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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case007 デジタルプラザ
2000.10.04東京第4回 事例報告−1

新しい”写真ビジネス”の展開

株式会社デジタルプラザ 代表取締役社長 飯田国大氏
http://www.digitalplaza.co.jp/

はじめに

 デジタルカメラが売れてます。しかしお客さまのほとんどがパソコンにいれたままで終わっています。これを簡単にプリントにして楽しむ方法を提供するビジネスモデルとしてデジタルプラザを考えました。
 余談ですが、昨晩、銀座を歩いていたらテレ九のインタヴューを受けました。丁度、年末の年賀状を写真で送る促進を考えていた時で、それを言うと電子メ−ルで済むんじゃないかと言われたので、「いや、それでは心が伝わらない」、年に一度ぐらい紙に書いたり写真をお送りしたいと答えました。そしたら今日、九州の友達から電話で「飯田君、テレビに出ていたね!」って連絡がありました。年末年賀状の特別番組の締めに私の言った言葉が使われたそうなんです。インターネットはやはり手段の一つに過ぎないということなんでしょうね。なお全国番組だったらしく、知ってたらデジタルプラザの名前を言っておけばよかった!(一同笑)

撮ってから20分で写真が届く

 会社は福岡にあります。私は会社には週に1度、しかも3時間位しか戻りません。ほとんど東京、大阪、アジア、海外などを飛び回っています。なぜ福岡かというと将来アジアを視野に入れているからです。今、28歳です。夢をもっています。順を追ってご説明します。
 事業のコンセプトは「インターネットで注文すると20分で写真が届く」です。たとえば沖縄のビーチで撮った写真が、携帯で私どもに送られ、そこから沖縄のビーチに最も近い私どもの提携したプリントセンターに送信されプリントされ、宅配ピザのようにお客が部屋に戻ってみたら写真が届いている。それを最終的には20分で出来ることを目指します。
 会社のコンセプトは「新しい文化を創る」ことです。今流のアメリカ型ベンチャーというのではなく、既存のインフラを使い、無益な競争で消耗することもない、しかもお客さまにとって役に立つ新しい事業、新しい文化を創りたいということです。
 会社名は、業界最大手のプラザクリエイトさんが「パレットプラザ」というアナログで展開されておられますが、私どもはデジタルですので「デジタルプラザ」としました。資本金2億4000万円。年商の6000万円は昨年の事業の売上で、新しい写真ビジネスの売上ではありません。デジタルテレカをやっていたのです。テーマパークなどで撮った写真をその場でテレカにするビジネスです。100人中3人が注文しますが、それが限界です。装置は1台280万円で12台売れましたが、これの販売も大変でした。長くは続けられないなと思いましたが、会社の売上は順調に伸びて行く。どうしてかなと考えたらテレカというサプライ品がコンスタントに出て行く訳です。これは面白いと気づきました。でも所詮、100人中3人では伸びないなあとも。
 じゃ、100人中100人というのはないのかと考えたとき、家族連れも恋人たちも皆写真を撮っている。これだと!ただその場でプリントというとちゃちな仕上がりにしかならない。しかしビジネスモデルとしては有望だという思いを強くしました。

モデルの模索

 丁度3年前でしたが、ベンチャークラブ九州で紹介したのですが、反応はいまいちでした。しかし時代がついくるようになってきました。はじめのモデルはテレカの発想の踏襲で、店舗に簡易端末を置き、そこからインターネットで私どもへ送信する方法でした。しかし5万円位にしろ端末というハードを作るリスクが大きいことがネックになりました。投資家もその点とビジネスそのものへの懸念で躊躇しました。
 ある方がハードはやめてソフトをばら撒いたらどうだと言ってくれて、発想が進展しました。ばら撒くとしてもダウンロードかCD配布か。何万というサイトからデジタルプラザを探してアクセスするだろうかという点で前者は疑問。後者も闇雲に誰にでも配布したらいいというものではなかろう。そこで私は当初、建設会社と家電量販店にあたってみることにしました。建設会社はデジカメ使用の広がりがないというので止めましたが、当時業界2位の家電の会長さんは10分位戴いたプレゼンに反応してくれて、その場で部下を呼んで指示していただきました。こうしてビジネスが始まることになりました。

誕生”デジタルプラザ”

 昨年9月、このビジネスを立ち上げました。特定のラボと提携しましたので、既存の業界の方からクレームが入りました。「我々と戦う積もりか」と。当時、家電業界からプリントを吸い上げる習慣がなかったので、理解できなかったのでしょう。むしろプリント・ラボとしての提携を逆提案しました。一方、店頭でソフトを配りながら、お客からのいろいろなクレームに接しました。料金の高さ=基本料500円、配送500円、1枚40円。またプリントラボが東京1箇所だったため九州のお客は中3日もかかる等々。
 そこでビジネスモデルの修正を考え、今の形ができてきました。10月に2億5000万円の出資を得て正式にデジタルプラザを設立しました。私の言葉と紙切れだけでしたが、よく投資家がついてくれました。それからは絵に描いた餅のようですが順調に推移しています。

”何ももたない”ビジネスモデル

 サービスの内容ですが、デジタルカメラを買ってこのソフト(CD)を貰い、パソコンにインストールすると簡単に写真が送れるようになります。私どもに届いたら全国の提携している最寄のプリントセンターに転送され、そこでプリントにしてお客さまに届けられる仕組みです。
 この仕組みがおもしろいのは、インターネット企業の多くがインターネットでお客をかき集めるマーケティングに四苦八苦しているのと違い、お店でデジカメを買ったお客に確実にわたるということ。顧客開拓コストはほとんどゼロ。4月に関東でラオックスさんと先行したときは10数店でしたがこの8月で400店舗と急拡大しました。ヤマダ電機さん、ラオックスさん、エイデンコンプマートさん、上新電機さん、ベスト電器さんなどです。お店は何処でも買えるデジカメの販促に私どものソフトを有効活用できるメリットがあります。
 おもしろいことに、先行したラオックスさんより後から始めたヤマダ電機さんのお客さんの方がプリント枚数は断然多いんです。パソコン層でなくファミリー層を抱えているからですね。同様にWebサイトから入ってくるお客さんの枚数は更に少ない。また先発のインターネットを使った競合会社さんよりもデジタルプラザは10倍〜20倍のプリント量で圧勝してしまいました。インターネットがすごいといわれながらも、やは実際に写真を多く注文する人に届くような仕組みにしなかったら意味がありません。
 次に料金の問題ですが、お客さまの割高感をどう解決するか考えました。配送料を下げるには配送距離を短くする、それにはお客様の住所情報から一番近いいプリントセンターがあればよい、スピードも速くなる、バイク便を使えばもっと早くなる。20分も夢でなくなる。
 そしてスピードを追求して行くと、自社で装置をもったりしたらとても対応できません。1台2000-3000万円からします。装置がないと人手も要らない。従ってよそさんより安い価格でもビジネスが成り立つ。
 また、もう一つ重要なのが画質です。競合他社は装置はあるがもともとはノウハウを持たない集団なのに対して、私どもは写真のプロであるラボと組んでますから画質の差は歴然として出てしまいます。
 「安くて速くてきれい」、これがお客さまに評価され急速にデジタルプラザが伸びている要因だと思います。

世界標準への飛躍

 以上のご説明でお分かりのとおり、私どものビジネスモデルは文字どうり何も持たないモデルだけですので、急速に普及する特徴をそなえています。10月に韓国、11月に台湾、余勢をかって年明けにはアメリカへいこうとしています。既存のインフラを使って新しい文化を創るのですから、摩擦をおこすことはありません。販促も現地の装置と一緒にやれますし問題はありません。
 国内でも大手家電との提携、秋からジャスコさん、デオデオさん、またNECさんのパソコンに標準装備されるなどが決まっています。
 これだけのことをしながら社員は7人です。つまり得意分野に特化して、自分たちで出来ないことは専門の方々にやってもらい、共存共栄のやりかたをとりながらビジネスのモデルだけで会社を大きくしていきたいと考えています。写真市場5900億円を支える一つのインフラとして私どものやり方があり、それが20分で届く、そういう文化が創れればと願っています。

”葬儀屋”でデジタルショック

 話が前後しますが、今のデジタルプラザまでの私の履歴を参考までに触れてみます。
 私がコンピュータに触れたのは僅か数年前に過ぎません。初め代議士の秘書をしてましたが落選して止め、次に或る葬儀社に入った時でした(代議士と葬儀屋は何かと近いのです)。葬儀社というのは意外と進んでいまして、まだ世の中インターネットとかあんまり賑やかでなかった頃に、デジタルでやり取りして遺影写真づくりをやっていました。スキャナとパソコンとプリンターが置いてあり、ISDNで各地と通信して合成写真をつくるのです。私はカルチャーショックを受けました。面白くなり、社長にもっといいシステムを作れますよと提案しましたが、このままでいいんだと断られ、じゃあ自分で作って他の葬儀屋に売って回りますといって会社を止めました。それから100万円はたいてMacを買い、しばらくやっているうちに、こういうことを自分がやってはいけない、ベンチャー仲間の得意なのに任して一緒にやればいいのだと気がつきました。いろいろ得意技を持つ仲間でなんとか写真合成のシステムを作って葬儀屋に売り歩いたが全く売れませんでした。彼らはバックマージンの世界で、営業かけても取り合ってもらえない。

 そのころ或る方から遺影やめてもっと明るいものやったらどうだと薦められ、事業計画書いてみました。その方もやってみなきゃ分かんないというので兎に角やることにしました。キャナルシティという当時人気のショッピングモールでした。記念写真を撮って合成してプリントにしてやる。ただ1回15分かかり、客は多くても消化しきれない。フル回転でも1日30人、プリントは紙だから5-600円しか取れない、しかも1枚こっきり。オペレーター1人使っているのでとても収益にならないので1ヶ月で止めました。
 この経験が冒頭ご紹介したデジタルテレカに繋がっていきました。紙にアウトプットしてはだめ、1枚以上になるもの、単価が1500円とか張るもの、人間が関わらなくていいもの、などなど。

”ゼロ・ゼロ・ゼロ”でも戦えるモデル

 よく飯田はしつこいといわれます。デジタルプラザも累々たる失敗の積み重ねから出てきました。未だこれからも発展途上です。たとえば価格競争で仕掛けられたらどうするか。詳しくは今は話せませんが、基本料ゼロ、配送料ゼロ、プリント料ゼロでも戦えるモデルも考えてあります。ありがたいことにベンチャーキャピタルの方々の指摘は弱点を突くものばかりですが、かえってそれが次の工夫のヒントになって行くということです。弱いところを強くするにはと、詰め将棋のように詰めて行くと、自然に新しい方法が繋がってくる。
 先日も世界で五指に入るベンチャーキャピタルの方から言われました。御社には攻められるものが何もないのが強みだ、社長が考えるモデルだけの会社なのがおもしろいと。何もないから切り替えが早くできる。弱点が見つかると、もうその次には新たな展開を生んで行ける体制に入っている。
 確かに最近、デジタルプラザには対抗できないのでインターネット写真から撤退して既存の写真屋さんにシステムを売ることで別な収益源を得ようとする動きがでています。そんな中で私どものシステムを競合の方々に無償でお使いいただきます、ただし売上の3%を戴きますというメッセージを流しました。そうすると競合の方々は自分のシステムはもう売れなくなります。こんなことで競合を無くし、私どもの会社の発展と業界の発展にもなるようなことが出来るのも、デジタルプラザが何も持っていないシステムだけの会社だからかもしれません。

戦うモデル
競合比較 デジタルプラザ 富士フイルム プラザクリエイト デジタルプリント
*基本料金 \0 \500 \500 \500
*L判プリント \40 \40 \40 \40
*引渡し日 3日以内 1〜5日 2〜3日
*引渡方法 宅配or郵送 店頭のみ 店頭・宅配 ヨドバシカメラ
宅配
*宅配料金 \0 x 有料 有料

Q&A

Q1.ベンチャーキャピタルからの弱点指摘はどの点か。
A1.第1は価格競争への対応。プリント料ゼロのモデル開発に活かした。またCD配布の対抗策、これは即、量販店との1年間当社ソフト優先契約の提携に活かした。これは大変ありがたかった。それから業界トップと戦ってはいけないという忠告。これには忠実に従い、他社からの出資申し出を断った。一方、競合他社からはデジタルプラザを攻める切り口がないので困るという評価から、私どもは益々、既存企業同士をきれいな形でアライアンスさせる中間点のモデルに進化すべきと教えられている。

Q2.お客の現状はどうか。
A2.今54000人、25−40歳70%、東京・大阪75%。今年の目標10万人なので遅いペースだ。11月からTVCMを入れる。叶姉妹で「速い安い簡単きれい」を訴える。

Q3.アルバムについての考えはどうか。
A3.私どもは写真の注文を出す会社だと自己規定している。アルバムを前面とした会社とは方向が違う。我々は枚数を追い、かれらは極端に少ない。将来の収益性は苦しいと思う。ハードディスクは大きくするは再プリントは余り出ないはで、難しくなるのではないか。

Q4.お客の支払いは。
A4.クレジットだ。CVSも250円で可だが薦めてない。(文責:事務局)
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