−3日目−
今日の朝食はそんなに多くなかった。お百姓さんにも漁師さんにもそんなに後ろめたい事もなくご飯を終えると早速荷作りである。今日の行程を確認しつつ宿を後にします。お世話になりました。今度来る時にはゆっくり外湯巡りをしたいね。 そして本日の足場は豊岡である。最初の目的地はもちっと手前なのだが、荷物をロッカーに預けるために豊岡に出る必要があったのだ。豊岡で列車の時間を確認、荷物を蹴りこんで再度元来た方向に。3日目最初のポイント玄武洞である。城崎と豊岡の中間くらいにあたる玄武洞駅は無人駅で、駅前から川向こうの玄武洞まで渡し舟が出ている。雲が切れかけた空の下、水面を蹴って走るボートが気持ち良い。そして玄武洞は圧巻だった。 国の天然記念物に指定されたこの玄武洞、160万年前の火山から流出したマグマが冷えて固まって、六角形の玄武岩の柱が切り出された様に積み上がっている柱状節理の洞窟である。洞窟は5つあって北から北朱雀、南朱雀、白虎、玄武、青竜と呼ばれている。洞窟と言うが、中まで入れる訳ではない。そんなに大きくないし、そもそも入って行く…と表現するほど奥行きがない。それというのもこの柱状節理、直径50cmくらいの六角形の柱がむき出しでびっちりと重なりあって、見上げんばかりの壁(カメラのファインダーに入りきらないし)と洞窟の天井を構成しているのだが、その柱自体も全て長さ50cmくらいの輪切り状に亀裂が入っているのだ。これが深い洞窟になる間もなく逐次落ちて来るのだと思われる。周囲にはそんな輪切りの玄武岩がゴロゴロしていて歩きにくい。当然洞窟の入り口には立ち入り禁止のロープが張ってある。 玄武洞一体は本当に気持ちが良い。5つの洞窟を巡る道が木陰の散策路となっていて南朱雀などは上から水が滴って水琴窟の様な綺麗な音色を響かせている。ミンミン蝉が鳴いている。最近都会ではなかなか聞かないミンミン蝉は、環境が綺麗でないと住み着けないらしい。澄んだ空気と澄んだ水、そんな自然の中で、旅行中唯一聞いたミンミン蝉の声だった。 ゆっくり一回りして1時間半ほど。まだ帰りの船まで時間があるので船着き場前のお土産物屋に入ってみる。玄武岩にちなんでか、貴石や奇石の加工品を沢山売っている。2階がそういう石や化石の展示場になっているらしいが、入場料を取るみたいなのでパス。熱い一角でお饅頭を焼いている。手のひらに乗るほどの大きさで亀さんの形のお饅頭。思わず焼きたてを頂いたこれが美味しい! 当初興味が無い…と言っていた向きも、頬張っているのを見て思わず「我も」となった程だ。実演ご試食販売の罠にまんまとハマって幾足りかお土産に買ってしまった。
さて、実は旅の最初、出石は予定に入っていなかった。今回は城崎に…とネットのお友達に話したら、それなら是非出石まで足を伸ばしてお蕎麦を食べておいで〜とのこと。あっち行ったりこっち行ったりとかなりハードな行程ながら、どんなお蕎麦かと期待して出石を目指す。豊岡からバスで30分強。前もってお聞きしておいたお勧め蕎麦屋は3件程。地図で確認すると結構近間に固まってます。取り敢えず一番近いところで…と行ってみると閉まっている。貼り紙には「法事につき…」。あらら。という訳で次のお店にレッツラゴー! 出石蕎麦というのは手打ちの腰が強くて短い麺。それが何口かずつ小さなお皿に乗って出て来ます。これが出石の皿蕎麦。5枚で一人前(普通のザル蕎麦一枚強)。これに大きなとっくりに入ったツユと薬味、玉子、とろろが付いてくる。ツユに浸けても良し、お皿のままとろろを乗せてツユをかけても良し、ツユに玉子を割り込んで食べても良し。ここで20皿食べると記念品が貰えるのだそう。店内の壁には一面に色紙が貼ってあって、自分が何皿食べたか自慢しあっている。100皿という剛の者から、始めて20皿食べた〜という人までいろいろ。思わずここを紹介してくれた人の色紙を探して…はみなかったけれど。さすがに5皿では足りずにお代り。ツルッと入ってしまう量といい、多彩な味が楽しめるのど越しといい、幾らでも食べられそうな美味しさ。それでも小食の身では10皿でほぼ満腹になりました。積んであるお皿が、まるで回転寿司の様。お代もお皿を数えるのでほとんど雰囲気変わりません。 バスの時間まで間があるので出石の街を散策。蕎麦処だけあって、随所で蕎麦を売っている。ソフトクリームまでソバ味で、蕎麦アレルギーの人など歩くだけで息苦しくなりそうな、そんな街である。出石の名品は蕎麦だけではない。真っ白な肌にレリーフの様に模様を彫りこんだ白磁が美しい。古の藩士の登城時間辰の刻に太鼓を鳴らして時間を知らせていたという、日本最古の時計台と言われる見張り櫓の“辰鼓楼”の周りを巡り、ほどなくしてバス停へ。再度豊岡へ戻ります。
お日様もやっと傾きかけた頃、天橋立に到着です。ここが今回最後の目的地。空は若干曇りながらまずまずのお天気。嵐はとうとう去った様です。早速、本日逗留のホテルへ。旅行中宿泊のグレードが段々上がって行ったのがどことなく可笑しかったり。部屋の大きな窓からは天橋立の内海と連なる松並木が一望できて素晴らしい眺めです。ふと気が付くと窓の際々をガラスに激突しそうな勢いでツバメが飛んでくるではありませんか。良く観察していると、どうやらこの窓のヒサシの処に巣が作られている様です。雛の姿は見えませんでしたが、なかなか風情を感じる一瞬でした。 まだ夕食までは間があります。ここはひとつ山の上まで参りましょう。とて、駅裏のお山へ向かいます。時間が押しているので上の遊園地では遊べませんよ、というのを聞きつつ、リフトに揺られて山頂へ。この頂きは“飛龍観”と呼ばれるスポット。天橋立の外海方向を眺められる絶景のポイントです。股覗き…とばかり股の間から顔を出して海の上の松並木を眺めると、外海に面してギザギサになった砂浜が本当に龍の背中の様で美しい。実は対岸にも股覗きスポットはあるのですが、そこからは外海側は見えなくて、この龍が見られるのはここだけなのでした。蚊に喰われつつ思いっきり龍を堪能したところで、帰りのリフトに乗ります。高所恐怖症の人はちょっと…といった感じのリフトはしかし、下りこそ絶景。乗った途端、目の前にさっきの龍が飛びこんで来て、最後まで味わい尽くしです。 3日目の夕食は洋食にしました。流石に3日続けて旅館の和食も飽きます。これが冬なら3日続けてカニ責めだったのでしょうねぇ。別にカニとか日本海のお魚にそれ程執着も無いので、カニ責めは嫌かもです。それにしても、海の見えるというのが売りのレストランで、夜の7時半からのディナーというのはどうなのでしょう。はっきり言って海なんか微塵も見えません。天橋立というのは物理的には単なる松並木だから、そもそも明りなんかほとんど無い。故に夜景にならない。明るい間は絶景のホテルも、店内しか見えず酔っぱらいのおっちゃんまで居てるレストランではいささか残念でした。という訳で3日目も無事終了です。明日はあの松並木を渡り、海水浴もできるでしょうか。 |