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舌鼓の白馬旅行記

−2日目−

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目指せエッグマスター
 目を醒ますと5時半だった。最近はいつもそんな時間に起きているせいか、はたまた誰かのお子様の声で目が醒めたのかは定かでは無い。が、もう明るくなっている事でもあるし、のこのこと起きだしてみる。貸し別荘の2階も1階も静まり返っているが、1階のホールには昨夜別棟の寝室へ移動しそこなったのであろう何人かが横たわっている。

 まずは、コーヒーでも飲もうといろいろ探しまわってみる。昨夜は厨房に入る機会がほとんど無かったので、どうも勝手がわからないのだ。バーカウンターの内側で、カップはこれ、インスタントコーヒーはこれ、牛乳はあるけどフレッシュは無いなぁ…などとごそごそしていると、Nさんがお子様を連れて降りて来る。お子様に冷蔵庫の麦茶など飲ませてあげつつ、Nさんもそのまま起きてしまわれた。2人でコーヒーなど飲みながら、またいろいろと物色をする。厨房の調理台の下に大量のロールパンとバゲット。トマトが1箱。大きな冷蔵庫の中には玉子が2パックと巨大なハムの塊(スライス済み)とソーセージのパックが幾つか、そしてコーンスープのパックが4〜5つ、厨房の片隅にはレタスとキュウリがごろごろある。これが本日の朝食の材料であろう。

 この物色の音で、昨日のカレー職人Uさんが起きだしてきた。Uさんは1階ホールで沈没していたのだ。ぼちぼちと朝食の準備を始める。20個の玉子を茹でる。サラダ用のキュウリを切る。トマトも切る。子持の女性陣が少しずつ起きて来る。さすが、幼い子供は朝が早い。茹で上がった玉子をMさんが剥いている。そして、目覚ましを掛けておいた…というTさんが起きて来た。Tさんの任務は玉子潰しである。丼の中のゆで卵を単にフォークで潰すだけなのだが、慣れないとこれが結構難しい。最初の一撃、フォークで押さえるとゆで卵はつるんと逃げる。めげずに潰しても、白身がなかなか潰れきれない。Tさんのエッグマスターへの道はまだまだ遠い。来年の白馬まで、一日一個の玉子潰しの修行はこれから続くのであった。目指せエッグマスター、頑張れTさん!

 潰した玉子をマヨネーズで和えて、バゲットを切る。パンを切る時には包丁を焼くんだよ〜などと、新米お母さんにベテラン主婦が伝授していたりする。コーンスープを暖め、缶詰のホールコーンを混ぜ、ハムを盛り付けた頃には、子供たちがだいたい起きだしてきていた。やはり、飲んだくれの大人たちより子供たちの方が断然元気だ。別棟の大人達が戻ってこない内に、子供たちがさっさと朝食を始める。今年のコーンスープはコーンもほどほどである。なにせ去年は一抱えもあろう…という業務用のホールコーンの缶があって、それを半分使っただけで大きな寸胴がコーンだらけになってしまったのだから。が、子供たちにとっては、朝からコーンスープよりもジュースの方が良かったらしい。まぁ、それも当然か。子供たちが食べ終わった頃、独身の女性達と別棟の男性陣がやってきて、朝食に加わる。

 ちなみに今回の朝食にはカレーもついていた。さすがの美味しいカレーも、大鍋に何杯という量は大人たちでも食べきれず、深夜全部をブレンドして食べた分がまだ残っていたらしいのだ。朝からそれをバゲットにつけて食べる。お皿の縁までバゲットで綺麗に拭って食べる。ほけほけした貸し別荘の朝はこうして始まるのであった。

 既にバーカウンターには誰かしらが入って、食べ終わった食器を次々に洗って行く。こんな処がこの別荘旅行の良いところだ。そして食べおわるとまた、まったりまったりして行く。子供たちも、テレビを見るもの、新しい友達とゲームに興じるもの、走りまわるもの、それぞれである。そんな中、この朝から参加のSさん一家が到着した。みんな拍手でお迎えである。実はこのSさん、私はチャットで少しだけお話したことがあるのだが、何故かてっきり女性だと思い込んでいた。ごめんなさい、Sさん。ちょっといなせな兄ちゃん…といった風のSさんが着ていた、和風の絵柄で背中に蛙の絵がかいてあったTシャツ、欲しかったです。近所のダ○エーだかジャ○コだかで売っていたらしいですが、新潟ではなぁ…。さすがに買いに行けん…。

 さて、朝食もすんで、大人も子供もほけほけしていると、ホールの片隅でうどん打ちが始まった。讃岐うどんファンが高じてプロ並みの腕前になってしまったTさんの、恒例うどん打ちである。Tさんが調合した粉に少しずつ水を混ぜながらYさんがこねて行く。その大きなボウルを、お手伝い好きなおしゃまな2人が一生懸命押さえている。ほどほどにこね終ると、今度は足踏みである。大きなビニールシートにうどんの種を挟んで、足で踏んで行く。お手伝いしていた2人はこれにも参加である。Yさんにコツを教わりながらかわるがわる踏んでいる。良い感じに踏み上がった種はビニール袋に入れられた。種はこれから一眠りするのだ。元々うどんは量が少ないと聞いていた。みんながしっかり食べられる分量は無い。う〜ん…これは今日の居残り組の昼食かぁ…羨ましいがまぁ仕方があるまい…と、ちょっと心残りながら、うどん種の眠る袋を眺めるのであった。そしてまた、まったりした時間が過ぎて行く。

 ふと気が付いたのだが、この白馬貸し別荘周辺はセミが少ない。我が家の周辺では朝の6時も回ると開け放した部屋の中のテレビの音も聞こえない程セミの大合唱が凄まじいものなのだが、ここでは時々思い出した様に何匹かが鳴いているだけである。それも、聞こえるのは全てカナカナ。アブラゼミのジョワジョワジョワジョワジョワ…という騒々しい鳴き声は聞こえない。貸し別荘村でもあり、街中と違って緑も多いのに何故?と思ってみる。やはり気温の低めの気候のせいか、はたまた貸し別荘村という性格上何やら樹木に薬でも撒いているのか、真偽のほどは解らねど、何人かでいろいろと憶測してみるのであった。

焼け焦げの川
 ところで、今日はみんな適当に遊びに行くことになっている。毎年2日目も別荘でずっとまったり、という人達が居るのだが、それの昼食係になってしまった人はなかなかに悲惨なので、今年は昼食は各自でなんとかしてください…という幹事命令が出ていた、というのもある。時間も10時近くなってきて、このままでは誰も出かけないんじゃ?という雰囲気が流れ出した頃、やっとみんな動く気になってきたらしい。

 各自希望を取ると、行き先は2つに分かれた。一組は近くのプールへ行く組である。もう一組は近くの川へ行く組である。この川では魚のつかみ取りができたり、アスレチックがあったりするのだが、去年は雨が降って、駐車場までで引き返してしまった…という悲しい過去があるのだ。という訳で去年のリベンジ組も川へ行くことと相成った。そしてまぁ、別荘居残り組も相変わらず何人かは居て、こうして各団体さんは出発したのである。

 さて、リベンジ組の我が一行は川行きである。今朝一緒に昼食を作ったNさんの車と、さっき到着したばかりのSさんの車に分乗していく。こちらはSさんの車に乗せて頂いたが、S車は後部座席がフラットになる仕様で、その上で子供たちがころんころん遊べる状態だ。しかし、目的地のグリースポーツの森まではあっという間であった。行きし、白馬駅からの道、最初に曲がる目標だった「焼肉屋」の対面。なんだ、そんなに近かったのね。

 川は冷たかった。メインで遊んだ範囲では川は3つに別れていて、一番浅くて狭い川の一部をネットで仕切って魚のつかみ取りをやっている。もうひとつは石が自然のダムのようになっていて、流れのある湖状になっている。ここは小学校高学年の子のお尻の下くらいまでの深さである。そして一番奥が多分本流なのであろう、流れも早く向こう岸(川縁が既に森)の近くはかなり深いと思われる。ここは足を取られて流されたらヤバそうだ。がまぁ、水着を着た子供たちは大人の監視下の元、この3つの川を行ったり来たりして思いっきり楽しんだ。石を拾い投げっこし水を掛け合い木切れを流しダムを新設し持ち主不明のペットボトルを飲もうとし(こら)尻餅をつき冷たいと言いぬるいと言いそして熱い!と叫んだ。魚のつかみ取りに挑戦した一名はサービスで2匹焼いてもらったニジマスを食べている。

 そして、川は暑かった。とにかく、ひたすらに暑かった。要するに広い川に中州があってそれで3つに分かれている感じだから、木陰というヤツがひとつも無いのだ。あまりに暑いので川っぷちに座って足を水に浸けたままぼーっとする。じりじりと照り付ける真夏の太陽で、肌が焦がされて行く…前に、慌てて子供たちに日焼け止めを真っ白になる程塗り付けた。が、自分の事は二の次になった。座ったままで塗ったせいで、腕と足の前面はどうやらだいたい塗れたのだが、太股の裏をフォローしていなかった事に気付いたのは、別荘に帰りついてからの事だ。実は家に帰って来た今でも、その塗り残した部分はヒリヒリしていたりする。

 子供たちは楽しそうだが、水着も着ていない大人にはこの暑さはたまったものではない。いい加減お昼の時間…という訳で、子供たちを促して川を離れる事にする。近くにあった食堂で蕎麦を食べる。そんなに綺麗でもない食堂で600円のざる蕎麦ってどんなん?とか思ったけれど、これがかなりイケルのである。さすがは信州と言うべきか。太さが微妙に不揃いなのはやはり手打ちなのだろう。歯ごたえがあってしっかりした食べごたえだ。昼食は蕎麦だけですっかり満足してしまった。昼食の後はアスレチックである。

 そしてアスレチックも暑かった。広いアスレチック会場を、子供たちは適当に散って行く。小さい子が一人では危ない処もある。引率の大人はあっちへうろうろこっちへうろうろする子供たちを追いかけ回す事になる。そして子供たちが最も気に入ってしまったのが、自力で動かすロープウェイである。このロープウェイ、鉄製の柵だけで作ったみたいな大人2人乗りの大きさのゴンドラで、小さな川の向こうとこちらの駅にある滑車に通されたロープがゴンドラの中央を縦に2本貫いている。そのロープを自分で引っ張って動かすのである。最初に駅から出発する時にはやや下り気味なので一気に動いて行く。が、駅と駅の中央から先はたわんだロープを登って行く事になるので、必死で引っ張らないとゴンドラは動かない。小学校も高学年なら良いのだが、オチビさんたちにはちと辛い。それで、駅で乗り降りを手伝った大人が、駅側で滑車のロープを引っ張ってやる事になる。これが結構重いのだ。汗だくになって引っ張って駅まで戻してやった後は、乗り降りでゴンドラが振れない様に押さえていないとならない。この、大人の方ご苦労様なロープウェイに、子供たちは何度でも乗りたがる。他の人がやってきてもしっかりその後ろに並んでいる。お〜い、まだ乗るのかぁ〜? もうこちらはくたくたである。

 時間も3時頃になって、ようやっと子供たちも満足したようだ。大人も子供も汗とほこりでドロドロだ。一刻も早く別荘に戻ってお風呂を浴びてビールを飲みたい! という訳で車に分乗して帰路に付く事にする。が、我々が乗ったS車が走り出してしばらくして、Sさんがぼそっと呟いた、「頭数が多くない?」。員数確認をしてみて初めて気が付いた。実は我が一行とすっかり意気投合していたN家の一人がさり気なくS車に収まっていたのである。大慌てでN車に連絡をいれたりしつつ、くたくたな一行は貸し別荘に着くやいなやお風呂に飛び込むのであった。

焼肉と花火の煙
 汗とほこりと日焼け止めを洗い流す。焼けた身体にシャワーが痛い。先に洗い上がった子供たちと一緒に露天の方でぼーっとする。露天の湯は熱いけれど温泉水のせいか当たりが柔らかい。縁に腰掛けたままで中に入ろうとしない子供たちを促していると、突然上空で爆音が響き渡った。ぎゅいぃぃぃぃぃぃぃん! という凄まじい音に子供たちが身を竦ませる。空にはぽっかりと夏の雲が浮かぶばかりで何も見えない。が、次の瞬間頭上を右から左へ三角形の大きな機体が横切った。爆音が最大になる。せ・戦闘機? 旅客機にしては小さいし、第一間近に空港が無いのに旅客機があんな低空を飛ぶわけが無い。そしてあの三角形のフォルムは、3年前沖縄で見た戦闘機にそっくりである。未だ照りつける夏の太陽の下の湯気上げる温泉の中で、何故か薄ら寒さを感じて慌ててお湯に首まで浸かった。

 風呂から上がるとビールである。もう何もする気がしない。身体の赤くなった部分にアロエ軟膏を塗り広げ、ソファーでぼーっとする。ホールの大きなテレビからは、毎年恒例Oさんのアニメオープニング特集DVDが流れ続ける。子供たちもさすがに疲れたのであろう、暇とも退屈とも言わず、大人たちでさえ記憶の彼方にあるか無しかという様な古い映像を惚けた様に眺めている。ぼーっとしている間にテーブルには焼肉用のホットプレートが並び、夕食が始まった。

 肉を焼く、野菜を焼く、肉を焼く、肉を焼く、肉を焼く…。そして今年は山芋の輪切りがデフォルトで入っていた。(意味のわからない人は、去年の白馬旅行記の2日目後半を参照のこと。)肉ばっか食わないで野菜も食え〜!と叫んでいると、うどんが出てきた。おぉ、これは朝Yさんたちが踏み踏みしていたうどんではないか!そっかぁ、居残り組が食っちまった訳じゃないんや。子供用に玉子が絡めてあるうどんは腰があって美味しい。疲れからまた食欲を無くし、持参のキムチでご飯だけ食って離脱していた若干一名も、これだけはちゃっかり食べに来た。昨夜のUさんのカレーといいこのTさんのうどんといい、今年の食べ物は子供たちに大好評である。

 子供たちが満腹した頃、うどんが時間差でもう2種類出てきた。ひとつは醤油味ベースの割と普通っぽい味付けだが、もうひとつかなり遅れて出てきたのはガスパッチョ仕立てという変りものだった。ガスパッチョとはトマトジュースにニンニクを使った冷製スープである。さすがにこちらはもう満腹していたのでうどんこそ食べなかったが、後で残っていたガスパッチョだけ飲ませてもらった。疲れた身体に滋養が回る様で美味。癖があるのはわかるが、どうしてうどんだけ食ってスープを残すかな!

 大人たちが食材を喰い尽くすと次は花火である。いやいや、なかなかにやる事は多い。最初にも書いたが、今回の白馬は何せキャンセルが多かった。子供の参加も当初の予定より10人近く減ってしまっていた。特に大きい子が少なくなった。お影で、幹事さんが早い目に買い込んで準備してあった1000本からの花火は、大人たちが中心になって、まさに「消費」される事になったのである。「消費」となれば大人たちのやり方は「大人買い」ならぬ「大人持ち」である。片手に3〜5本、両手で10本くらいもいっぺんに持って、次から次へと火を付ける。去年も大騒ぎになった、釣り竿の先の糸部分に火を付けると火花を吐きながらグルグル回るヤツも、両手にひとつずつ持って縦方向にぶん回している。綺麗とか楽しいとか、そんなのは二の次といった風だ。虫除けスプレーも必要ないほどもうもうと煙の立ち昇る中、大量の花火は着々と消費されていき、後は線香花火が残った。

 線香花火には2種類ある。関東風と関西風だ。関東風は赤やピンクのこよりの先に火薬が入っているヤツ。関西風は細〜い棒の先に火薬が直接付いているヤツ。関西風は風で揺れたりしないけれど、火薬の量が少ないのかすぐに終ってしまう。関東風はちょっとの風でもゆらゆら揺れて玉が落ちやすいけれど、じりじりと大きな火の玉ができ上がれば、ぱしぱしと盛大に火花が散って、最後に柳みたいに火花が枝垂れるまでじっくり楽しめる。最後の最後これに若干一名がハマって、何十本もある線香花火をいつまでもいつまでもやっていた。

緑のカクテル赤いカクテル
 今年は甘い系のお酒に走り気味。あまり酔いたくないというのもあって、日本酒をくいくい…という気分にもなれない。で、カウンターで聞き込んだ怪しいカクテルを頼んでみる。出てきた緑のカクテルは妙にトロっとした感じ。アルコール分はしっかりありそうだが、いかにも「身体に良い」といった香りがする。このカクテル、実は青汁ベースのカクテルなのだ。この一見うぐっとなりそうなカクテル、最近何かビタミン類でも欠乏しているのか、はたまた疲れが溜まっているのか、自分なりには実に美味しい。小さな青汁の缶々半分くらいを使って一杯作っているので、スチール缶は入れたまま置いといたら駄目なんだぞ〜と、残りでもう一杯作ってもらう。

 そして目の前の変なものに目が止まる。多分ガスパッチョを作るのに使ったのであろうトマトジュースである。緑のカクテルの次は赤いカクテルだ〜!とばかり、バーテンさんに頼んでみる。が、そこはさすがに素人バーテンダー、さっきの緑のカクテルを参考に適当に調合してみるも、どうにも異様な味になる。トマトは主張が強すぎるのだ。何とか挽回しようと、カンパリを入れてみる。オレンジキュラソーで試してみる。しかしどれもイマイチだった。やはりオリジナルカクテルの道は険しい。そして、後で何ぞの広告を見て気が付いたのだが、サン○ターの「おいしい青汁」ってのには、ケールは入ってなかった様な気がしたぞ。

 夜もだんだん深けて来る。昼間しっかり遊んだ子供たちはさっさと寝てしまってもう居ない。ぽちぽちと戦線を離脱する人も出てきた頃、Uさんの幻の逸品がやって来た。そう、貸し別荘と言えばUさんの焼きそば、それがとうとう出てきたのだ。ほとんど塩だけの味付けのその焼きそばは、淡白だけれど奥が深い。混ぜ込まれたエリンギとかネギとかが非常に嬉しい。みんなで少しずつ分けあって舌鼓を打つ。そして最後に出てきたものを見て歓声が上がった。多分それは本邦初、Tさんのうどんで作ったUさん焼きうどん。歯ごたえしっかりのうどんがさっぱりとした味わいで、お酒の最後を締めくくるには本当に相応しかった。


 

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