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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case010 ライフヴィットコム
2000.01.25東京第6回 事例報告−2

”ライフヴィットコム”の取組みについて

株式会社ライフヴィットコム(松下電器)
東京オフィス コンテンツ企画リーダー 二宮英樹氏
http://www.lifevit.com/

はじめに

 サイトを立ち上げて間もありませんので十分なお話が出来るか疑問ですが、考え方の一端をご紹介させていただきます。
 2000年の初めには、40万品番からなる全松下商品を販売店さんにインターネットでビジネスをするB2Bを担当しておりました。2月にソニーさんがB2Cに出るというので、当社でもプロジェクトが出来てそちらへ配属になりました。3月にはそれも終了し、5月にはライフヴィットコムの準備室となり、10月20日オープンという目標も決められ具体化に入りました。
 4名が配属され、早く安くという”立上げ優先”で進めねばなりませんでした。4ヶ月で20,000〜30,000ページですから一応の量ですが、検索エンジンなども無く単純な紙芝居みたいなものにしか出来ませんでした。とにかく立ち上げて、評価や反応をみてどんどん変えていくことにしていました。

インターネット時代の到来

 先ずインターネットの現状と今後を概観しながら、ライフヴィットの考えの背景を整理してみます。
 ご存知のとうり18世紀末から19世紀初頭の第1次産業革命は「動力」によってもたらされました。19世紀中ごろからは電気・自動車・通信などによる第2次産業革命となり、そして20世紀末、第3次産業革命期に入ろうとしています。ITでありデジタルです。まだ揺籃期に入ったばかりであり今後の成長には計り知れないものがあります。ただスピードがはやいですから、素早い対応が不可欠です。因みに新技術が10%普及するのに要した時間でみると、電話76年、FAX19年、携帯電話15年、PC13年、インターネットは僅か5年、と言われます。

 1997年には「変わり者がぽつぽつ」と言われたインターネットビジネスが、2000年にはありとあらゆる分野で爆発しました。2001年は淘汰の年とも言われ、良いものしか残らないとまで言われています。
 インターネットの利用者は97年の1150万人が、99年にはPCの2000万人と携帯電話の700万人合わせて2700万人です。2005年にはあらゆる人がインターネットに接する環境になっていると言われます。また97年当時は20代、30代の男性中心だったのが、99年には女性が40%を占めるまでになっています。2000年末には既に半々とか。また我々の調査にも現れていますが、東京や大阪などの都市部以外の地方では、インターネット利用はPCより携帯電話のiモードが圧倒的に多くなっています。
 一方、ECの市場規模は99年で3500億円です。その半分以上が不動産・自動車で、しかも実際インターネットで購入まで行ったというより情報を得て通常の方法で買ったというケースが多いと言います。またインターネット利用者2000万人のうちEC経験者は50万人位とのデータもあるとうり、まだ花は開いていないと見ています。なお、郵政省の24品目の調査で家電の購入経験者は18位で6.8%というデータがあります。その下位に自動車や不動産がきているところをみると、やはり見て買いたい、触って買いたい、のかなと思われます。また、利用価値という点では「希少性」「24時間」「低価格」が3大理由のようです。
 なお、インターネット普及の阻害要因としては「インフラの不備」「情報リテラシーの遅れ」「セキュリティ」があります。もう一つ「業界構造上の抵抗」、つまり卸・小売段階からの疑問視があります。また日本特有の状況も次々と生まれています。つまり「PC以外のメディア・機器」の普及であったり、決済拠点・手渡し拠点への顧客の信頼性の強さなどです。

家電業界の現状と当社の課題

 工業会の出荷統計によりますと家電業界は91年をピークにズーッと縮小傾向にあり、遂に99年にピーク時の76%まで落ち込んでしまいました。海外から入ってくるもののせいもありますが,それ以上に国内家電の構造的問題、即ち台数アップでの単価急落構造が主因です。例えばビデオデッキは99/91比、台数で130%アップなのに平均単価が38%に下がり、総金額が激減という実態です。唯一エアコンだけが台数、平均単価とも横這いにあるという状況です。
 また家電の販売チャネルも大きく変わってきています。業界全体での地域家電店と量販店とその他の販売比率は、91年には約1対1対1でしたが、99年には約20対55対25になっています。商品別に見れば情報家電が急速に伸びて91年には3分の1位までになっており、好ましい傾向ではあります。
 ただ残念ながら当社はこうした業界全体の流れにも未だ乗れていないのではないか、91年からほんのちょっとだけの変化に留まっているのではという認識をせざるを得ない面が少なからずございます。地域家電店さん(ナショナルショップ)にしても、価格対応とか周辺量販店対応とか極めて厳しい環境に立たされています。どうやって生き延びることが出来るか。当社としても半分を占めるショップ店さんに頑張ってもらわなければなりませんが、差別化もしないといけないだろうといろいろな提案をさせていただいております。
 たとえば"One to one"の「エンジョイライフ提案の店」になりましょうとか、「4C3S(コミュニケーション、コンビニエンス、コンサルタント、クリーン、スピード、サービス、スマイル)」とか、リアルのところで特徴を持ちましょうという支援をしています。求められるものはデジタル、リフォーム、ホームメンテ、ヘルスケア、ホームセキュリティなどありますが、1つでも特徴が出せればいいのです。
 また電気店イコール小売店ではなく、「ナショナルショップ、イコールサービス業」に脱皮しましょうという働きかけをしています。ご店主の平均年齢が55歳を越えている現状ですから変身していくにも大変な努力が要ることは確かですが、乗り越えなければ明日は無いのも事実です。

”ライフヴィット”の基本スタンス

 さて、こうした背景の上で、ライフヴィットはどういう認識に立って役割を考えていくべきか。
 1つはとにかく「インターネットは拡大する」という前提に立つこと。国ぐるみのIT構想、進化の早い技術インフラによって家庭・企業・地域社会が確実に繋がる。2003年頃には本格的なサイバー・コミュニティが到来するだろう、我々は”IT on evrything”と言っていますが、現在のPCとか端末とかいうことを越えて、意識しなくてもあらゆる機器がインターネットに繋がっている時代が来ていると予想します。レンジにインターネットとかはシャープさんが出してますし、アイロンに電話とかもあるかもしれない!さらに重要なのは、そうなっていくと購買の主役がますます主婦にシフトしてゆくと思われます。今現在の主婦モニターの意見では、家電をネットで買うとしたら”1万円以下”のものしか出てきませんが、今後、この慣習をどう切り開いてゆくかが課題でしょう。

 2つ目はとにかく「コマースは後にしよう!」ということ。何よりもしっかりした「コミュニティ・コミュニケーション」を2003年までに作り上げよう、ECはそれからでいいじゃないかということです。そのために最前面に打ち出しているのが「eソリューション」です。地域の暮らしのお手伝い、社会奉仕ということで、あえて「ナショナル・パナソニック」も出しておりません。具体的には次ようなことを手がけてまいります。

 ・B2Bの部分。ショップ店への情報提供をきちんとして行こうということ。人により地域により今までは極めてバラツキが出てしまっていた所です。またショップ店側自体も、インターネットができるところが数パーセントだったというところからの状況ですから、これを早急に引き上げていかなければならない問題も含めての取組となります。
 ・B2Cについては、これまでのテレビ広告等では伝えきれなかったことを伝えたい。電子カタログ等の導入もやってゆこうとしています。
 ・B2B2Cでは、他の企業さんと連携させていただき、ナショナル・パナソニックだけではない情報提供やソリューションを打ち出しています。例えば資生堂さんには美容情報でパートナーとなっていただいていますが、これは松下電工さん(近々提携予定)が美容商品をお持ちだというように、何らかの関連がある企業さんと連携です。また、商品販売だけではなく、アライアンスという形での事業でもライフヴィットをご利用いただくような展開にしていく考えです。

 以上、ライフヴィット施策に関する2つの思いを基本に、その展開・運営の詳細を詰めていったわけです。

”ライフヴィット”の展開概要

 以上の考え方から、ライフヴィットコムのビジネス・コンセプトを定義しました。地域の人々の暮らしにあわせたソリューションとエンジョイライフを、加盟店・松下グループ・パートナー企業の3者によって、しかもそれをバーチャルとリアルの両面から提案・提供しながら実現していく。その総合プラットホームとしての役割をライフヴィットコムが果たす、ということです。
 事業内容は大きく3つ、@くらしソリューション事業、A 物販事業、Bポータル事業、です。
 「くらしソリューション」といいますと、水道、ガス、介護など資格が必要なものがつきものです。いま6000店中2000店が介護が出来る状態にあるとか、よそでPC買ったけど取り付けや修理に困ってショップ店が呼ばれる件数が増えているとか、加盟店はかなり良いポジションにいることも確かです。
 「物販」でも、家電製品以外の関連品についてはアライアンスというかたちで取り組んでいます。たとえばダスキンさんとは、ダブル部分もありますが、エアコンの掃除などで組んでいます。
 「ポータル」では特に「地域ポータル」に力を入れております。マスコミでは載せられない地域毎の情報をどんどん提供していくために今、いろいろ仕組んでいるところです。

 ところでライフヴィットコムと地域電気専門店との関わりについてご説明してみます。先ずお客さまに対してライフヴィットコムはサイト上でエンジョイライフの提案をします。パートナー企業からの情報も提供します。またショップ店も自店独自情報をライフヴィットのサイトを使っておやりいただきます。ここまではお分かりいただけると思いますが、ショップ店さんにはもう一つ、お客さまに対して配送・設置・サービス・メンテ等、物販以外の「機能委託」を受けていただくようにお願いしています。つまりインターネットに集まる”20代〜30代”の若く新しい女性のお客さまを獲得しましょうという、お店への提案なのです。店主年齢が示すようにそのお客さまの年齢層も高齢化しているのが現実です。それでは希望は持てません。「機能委託」はマージンがとれないなどと言ってないで、「新しい顧客獲得」と決めて取り組んでいただく訳です。

 ここに、あるショップ店さんのご紹介ページをご覧いただいております。独自サービスなど明記しています。パソコンに強そうです。このように今回、ライフヴィット開設に合せて6000店さんを全部オープンにいたしました。ある卸店が早速ある地域の店を狙って安売り攻勢をかけたりしたようですが、そんなマイナス面以上にオープンにしたことによるプラス面、こんな店が近くにあったとか、ここは宅配もしてくれるとか、お客さまからのよい反応をこそ期待してなんでもオープンでゆくつもりです。

 次にライフヴィットの仕組みですが、全国一律の運営ではありません。お客さまはライフヴィットのサイトに入りますと、全国サイトと28販社毎の地域サイトに入れるようになっています。ご注文されるとその情報は販社とコールセンターに入り、コールセンターが各地域のLM(ロジスティック・マネジメント=既存の物流センター)に問合せてOKなら加盟店へ配送される仕組みです。設置や保守などが必要な機器が相当あります。それだけに地域の販売店のソフト業務は不可欠ですし、単なるECではない付加価値を生むことになります。

 体制ですが、スタッフ&パートナーとして松下グループ・有力パートナー企業・全国LEC/販売会社、そして7000店の加盟店で構成されます。加盟店は発足時5000店強でしたが年末に6000店、この4月に7000店を一応のメドにしております。ローソンさんがその位と聞いていますが、それだけになればいろいろなサービスも可能になります。また「ネットを見たといってお客がきたよ」というお店も出て来ており、手ごたえも感じております。

 有力パートナー企業は1月にリニューアル拡充します。ライフヴィットの魅力を支える重要なアライアンスですので、これからも広げてゆく方針です。

立ち上げから3ヶ月を経過して

 告知などしていないのにアクセス数が急上昇しています。男女半々の感触です。また6000店が前向きになり資格をとったり独自性を出そうと積極的です。特に代替わりの難しかった業界でしたが、インターネットはお前に任せるというかたちで2代目3代目の若手経営者が前面に出てきました。このことが何と言っても一番の成果ではないでしょうか。これら積極的な加盟店さんは価格対応でも前向きでして、量販店など研究しながら独自の価格政策を出しておられます。「価格が高いナショナルショップ」というイメージ破壊にも貢献(!)してくれそうです。
 反省点も多々あります。「軽く(HP)」を目指した反面「検索機能」がなくお客さまのニーズについていけてないとか、ソリューション型を目指しながら一人一人のお困りの診断にまでいけてないとか。また、ショップにおいてもお客さまの意見が聞けるサイトにしていけたらと、いろいろ考えているところです。

 以上、ライフヴィットの取組の一端をご紹介してまいりました。どんどん進化してまいります。どうか皆様も会員登録なさって、試したりご意見いただければ幸いです。ご静聴ありがとうございました。(文責:事務局)



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