客さまにとっての便利さが増していくと考えています。
 例えばソニーさんのプレイステーションと組むことで、iモードを持っていればいつでもどこでも楽しめるようになります。またコンビニエンスストアーとか飲料の自販機と組んで、iモードは手軽に使える端末になってゆきます。
 次にiモードのコンテンツ、つまりiモードがカバーする市場について触れておきます。「コンテンツ・ポートフォリオ」図でお分かりのとうり、音声をベースにしてメール(e-mail、携帯メール)機能とWebサイトへのアクセス機能を持ち、サービスメニューとして取引系、データベース系、情報系、エンターテインメント系の4系統があります。お陰さまでそれぞれのメニューで提携企業が増えています。現在のところエンターテインメントが70%、情報が20%と大部分を占めていますが、今後の法人企業の増加によって取引系やデータベース系の増加が期待されます。

Javaによる”iアプリ”について

 新登場の503iアプリについてご説明いたします。
 これまではブラウザの操作によってサーバへアクセスするだけだったのが、Javaの登場で携帯電話内のソフト(アプレット)によってより大きな自由度をもつことになりました。1つ目はダウンロード型アプリケーションの利用が可能になり、ゲームをダウンロードしてローカルでプレイ出来るようになりました。2つ目はエージェント型アプリケーションが可能となり、ユーザーの設定により端末機が自動的に情報を更新することも出来ます。つまり株価の変動など最新の情報を入手することが可能になりました。またユーザーインターフェースが格段に向上してますので、位置情報なども拡大縮小やスクロールでより精緻さが得られます。また着メロとiアプリを組み合わせてカラオケの練習が出来たりもします。
 なお今回、かなりのゲームメーカーさんが参入されていますが、10K〜20Kで相当面白いものが出来るのが要因です。ゲームボーイの当初のものが今iアプリで出来てしまうわけです。プレイステーションなどのソフトで5万本以上がヒットと言われるのとは比較になりませんが、2,100円という代金が取れるのと月々300円の使用料ですから何ヶ月か使ってもらえばビジネスになるという目算もあって、ゲームメーカーさんが頑張っています。
 またiアプリはデータを入れ替えることができますので、以前は必要なものを一々取り込むのにまた通信料がかかったのが、今度は必要なところだけ差し替えられるのでパケット量が20分の1位で済むという利点もあります。何度も繰り返し見るようなものに適しています。また今回ビジネスユースも想定してセキュリティー機能を持たせたり、端末からの問合せも分かる機能なども備えてあります。スケジュールとか在庫状況とかどんどん変わってゆくものの最新情報が見れるわけです。これらは携帯電話が「勝手に動いて」何かをしてくれるというエージェント機能ですが、今回の503iの大きな特徴です。

”FOMA(フォーマ)”の世界と将来像

 5月から実験開始のFOMAは、503iシリーズに更に次の機能をプラスしたものです。

  ・高速パケット通信(下り384〜64K、上り64K)
  ・MPEG4デコーダー搭載(衛星映像キャッチ)
  ・HP、JAVA、メールの容量拡大
  ・マルチコールファンクション(iモード見ながら電話ができる)
  ・外部インターフェースの充実
  ・USIMチップ搭載
  ・海外ローミング

などです。いくつか実例をお話します。


 先ずニュースが見れます。記者会見とかイチローの第4打席とか見たいところだけ、20〜30秒間の映像と音声で見られます。また音楽や映画のプロモーションやCMが見られます。TSUTAYAで視聴してみてすぐ発注するなど可能です。それから将来はIrやBluetoothなどのインターフェースで外部機器と連動させ、例えばPOSレジと繋いでキャッシュレスとか、プリンターへ画面をプリントアウトするなど端末機に変ってゆきます。また家電との連動、例えば外出先や別の部屋から番組を選んでVTRに予約させるとか、リモコン替わりにもなります。更にコカコーラさんの例のような自販機に連動してキャッシュレスで買えるとか、もっと将来はソフトの進化によって定期券替りになったりもできます。
 これら縦の進化と同時に、一方では横の進化つまりアライアンスでも企業さんに頑張っていただいております。例えばカーナビとの連携では単に見れるだけではなくiモードで得た飲食店まで誘導してくれます。ローソンさんのiコンビニエンスでは売る側買う側にとても便利な連携を実現できます。ソニーさんのPlayStationと繋げば家でも外でも楽しめます。またドコモAOLでは固定網とモバイルの連携でグッと世界が広がります。セガさんとはアーケード・ゲームとiモードのゲームを連携できるようになります。コカコーラさんとはiベンディングのテストを渋谷から始めています。
 これら縦(技術)や横(アライアンス)の進化に加えて、世界へのビジネス展開にも期待しています。当面は資本提携から入ります。各国それぞれにインフラ整備の必要がありますからすんなりとは行きませんが、iモードは充分受け入れられるものと期待しています。

 ご列席の皆様におかれましても、新しいビジネスの開発に当たってiモードの可能性をヒントにしていただければ幸いです。そして是非とも私どもとのアライアンスによって成長の機会を実現されることを念じて、終わりとさせていただきます。ありがとございました。(文責:事務局)
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