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21世紀、草創期のWebマーケティング事例集

case004 シャープ・スペースタウン
2000.07.19東京第3回 事例報告−2

ユニークeマーケティング「スペースタウン」の展開

シャープ株式会社
国内営業本部スペースタウン推進センター所長 橋爪静夫氏
http://www.spacetown.ne.jp/

はじめに

 スペ−スタウンは昨年3月にスタートした。丁度NTTドコモさんがiモードを発表して1ケ月後。現在、会員はまだNTTさんの20分の1にも満たない規模だが、ご参考までにお話させていただく。
 本題に入る前にシャープの商品づくりの方向性について触れておきたい。特にIT時代におけるコンシューマー製品ではデジタルネットワークを抜きには考えられない。携帯電話、ブロ−ドバンド、CS/BS、2003年には地上波デジタル等放送・通信インフラの進化に対して、モバイル製品、家庭用製品(ホームモバイル)、オフィス製品(ビジネス)の3つに分けて対応して行こうとしている。さらにワイヤレス・ネットワークの世界がある。現在はAV系、モバイル系、PC系の3つが別々に展開されているのが、2001年に相互乗り入れが実現する。そうするとたとえばワイヤレスの「ホーム・モバイル・ネットワーク」が可能になり我々の家庭での暮らし方も変わってくる。またメモリーカードの利用によって「タウン・モバイル」などとなって行く。こうした生活の変化を描いたビデオをご覧いただく。(「2010年、デジタル・ネットワークの世界」)
 ここに登場してきたエージェント機能(”サマンサ””サリー”)を持ったPCを間もなく発売予定である。音声認識、思考回路、連想という3つの技術によって、かなり精度の高いものが2010年を待たずにやってくる。
 今日は4つほどご紹介する。一つは機器の販促を目的としたコンテンツ配信について。これが中心ですが、その展開が実は新しい広告ビジネスになるのではないかというのでやりはじめたことにも触れたい。2つ目はショッピングモールについて。3つ目は我々もささやかながらやっているプロバイダー事業の新しい展開。最後に携帯向けのメールマガジンをご紹介させていただく。

コンテンツ配信事業と新たな広告ビジネスモデル

 ザウルスを中心にしたコンテンツの配信についてお話する。モバイルにおける配信というのは空いている時間、すき間をどのように遊んでもらうかというのが発想の原点である。たとえば株なら「休み時間にお金儲けで遊んでみませんか」という具合。資格、自己啓発、音楽等々も同様。それからロケーションや本、マンガ、英会話とひろげている。有料のものも取り込んでいる。回数券による購入のメリットも提供している。また「eトレード」など証券会社の協力による情報提供もしている。
 またインターネットでは一般的なものになるが、インディーズ系のものとか吉本系のタレントさんとのコミュニケーションを促すものとか、少しでもユニークなものをと心がけて展開している。
 次に「ふぁっぴい」について。これはスペースタウン・フォア・ファックスというサービスである。なぜインターネットの時代にファックスなのか。実はファックスの家庭での主な使用者は30〜40代の主婦であり、この層にインターネットの情報をファックスで取り込んで貰おうというサービスだ。たとえば楽譜など子供さんのためになるコンテンツの需要が多い。自分でプロバイダー契約するとかに縁のない主婦に代わって当方のサーバーで全て代行してしまい、主婦はファックスについている専用のボタンを押すだけでコンテンツを取り込める。今年の1月からは「ふぁっぴいEメール」も導入しPCからファックスへのメールも届くようにした。
 更に使用回数が予想より低いので、催促しようということで「ふぁっぴいMail」の一斉同報を始めた。コンテンツの案内もするが、広告も載せている。紙面の各メニューに「BOX」ナンバーを併記しておき、好みのナンバーを押すとSSTの専用BOXに繋がる仕組みである。これはSSTの会員・非会員を問わず同意いただいた方々に配信している。広告の匂いを余り感じさせないようにしているが、きわめて反応がよく、プレゼントとか人気がある。約3500 BOX用意している。ただ効果は3日しかもたない。ドンドンやりたいが紙代が客持ちなので月2回にしている。4月から始めたが、クリック保証的に明確なデータ分析ができるようになっており広告依頼も増えている。
 また、この仕組みを活用して全国展開の小売業さんが顧客囲い込みの販促を試みている。専用サーバーを設けておき、お客さんとのやり取りがダイレクトに行えるようになっている。広告から更に進めた例である。

ショッピングモール〜B to Cの行方

 「口こみ市」というショッピングモールを今年1月から開いている。私どもは場所貸しだけをするのだが、特産品のご商売など普段あまりPCにご縁のない方のために月2回のメンテナンス時にデジカメの写真と価格リストをメ−ルでSSTに送るだけで、テナントさんが簡単に情報発信や受発注が出来る仕組みにしている。
 今までの経験から、1つは課金のインフラづくり、そのために「シャープスペースタウンカード」を用意して強化を図っている。もう1つは地域密着型展開である。まだ構想段階だが、当社の行っているSST法人サービスを活用して、「自店専用のショッピングサイト」を作っていただき、会員制による地域密着のeビジネスを展開したらどうかと考えて提案を始めた。
 インターネットショッピングの世界で物販を展開しようとすると価格訴求が中心になり、小規模の小売店はどうしても不利だが、「口こみ市」でPRして地域のユーザーだけを自店に引き込み、普段の営業活動と同様なサービスで差別化を図ってみてはというのがSSTの提案である。
 「口こみ市」への出店料、自店ホームページ用のホスティング利用料(独自ドメイン利用)、ショッピングソフト利用料込みで月額20,000円程度と考えている。

インターネット・ビジネスソリューション

 身近なビジネス・ソリューションの例をご紹介したい。先ほどのファックスによる販促なども一つのビジネスモデルだが、もともとシャープ商品をお取引いただいているビジネスディーラーの方々へのご提案としてのソリューションである。強くない分野だがいろいろ取り組みを始めている。
 要点はSSTの各種サービスをお使いになってビジネスをしてみては如何ですかということ。法人向けの「ホスティング・サービス」といっているが、いわばDCに近いものである。ユーザーさんが一からeビジネスの仕組みを構築したり維持・メンテする手間とコストを、SSTのバックボーンがお手伝いする仕組みである。
 これはマンション運営業者が入居者との或いは入居者同士(自治会)との各種ソリューションにSSTのホスティング・サービスを使用している例である。運営会社に専用ホームページを開設してもらい、入居者にはアドレスとパスワードを配布する。メールサービスでは回覧版の役割、ホームページへのアクセスでは自治会報や地域の得する情報の掲示板の役割を持たせる。
 たとえばリフォーム案内など複数戸同時着工なら割引になりますよとかの掲示。また近隣店に対しての広告事業、インターネット受注での宅配サービス事業など、付帯ビジネスにもなり入居者へのサービスにもなることなどいろいろひろがる可能性をもっている。

メールマガジンのもたらすもの

 最後にメールマガジン「meurmo(めるも)」についてご紹介する。これは携帯電話とザウルス向けのサービスである。3月に正式オープンして7月に発行部数72万強、1929タイトル、人数は公表してないがおよそ20数万人に膨れ上がっている。書く人も読む人もボランティア、しかも無料というのがメルマガだが、運営側は広告収入で賄うのが一般的。しかし私どもはまだ広告はしていない、いずれそうなると思うが、今のところむしろ今後のさまざまな展開の可能性探索のねらいでやっている。思いがけない反響で、サーバーがパンクしたりしている。土日返上までして対応している。
 何故こんなに反応があるのか。ポイントは「即時性」である。いちいちパソコンやテレビをつけなくても「昨夜のナイターどうなったかな?」というのがメルマガで直ぐ知ることが出来る。
 このように携帯端末が開く未来は、これまでのインターネットへの垣根を低くしたり取り払っていく方向である。次世代(第3世代)の携帯電話のシナリオは、

  ・カラー液晶、iモード、WAP
  ・音楽配信、映像配信、JAVA、ブルートゥース
  ・スーパーiモード、WAP-V20、TV電話
  ・モバイルeコマース、本格動画、放送との融合

などの展開になって行く。

 携帯電話ユーザー拡大の中で、当社のモバイル端末であるザウルスの今後は無線対応を生かした使い方、オフラインでの使い分けに可能性がある。またこれまでご紹介してきたような会員制によるソリューションサービスの方法による顧客密着のビジネスモデルの開発で、顧客と自社のビジネス進化に望みを託している。

おわりに

 これからはあらゆるビジネスが”e-Business”に移行していく。いまの6兆円がたった数年で到達したことから見たら、100兆円など瞬く間に来る。全ての企業が避けて通れないのが”e-Business”の構築である。
 また”e-Business”の時代は、今、考えついたことは同時に10人以上が既に着想している!だからそのビジネスを実現するスピードが勝負である。先日も私は香典代行サービスを発想して自画自賛していたら、翌日の新聞で「ザ・ソウギ・ドットコム」というところがビジネスを発表していた!特許問題も絡んで来るので、なおさらスピードが大事だ。
 ”e-Business”の構築には「CRM」「課金システム」「物流方法」がポイントになる。よいアイディアもここが弱いとビジネスにならない。
 そしてもう一つ、ビジネスの拡大に応じて拡張できる仕組み、インターネット・ソリューションの構築が必要である。たとえばコンテンツだけやっていたのでは行き詰まる、儲からなくビジネスにならない。
 今日のお話が皆様のご参考になれば幸いだし、ご一緒にやれることがあれば是非取り組ませていただきたい。ご清聴ありがとうございました。(文責:事務局)
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