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まったり白馬旅行記

−2日目−

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降ってしまった
 朝起きると、既に食堂では朝食の用意ができていた。ロールパンと食パン、どちらでもお好みで。玉子にサラダ、そして大きな寸胴には、何故かたーーっぷりのコーンが入ったコーンスープが。このスープ、コーン大目に…と言うと、カップに半分くらいコーンが入ってくる。後に厨房で、馬鹿でっかい業務用かと思われるホールコーンの缶詰(半分くらい使われている)を見て納得した。いささか寝不足の頭を起こすべく、コーヒーを「頼む」。頼むと出てくるところが、この貸し別荘企画の最大の魅力なのかもしれない。

 さて、2日目、一行は基本的にふた手に別れる事になっていた。つまり、遊びに出る組みと、別荘でまったり組みである。子供達の大半は、遊びに出る組み。別荘近くには車で数分の処に魚のいる小川やアスレチック等があるスポーツ広場があるらしい。ラフティングという川下りができる川もあるという。しかし、昨日までの晴天はどこへやら、空は曇り、今にも雨が落ちてきそうな雰囲気である。が、小川で遊べはどうせ濡れる。水着を着た子供達は少々の雨など気にしないと、車に分乗して出かけて行った。何人かの主婦はお昼も済んだ頃、後発で行くから…と言いつつ、暫し子供らから解放される手筈だ。

 が、無情にも、この貸し別荘企画3年目にして初めて…という雨が、木々を別荘のベランダを叩きはじめた。雨は止む気配を見せず強くなる一方。気温はどんどん下がっていく。そしてとうとう、携帯が鳴った。外出組みからの連絡である。「戻る」と。かくして長い1日をフルメンバーが別荘の中でまったりと過ごす事になってしまったのである。

足踏みうどんとタコ焼きパーティー
 戻って来た子供達は、いささかの寒さに震えながらお風呂に飛び込む。そして、持て余したエネルギーを発散しはじめる。そこら中を走りまわる、喧嘩を始める、遊んでくれるお兄ちゃんお姉ちゃんを探す…。そして、そこここで人間遊園地が繰り広げられる。が、大半の大人はそんな喧騒にもめげず、まったりムードを満喫している。居間の大型テレビには、メンバーの中で一番「濃い」Oさんが持ってきた、アニメのオープニングだけが延々録画されたマニアなビデオが映される。

 そして、食堂では、足踏みうどん作りが始まっていた。讃岐うどんファンのTさんの指導の元、粉が丁寧に計られ、別荘の冷たい水を混ぜてこねられる。そして、足踏みだ。床に大きなビニールシートを敷き、こねたうどん生地を乗せ、ビニールシートを折り曲げて掛け足で踏むのだ。指導教官のTさんは、実に巧みに、かつリズミカルに踏んでいく。上手く体重を掛けて周りに伸ばすように踏むと、ビニールを上の外して生地を二つ折りにして、また踏む。多分そんな手順、否、足順だったと思う。違ってたらごめんね。踏むにつれ生地は滑らかに弾力を増し、つやつやになっていく。
 そして、Tさんに続いて、他の人が挑戦だ。が、これが案外難しいらしい。最初は丸っこい生地の上に両足を乗せただけで、安定が悪くてふらふらする。それを踏ん張りつつ伸ばすように踏み込んでいくのだ。生地に弾力が出る程足の下で押し返してきて、踏むだけでも結構力が要るようである。皆、ひとしきり踏むと息が上がっている。やはり職人さんの巧の技と体力は、並みの物では無いのであろう。皆の奮闘の甲斐あって、何種類かあるらしい粉のあらかたが生地になって、これは暫く寝かされる。

 その間にも、買出し部隊が本日の買出しに出ている。が、予定外に外出組が戻って来てしまったために、買出し部隊も大量買出しをする事となったらしい。そしてその部隊が帰って来た時点で、この日の昼食タコ焼きの大量製造が始まるのであった。
 用意された電気タコ焼きプレートは3台。1台で焼けるタコ焼きは約15個。まずタコを切る。関東のタコ焼きにはタコが入っていない事も少なくないが、関西ではそんな事は許されない。そのせいか、関東メンバーと関西メンバーとで、切ったタコの大きさが微妙に違う。関西メンバーの方が切り方が大振りなのだ。分葱(浅葱だったかな?)と天カスと紅生姜と、そして超巨大なボールに生地が目一杯用意される。

 お玉で生地を流し込み、タコその他の具をぽいぽい入れ、壮絶なるタコ焼きとの長い闘いの火ぶたは切って落された。3つのタコ焼きプレートを関西メンバーのAさんが中心になって何人が共同でひっくり返す。まず溢れる程の生地を串で穴の回りからこそげて、穴の中の生地と一体化させながら、回りが僅かに固まり始めた処でくるりと返す。もう少し焼けてきたら串の先っぽで転がすように返していく。最初はぐちゃぐちゃに見えた生地が、くるくると返していく内にまん丸になる。表面が香ばしく焦げてきたら出来上がりである。
 お多福ソースを塗り、青のりとおかか、そしてマヨネーズをかければ完成! マヨネーズはそのままではいっぺんに出過ぎるので、口のところにラップを張って、爪楊枝でプチッと穴を空ける。するとマヨネーズは綺麗に糸のように出てくるという具合である。いい加減子供達もお腹が空いてくる時間になりつつあって、取り敢えず最初に焼けた傍から子供達に配られる。一回に約45個ずつ焼けるタコ焼きは、あっという間に無くなっていくのだった。

 さて、こういうモノと言うのは、ただ見て、そして食べるだけでは面白くない。実はタコ焼き焼きは初体験なのだが、折角のチャンスである。少々失敗しても、今ならフォローしてくれる人も居る。という訳で、焼き部隊に参入する事にした。が、やはり初心者には難しい。最初に溢れた生地をまとめていく時点で、どうにもぐちゃぐちゃになってしまう。周囲が僅かに固まりだした処でひっくり返そうとするが、竹串が空回りして、生地はますますぐちゃぐちゃになる。それでも何度か挑戦するウチにどうやら返せる様になって来た。ひっくり返すというよりは、生地の周りを穴の表面に滑らすように回転させるのだ。だから、少し回りが焦げてくると、串の先で引っ掛けるようにして滑らせると簡単にクルリと回ってくれる。
 慣れてくると俄然楽しくなってくる。クルリクルリとひっくり返して、最初はいびつだったのがまん丸になっていくのは、何度やっても飽きない。そして、やってみて初めて解ったのだが、プレートの中の穴の位置によって焼け具合が微妙に違うのだ。一部分だけが、いつまで経っても生焼けなのである。それを無理矢理返そうとすると崩れて収拾が付かなくなる。この位置はベテランのAさんが上手くフォローしてくれた。焼けにくい場所のは、少し形が整ってきた時点で、他の位置のと入れ替える。そして、3つのプレートはフル稼動で、ひたすら働く。ジャー、パッパッパッ、コシコシ、クルンクルンクルン。その時間、実に2時間はあったろうか。超巨大なボールの生地は何度も追加され、大量のタコが全て無くなるまでひたすらタコ焼きは焼きつづけられた。

 タコ焼きを焼いている間にも、うどん生地のお休み時間が終わったらしい。生地は麺棒で伸ばされ畳まれ、切って茹でられる。釜上げ風、淡い味わいの汁うどんと、あまり多くないうどんを、タコ焼きを焼きつつ一口ずつ味見させていただく。歯ごたえのあるうどんは、噛むとしっかりとした味がある。美味しい。そして、このうどん汁の残りを使って、明石焼き風のつけ汁タコ焼きも作ってみる。変則技だか、目先が変わって、これも美味である。汁が美味しいのも効いている。この汁は誰が作ったのか、それは聞き損った。
 変則タコ焼きはもう一種類あった。チーズ入りである。しかし、これが結構曲者なのだ。焼けてくるにつれて中で溶けて行くチーズが、返すために串で表面を引っ掛けるとその僅かな穴から染み出てくる。それを上手く転がして、護摩化さなければならない。そしてこのチーズ入り、綺麗に丸く焼けてもなお曲者なのだ。それは口に入れると初めて解る。普通のタコ焼きだと同じに食べるとエライ目に会う。熱いのだ。溶けたチーズがまだ沸騰しているかのように、非っ常〜に、熱い。このチーズ入りのお影で口の中を火傷した人多数である。でも、チーズ入りって、美味しいんだよねぇ、うん。

 そして、果てしなきと思われたタコ焼きとの壮絶な戦いも、とうとう終りの時が来た。え? 焼いてた人は食べたのかって? そりゃぁ、焼きたてをちょこちょこ頂かさせてもらってました。そして今回タコ焼き焼き初体験の何人かは、白馬から帰った暁には、早速タコ焼きプレートを買おうと決意したのでありました。そうそう、タコ焼きエキスパートのAさんのご主人から、タコ焼きのコツを一つ教わりました。生地を作るとき、できるだけ薄く作ると良いのだそうです。すると、外側はパリッと、中はしっとり…という美味しい焼きあがりになる…と。是非、参考にしてみてください。

 2時間有余に渡るタコ焼きパーティーも、うどん試食も無事終り、皆すっかりお腹が一杯になって上機嫌…と言いたいところなのだが、実はここにちょっとした反乱兵が居た。我が家の若干一名である。この別荘初参加にして、2日目の今日は、アスレチックを楽しみにしていたのである。これが雨で流れたものだから、拗ねた…。前の晩、いささかの訳有りで睡眠不足気味だった事もあり、まったりムードのアニメオープニング上映会を片目に、ついついソファで昼寝してしまった事もあって、食欲もイマイチである。こうなると、どうしようもない。これを何とかなだめて、外に連れ出し、気分転換に貸し別荘近辺の散策となった。

 貸し別荘からほど近い場所には、お土産屋さんが並んでいる。ちょっと足が太い目の本物の馬に乗せてくれるらしい商売も出ている。そして何故か、実物大の白い馬の模型まである。いくら白馬だからと言って、馬の模型に何の意味があるのか不明である。そして一件のお土産屋さんの軒に、見覚えのある模様の旗が下がっているのを見つけた。そう、長野オリンピックの模様だ。それで思い出した。この近くにスキーのジャンプ台がある…という話を、幹事のKさんが教えてくれてたっけ。車ならホンの何分の距離だと言っていたし…、よし、誰かに車を頼んで行ってみよう。こうして、代行アトラクションは決まったのだった。

目の眩むジャンプ台の恐怖
 早速別荘に戻り、車を出してくれる人を探す。タコ焼き部隊の隊長だったAさんが出してくれる事になり、カメラを手にしたNさんも一緒に、若干2名を伴ってジャンプ台に出発である。車でものの10分程の場所にあるジャンプ台は、しかし、雪景色のTVで見るのとは大違いの迫力だ。左右に2本並ぶジャンプ台は、向かって右がラージヒル(全長385m、標高差138m、最大斜度37.5°)、左がノーマルヒル(全長318m、標高差107m、最大斜度36.5°)である。そしてその2本の間に、ジャンプ台の上まで登るためのリフトがある。これで上まで登るのだ。

 リフトの乗り口まで行き、上を見上げるが、下から見ている限りは、そんなに無茶苦茶高い…という感覚は無い。確かにこんな所をスキーで滑り降り、宙に浮く事を考えたら凄いが、ただ見ているだけなら高層ビルを見上げているのと大差は無い。一応なりともスキーもやった事はあるから、リフトも別に初めてではない。という訳で、若干1名と2人、何の心配も無しにリフトに乗り込んだ。が、ひとつ失念していた事があったのだ。そう、夏場にスキーリフトに乗るのは初めてなのだ。そして、これが結構心許ない…。

 冬場のスキーリフトは下は雪である。雪は何十cm、何mと積もっているから、リフトから雪の表面まではそんなに距離を感じない。そして、ふかふかの雪は、周りの景色もなだらかにしてくれる。が、今は真夏。リフトの下は剥き出しの地面、そして交差する道路、ごつごつのコンクリなのだ。嵩上げする雪が無い分、地面までは遠い。どうも勝手が違って落着かない事この上無いのだ。やっとてっぺんまで着いたリフトから降りて、ふと、今来た下を見下ろすと、意外なほどの高さである。う〜ん… こりは困った…。

 そしてもっと困った事に、リフトの頂上はジャンプ台の頂上では無いのだ。この上にまだ、エレベーターで上まで登るのだと言う。ぐわぁぁ…。4階分程エレベーターで登ると、やっとそこが頂上である。頂上の展望スペースから見る景色は絶景だ。雲が垂れ込めたお天気ながら、向かいの山腹のスキー場なども良く見える。泊まっている別荘と思しき場所を探したが、森の中なのか見つからない。展望スペースから見下ろす限りは、やはり高層ビルと同じだ。そんなに怖いことは無い。しかし、ラージヒルの出発点に出るためには、一階分階段を降りて、外に出ないとならない。う〜ん… 困ったよ〜…。

 下り階段は屋内で、回りには窓すら無いのだが、コンクリート打ちっ放しの壁に、非常階段の様な鉄の階段がくっついているだけ…というイメージなのだ。その上、段差妙に高い。周りも真っ平らな壁ではなく、何に使うスペースなのか妙に開けて外に出るらしいドアの着いた空間があったりする。足元が覚束ない…。身体が強ばる。たかが一階分降りただけなのに、足に身が入った様だ。屋内なのにどうしてこんなに緊張するのか…。そして、ラージヒルの出発点に出る所までやって来た。が… そこまでの廊下は、鉄骨を組まれ、床は網になっている状態なのだ。下が見える…。ひぇ〜… 困るだよぉぉぉ(涙)。っつー事で、ジャンプ台の出発点からの景色は見ておりません(苦笑)

 またも足に妙に力が入りながら一階分降りると、今度はノーマルヒルの出発点に出る出口がある。そこも構造はラージヒルと同じなので、出るのはパス。でも、その階の展望スペースから見る景色は、随分低く感じる。そして、また階段を降りる。やっとそこはリフトのてっぺんである。さっき上がってきた時には、かなり高く感じたリフトの立っペンだが、今は相当低く感じる。そして… また若干1名と一緒に下りのリフトに乗る。で、下りのリフトというのも… 実はあまり乗ったことが無い…。目線が下に向くのは、あまり好きくないなぁ…。とうとうリフトが一番下に戻って、地面を足で踏みしめた時、脚はガクガクしておりました。もっとも、ジャンプ台の出発点にもちゃんと出て行っていたAさん達も、足が強ばっている…と言ってたから、多分あの階段は、誰でも降りにくい階段だったのでしょう。と、思う事にしておきます(苦笑)

山芋と、浴衣と、鹿の**
 さて、2日目の夕食は、バーベキュー。当初予定では、外でやる予定だったバーベキューだが、断続的な雨模様で、結局室内での焼肉の様なものとなった。ジュージュー焼く焼肉はごく普通の焼肉なのだが、1つだけ買出し部隊のブーイングを受けた食材があったらしい。それが山芋である。確かに、焼肉に山芋…というのはあまり聞かない。芋と言えばサツマイモかじゃが芋であろう。お店でK嬢が買うと主張した時、買出し部隊は一斉に反対したそうな。しかし、K嬢は譲らなかった。かくして食材のお皿には山芋の厚切りが並んだのだが、実はこれが旨い。
 山芋と言うとスリ下ろしてトロトロにして食べる…というのが一般的だが、塊のまま加熱するとホクホクになる…というのをご存じだろうか? 厚切りの山芋、表面が色付くくらいの焼き方だと、シャキシャキ感が残った面白い舌触りである。焦げ付かないように注意しつつじっくり中まで焼くと、ホクホク感がたまらない。結局この山芋は取り合いになった。じっくり焼こうと思って鉄板の隅に確保しておいたつもりが、気がつくと食べられてしまっていたりする。意地を通してくれたK嬢のお影で、新たな焼肉のヒット食材を知る事ができました。K嬢に感謝。

 夕食が片付くと、いよいよ花火大会である。毎年恒例の花火は子供達には大好評。嬉しい事にお天気も回復傾向で、無事できそうである。花火といえば浴衣。という事で、女の子達が浴衣に着替える。あちこちに、艶やかな浴衣、しっとり色気の浴衣、落着いた大人の浴衣、そして、ちょっとおマセな浴衣が集まっている。そして、呉服関係のAさんのご主人と、料理人Kさんも粋な浴衣を纏っている。茶髪の料理人Kさん、浴衣を着ると、京都のおしゃれな和風バーのバーテンさんみたいで格好良い。

 花火大会は子供達と浴衣の一団に任せて、カウンターバーでは大人の時間が始まっている。今日はカウンタには謎のミニチュアボトルが数本並んでいる。これ、この間シンガポールに行って来たTさんがお土産に買ってきたもので、ラベルは全部中国語なのでもう一つ得体が知れない。しかし、青竹だの、霊茸だのという文字を見るに、漢方系のお酒と察しられる。その中にあったのが鹿の**と思しきお酒。これは多分精力剤なんだろうなぁ。カウンタに並んで座っている(何故か)女性陣は皆興味津々である。小さなグラスに注いで回し飲みをするのだが、いかにも薬臭い臭いがして、そんなに美味しいものではない。しかし、この「鹿の**」を飲み回した女性達が、後で壊れていった所を見ると、何かしら効果があったのかもしれない(笑)

 外では子供達の歓声が弾け、グリーンやブルーやピンクの光が途切れなく溢れている。が、今回の花火、結構危ないものもあったらしい。ごく普通の手持ちの花火なのだが、棒の先から花火部分がぶら下がっている。これに火を付けるとそのぶら下がっている部分が回転しながら燃えるのだ。腕が長ければ問題無いのだが、小さな子供達は回る花火が身体をかすらんばかりである。そんなこんなで、火傷をする子供も出てきた。日焼け対策のつもりで持ってきたアロエ軟膏が、思わぬところで役に立つ。カウンターは火傷した子供が来る度に、救護室に変身である。取り敢えずお風呂の流水で冷やして、アロエ軟膏を塗ってやると、また元気に飛び出していく。軟膏の霊験あらたか(?)、次の日まで痛がっていた子は居ませんでした。

 花火も終り、寝に入る子、まだ意地で起きている子を尻目に、大人達の酒盛りはますます盛り上がっていく。この手のお泊り合宿の醍醐味は、何と言っても後先考えずにお酒が飲める事である。それにこの集団、お酒にはなかなかに一言も二言もある人が多くて、美味しいお酒が揃うのだ。甘口、辛口各種取り揃えの日本酒は、自分の好みを言うと、日本酒担当のMさんが一番合うのを探してくれる。米の味が主張しないすっきりなのが良ければ、Sさん系、味がしっかり、一癖二癖あるのが良ければMさん系と、好みの質にメンバの名前まで付いている。ワインにもワイン担当のYさんが居て、これも好みで冷蔵庫から冷えたワインを出してもらえる。お摘みは、いなせな料理人Kさんが、残った食材をアレンジして、さり気ない一品を次々作ってくれる。

 大人達のタガがゆっくりと外れていく。幹事のKさんに笑かされた2人のY嬢が、転がるお箸の音にまで笑い転げている。2人はすっかり笑いの波にハマッてしまって、ちょっとの事で際限無く笑い続けている。一番下の子を寝かしつけたRさんが、今年もポーッと頬を染め、トロンとした顔でカウンターに座っている。甘口のワインを聞こし召してご機嫌である。「大丈夫?」というと「酔ってないよ〜♪」と笑うその顔は、誰がどう見たって酔っているとしか言い様が無い。
 最後まで頑張っていた子供達も寝に上がった頃、Mさんが壊れ始める。しな垂れかかる相手を探している。その時、Kさんがふっとカウンタから出て来る。そして、おもむろにMさんを膝の上に乗せ、Kさんの表情が一瞬で料理人のそれからホストのそれに変わった。口元には妖しい微笑みが浮かび、艶っぽい眼差しで見つめる。囁く様な声が、ワントーン下がる。いやいや、流石は商売人でいらっしゃる。なかなか良いものを見せていただいた。一緒に見ていたRさんが、私にも…と思っていたかどうかは不明であるが、壊れていった原因が「鹿の**」にあったのかは、もっと謎である。

 夜はゆっくりと深けていく。そこここに、沈没して既に布団には行きつけそうも無い面々が転がっている。意識を保ち、身体の自由が効く連中は寝るべく移動していく。カウンタには僅かに3〜4人が残って、取り留めも無い話を続けている。朝の5時、最後まで残っていた面子も仮眠に上がった処で、朝風呂に入る。昨日の曇天はどこへやら、今日は晴れそうである。明るく開放的な露天風呂にゆっくりと浸かれるのも、こういう旅行ならではだろう。朝風呂から出ると、カウンタには既に早起きな子供達が座っていた。


 

旅行記メニュー 1日目 最終日