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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case014 ヤマトロジスティクスプロデュース
2001.05.15東京第8回 事例報告−2

オープン化時代のロジスティクスについて

ヤマトロジスティクスプロデュース株式会社
取締役情報システム本部長 星野芳彦氏
http://www.y-logi.com/

宅急便市場とヤマト運輸

 当社(YLP)は昨年の5月に出来た会社ですので、先ずはヤマト運輸についてご紹介します。大正8年の創立です。現在約9万人の従業員で9億個の宅急便を運んでいます。お分かりの通り人件費比率の高い事業で約60%を占めています。車両は直接お客様へのお届けに約32,000台、お客様には見えませんがベース(トラックターミナル)間を走る傭車が15,000台と、計5万台程が稼動しています。取扱店が約30万店。ヤマトの事業所が2,660箇所、全て自営主義で運営しております。
 ところでヤマトは1976年に宅急便を始めて26年目を迎えています。さまざまなサービスをラインアップしてきました。遂に365日営業、希望時間帯お届けまで参っております。最近では引越し分野にも参入いたしました。ただどんなサービスも伸びは次第に鈍化するものでして、ここ2‐3年は10%を切る成長率になっています。1999年には第5次NEKOシステムを開始しました。これまでとの大きな違いは“バッチからインターネット対応へ”という点です。時間帯お届けということからインターネット上でリアルタイムに配荷情報を提供できるようになりました。
 簡単に宅配便業界の現状を見てみますと、ヤマト9億、佐川5億3千万、日通3億8千万、郵政3億1千万、その他という取扱個数です。もともとBtoBに強い佐川さんがBtoC、CtoCへ急進して伸びを示しています。日通さんも同様にBtoC、CtoCでの事業強化を打ち出してきています。また首相も変わって郵政もどういう展開になるかわかりませんが、設備や車の整備・投資が課題になりそうです。ヤマトは逆にBtoBが課題でYLP設立の背景ともなりました。
 なおヤマトの情報ネットワークとしては、ホストコンピュータが東阪2元管理、汎用中型コンピュータ4箇所、ワークステーション3,000台、携帯用端末36,000台、作業用端末8,000台、ペン型スキャナー74,000台などとなっています。冒頭お話したロジスティクネットワークと合わせて、全国4,600万世帯100%に毎日500万個の確かな集配を実現しております。

ネットワーク事例の紹介

 ●コレクトサービス
 いわゆる代引きサービスです。年間売上109億円、3,200万件の取扱があります。回収額が約5,000億円に達しており、将来金融業をやるかはわかりませんが相当繁盛している事業です。勿論、金融免許をもっています。他社さんも代引きはやっていますが、ヤマトのように債権の買取までしているところはありません。年率116%の伸びで、グループでも儲け頭の会社になっています。

 ●ブックサービス
 インターネットECです。始めは電話とかドライバーで受けていましたが、インターネットやiモードの普及で弾みがつき前年比509%と急拡大しています。売上34億円、185万冊、うちインターネット受注22万冊となっています。利用者の分析を進めていますが、中心世代は19〜22歳、受注時間帯のピークが午前2時などの特徴が見受けられます。IT革新で発注・受注の仕組みはどんどん進みますが、ますます24時間の配送体制がECの焦点になることを実感させられております。特にiモードからの注文では「今、三越で買い物してるから店の前まで頼む」などお届けの場所が多様化することが予想されますから、対応の方法を鋭意研究中です。

 ●文具カタログ販売「CATWORK」
 アスクルさんのまねごと程度ですが、北海道、九州、中部でスターと、近々には関東でもはじめます。地域の文具卸と協同しますが、運ぶだけのタイプ、卸から仕入れてやるタイプの2つのやり方があります。この事業はまだまだサービスの一つという域を出ていません。

 ●コールセンター
 これは集配効率アップのためのシステムです。先に2,600箇所の拠点と言いましたが都内などではどうしても効率が落ちます。その解決策です。しかしCTIなども装備しており、今後のeビジネスにも対応させることが可能になっています。これは大田・世田谷コールセンターの例ですが、営業所17店、車両389台、事業所(会社)数66,545社、477,539世帯をカバーしています。現在東京に22箇所ありますが地方も含めて拡充の方向です。

eビジネスとロジスティクス・ソリューション

 ヤマトのサービスをいくつかご紹介しましたが、これらのネットワークを総合したサービスとして「インターネットショップ&3PL」のご提案をしております。つまりeビジネスとして受注から配送までの一括アウトソーシングを請ける仕組みが出来ました。現在200数十社にご利用いただくまでになっています。

 特徴は一括丸ごとから部分請けまでクライアントの状況に合わせた利用が可能なことです。また顧客からの注文・問合わせもインターネットに限らず電話やFAX、手紙といったアナログな方法にも対応しております。それを可能にしているのがヤマトならではのWeb-BINCSという総合情報システムです。ネットワーク・コンピューティングセンターを中心に、nekonet、テレフォニー・マーケティングセンター、物流システムセンターがシームレスに統合されており、未だ他に類例のないものだと自負しております。
 ですからインターネットビジネス企業様だけでなく、従来型のビジネス企業の方々にも十分ご活用いただけるサービスになっております。決済方法も代引き、コンビニ払込振替、郵便・銀行振替、カード決済など選択肢が豊富です。
 この8月開始で検討中ですが、コンビに留め置きを始めます。顧客が夜中に出した注文を朝には商品を近くのコンビニで受け取れるようにしようというものです。現在でもヤマトは朝4時には店舗へ集配に行っておりますから可能です。今後コンビニ各社もインターネット対応が拡大するでしょうから戦力になる仕組みだと考えています。
 また、営業所留め置きというのも始めています。BtoB向けサービスです。企業の営業の方々に朝でも取りに来ていただけば運賃の節約になる。また今後、ベース留め置きも検討中です。全国70箇所で24時間オープンしてますし、夜9時には10〜20トン車が動き始めて荷物が2時〜3時に着けば、地域内だったら夜中の注文にも間に合う可能性が高いわけです。今、各ベースの2、3階には物流センターとしてスペースと設備がありますが、稼働率はまだ余裕がありますので、今後のBtoBに備える意味でも活用していく方向です。
 なお、今後3PLがますます求められる背景について、私どもは以下のように理解しています。
 一言で言えば「売上を増やす物流」の再構築でしょう。荷主サイドの要請としては、特に先行インターネット企業群の業績不振に代表されるように、

  ・SCMの未構築(部分最適でなく全体最適が必要)
  ・CRMの不備(特に物流サービスの差別化がキー)
  ・Web-EDIの未完成(物流もIT化が不可欠)

の認識がより明確になされるようになったこと。
 つまりこれらの要素の再構築なしには、インターネット企業のみならず多くの企業に明日はないということ。また物流サイドの状況としては、

  ・総合化(“運ぶ”以外の収益源の確保)
  ・業態化(1PLから2PL、存続のための3PLへ)
  ・情報化(情報投資コストの低価格化)

という潮流から、必然的に3PLの提案・提供者にならざるを得ないと考えています。

YLPの事業コンセプトと展開事例

 YLPはヤマト運輸のBtoB事業拡大に向けて設立されました。ヤマト運輸の情報システム本部とヤマトシステム開発とを合体させてできました。BtoCあるいはCtoCではなんとかトップシェアで推移してきましたが、BtoBは宅急便を始めるにあたって一切手掛けないと宣言し、実際、三越さんや東芝さんなどお断りしてきた経緯があります。またヤマトは集配時間が早いとか荷物に制限があるとか、佐川さんの8時9時、何でも運んでくれるのに比べて不便だとかで、ヤマトは嫌いという事業所さんも少なくありませんでした。
 ですからBtoBをやるに当たっては、ヤマトにこだわらないロジスティクスを進める方針も持っています。つまり荷主の要請によっては佐川さんなどにパートナーとなっていただくことも辞さずということです。要は荷主さんにとっての最適なロジスティクスを包括委託していくために、さまざまな専門パートナーと組んでソリューションするのがこれからの3PLだと認識しています。

 また、YLP事業の存在意義はキャッシュフローの格段の改善にあると言っても過言ではありません。つまり物流全体における在庫管理とキャッシュフローは、IT時代のビジネスモデルにとって一層、重要性を増しているからです。以下、事例をご紹介します。

 ●「ネットで繁盛」パッケージ
 eビジネスを始めたい企業、あるいは既に始めているがうまくいってない企業に対して、商品をヤマトに保管させていただくだけで安心して一切のビジネス運営をまかせられるというものです。

  ・商品の授受に関わる様々な状況に対応し
  ・代金支払い・回収に関する業務もスムーズにし
  ・注文や照会時にも的確に対応でき
  ・物流センターシステムも自由に活用できる

等々のソリューションが、月5万円で利用できるものです。都内23区内なら返品・修理といった対応もできる体制も出来ています。

 ●コンビニエンス・モデル
 あるコンビニエンスさまと展開しているモデルですが、これが雛型になると思われますので紹介します。コンビニさんにとって一番気になるのは個人情報が漏れることです。従ってヤマトは指示に従って仕入先へ荷物を取に行き、物流センターへ持ち帰りピッキングしてお客様へ届けるだけという関わりです。ベンダーさんも商品情報だけで個人情報にはノータッチです。いま全国6ベースで展開しています。

 ●“在庫更新”の重要性
 お客様の物流システムを考えるに当たって、もっとも重要視しているのは在庫管理です。Web対応時代ということでリアルタイムの在庫情報の提供が要請されます。どうしても実在庫とのずれが発生しますので、これをいかに無くすかの技術が問われます。事前打合せの80%はそのことに集中します。技術、ルール、ヤマトの物流センターサイドの錬度など様々な要因のコントロールによって水準を維持しております。そうした結果、お客様はいつでも簡単に在庫確認がWeb上で出来るようになっており、ヤマトの強みになっています。

 YLPはこれまでのヤマトの総合力を生かしながら、しかも顧客企業の新しいニーズにお応えしつつ進化して参る所存です、どうかご理解ご利用の機会を賜りますようお願いいたして報告を終わらせていただきます。

 Q&A

Q1.YLPのBtoBはメーカー物流も代行するのか?
A1.Yes.「調達物流」として例えば車のマフラーやバンパーなども運んでいる。

Q2.ヤマト自身はeビジネスをやらないのか?
A2.やらない。あくまで顧客企業のサポートに徹する。

Q3.ヤマトが持つ膨大な個人情報を生かさないのか?
A3.持ってはいるが使用を禁止している。

Q4.コールセンターは商品紹介もするのか?
A4.それはヤマトシステム開発が請けている。ヤマトはやらない。

Q5.BtoBよりBtoC、CtoCのサービス向上が課題では?
A5.然り、再教育中。

(文責:事務局)
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