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 読書雑記 2002.1〜8 

どうころんでも社会科 相当の社会科嫌いが、これは面白かった。昔から社会科の授業がこんなだったら、もしかすると、もうちょっとは好きになっていたかもしれない。この非常に面白い社会科の本にひとつだけある欠点、それがこの本に日本地図が付いていない事だ。知多半島の歴史の話なんて、地図を見比べながら読まないと、絶対に面白み半減…つか、地理ペケな人には全然判らない。これから読んでみよう…という人は、まず、日本地図のご用意を。  2002.8.30
清水義範作
西原理恵子絵
講談社文庫
クビツリハイスクール
戯言遣いの弟子
シリーズ三作目でかつ密室本。訳あって三作目から読んだがある程度独立して読める。随所で「あれ?」「げ、そう出ますか…?!」と思う、なかなかに楽しめるミステリ。でもキャラ的には、完全無欠向かう処敵無し世界最強完璧美人のくせに、矛盾皆無でバランスバリバリっつーキャラはイマイチで、矛盾だらけのキャラが好きだなぁ…と。  2002.8.26
西尾維新
講談社ノベルス
夜の蝉 円紫さんと私シリーズ第二弾。前作より「私」と周囲の人間関係にまつわる話が色濃くなる。特に共に育ってきた兄弟との関係は、互いに互いをどう思っていたか…という微妙な問題が絡み、ドロドロとした雰囲気を醸し出すが、北村らしい優しさで、それがきつくなり過ぎずに助かっている様に思えた。  2002.8.23
北村薫
東京創元社
空飛ぶ馬 円紫さんと私シリーズ第一弾。殺伐としていないミステリーである。日常のごくありふれた風景の中に潜む人々の思惑や、微笑ましい出来事を題材にしているのだが、それだけにその思惑や深い想いがとても身近でリアルに感じられる。円紫さんは落語家さんなので、乏しい落語の知識だけで読むと、本当の良さがちょっと判らない感じで残念。  2002.8.23
北村薫
東京創元社
国民クイズ 上下(漫画) 毎日行われる国民クイズの優勝者は、どんな望みでも叶えられる…、という物凄く馬鹿馬鹿しい設定の中に、人間の欲望を見事に凝縮して描かれていたと思う。連載当時からかなりマイナな漫画だったと思うが、K井K一のノリと熱狂に最初からハマっていたな…と、懐かしく思い出す。  2002.8.22
杉元伶一原作
加藤伸吉絵
太田出版
親指Pの修業時代 上下 突然足の親指が男性器になっていた女性の、変化と成長の物語。非常にキワモノな物語である。しかしこの全面キワモノ的、性的描写のオンパレードがポルノチックに感じられないのは、内面に重点を置いて書かれているからだろう。恋愛や性愛が、決して型にはまった一辺倒なものでは無い事を、極限的状況を追体験する事で考えさせてくれる。  2002.8.20
松浦理英子
河出文庫
人形の家 人形というものは、自ら動けない、喋る事もできない、何処へ行き何をするかは全て人間達次第である。もし何かして欲しい事、したい事があれば、ただただひたすらに願うだけ。そして、真に望む物を手に入れる為には、やはり必ず代価が必要なのだろうか。神は気紛れであると思った一瞬。  2002.8.18
ルーマー・ゴッデン作
瀬田貞二訳
岩波少年文庫
覆面作家は二人いる
覆面作家の愛の歌
覆面作家の夢の家
謎の女流作家と麗しいタンテイさんが活躍する短編ミステリのシリーズ。どれも日常のどこにでもありそうな風景や、誰でも簡単に陥りそうな勘違い、そんなものをトリックに使っているので「おぉ、そうだったのか!」感が強い。そして何より、全編に渡る北村らしい優しさが安心感を呼ぶ。しかしただ一つ、どうしても納得の行かない部分がそれらを相殺していて、非常に残念だった。  2002.8.18
北村薫
角川文庫
お電話倶楽部 大人向きの童話短編集。いろんな人から電話がかかってきて、聞き上手で立ち入らない、そんな“オジサン”のお話し。挿絵が、元々は電話会社のPR誌の表紙絵だったもので、それに作者がお話を作って本にした…というのがネタらしい。短いお話の中に舟橋氏のエッセンスが凝縮している。  2002.8.16
舟橋克彦
ちくま文庫
ルドルフといくねこくるねこ ルドルフとイッパイアッテナシリーズ第3巻の児童書である。今度のルドルフは、猫が猫である事を考える。自分というものを考える。生れ育ちや住んでいる処について考える。猫だけでなく犬も考える。しかし、心の“ふなだんす”に何をどう仕舞っておくのかは、ルドルフとリエちゃんだけの問題ではない。  2002.8.15
斉藤洋
講談社
ハサミ男 発売当初、巷で非常に話題になっていたミステリである。どう書いてもネタバレてしまいそうで困る。とりあえず書ける事と言ったら、面白かった、意表を突かれた、再読しないと何が何やら…、という事くらいだろうか…。ネタ的に、ちょっとなぁ…と思うところもあるのだが、最後まで読んでいくと納得しても良いか…という気にもなる。  2002.8.12
殊能将之
講談社文庫
ねこめ〜わく …ようやく3!(漫画) 新キャラ登場である。って言われたって、読んでない人にはさっぱりである。が、このオスカ・ヨーリス、にこやかな髭面が、某○るとのAたんそっくり(爆)。んで、桃缶ネタとかあったりして、どうもこう… じたじたしながら読んでたのでござります。  2002.8.10
竹中泉
宙出版
熾天使の夏 カケル第ゼロ作の何度目かの再読である。何度読み返しても消化/昇華できずにいる。しかし今回、これは消化すべきものでは無いのではないか…という想いを抱き始めた。読む度に、捉え方が、感じるものが違って来る。それは自分自身の変化の投影であり、カケルが直観する想念を“今”どう捉えるか…という事が、自分の変化の具現であり、確認でもある… そんな気がした。  2002.8.4
笠井潔
講談社
エレキング(漫画) 薬売り(錠単位/無店舗)の、点目の“おいさん”が大活躍(?)する、脱力系の4コマ。41歳の学生さん(浪人生かもしれない)とか、謎の赤さんとか、訪問者撃退主婦とか、意味不明の人物達が訳の解らない行動をしている。そして、おいさんは何時いかなる時でも冷静である。  2002.7.30
大橋ツヨシ
講談社
冬のオペラ 職業「名探偵」の巫弓彦とその記録者姫宮あゆみの3つの事件。北村薫の絶妙な語り口で、巫の超絶的な推理が何てことなく書かれてしまうのが凄い。お影で、この探偵が何をやっているのか暫くは読み取れなかった。“事実が見えてしまう”という巫、これは“本質直観”に他ならないではないか。何の事はない、巫はカケルなのだ。  2002.7.12
北村薫
中公文庫
ウラグラ! ベスト・オブ・裏モノの神様 ここでいう「裏」とは、社会規範の様なものから微妙にはみ出したりしておさまりの悪い異物のことらしい。いわゆるB級のネタを延々弄っている。実に下らないのだが、そのくせ妙に説得力があったりして、ふ〜ん…とか、唸ってしまったりする。  2002.7.8
唐沢俊一
アスペクト
月の砂漠をさばさばと 小学生のさきちゃんとお母さんの、12個の短編集である。この物語達の異様なリアルさはなんなのだろう。ホンの十数頁の中でこのリアルな日常を、全く説明的でなく極めて自然に織り込みながら、優しく可愛らしい小品を創り出している。これは子供たちにも読める童話である。しかし深くてちょっとぶっ飛んでいる。こんなお母さんが居たら良いな…と思ったけれど、作家の娘はちょっと浮いてるんだろうな…とか思った。  2002.7.7
北村薫
新潮文庫
B型平次捕物控(漫画) いしいひさいちというのは、つくづく天才だと思う。どうしてこんな下らない、どーでも良い様なネタを何十年と書き続ける事ができるのだろう。が、いしいひさいちが恐ろしい処は、この救いようの無い程のワンパターンがどうしようもなく可笑しい事である。そう言えば「となりの山田くん」のお母さんは、何日かに一回は晩のおかずに悩んでいた。  2002.6.29
いしいひさいち
東京創元社
おせん 其之四(漫画) 粋で気風の良い一升庵の女将おせんさんは、料理もうまいし、目利きだし、侘寂のしつらえも巧みだ。そして色っぽい。きくち正太の絵は、はっきり言ってデッサンが狂っている。が、どこかキツネが化けた様な色っぽさと、ちょっとすっ呆けた顔が、大好きである。  2002.6.25
きくち正太
講談社
八戒の大冒険 2002REMIX(漫画)
 より『八戒の大冒険』
処女短編「八戒の大冒険」だけ、読みました。したら、どうしようもなく笑いが止まらなくて、止まらなくて、止まらなくて、止まらなくて止まらなくて止まらなくて…。
ぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぷいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶいぶい…。  2002.6.25
唐沢なをき
BEAM COMIX
バイバイ、エンジェル 「はじめての現象学」を読みそれをカケルに改めて問うてみようと思って再読したもの。彼への見方が変わったかどうかは良くは解らない。以前は書き割りのような風景にしか見えなかったその荒涼とした内面が、今は僅かだけは現実のモノとして垣間見た気がするから、今回は胸が痛んだ。カケルに、惚れ直した。  2002.6.25
笠井潔
角川文庫
ムジカ・マキーナ 紹介には「音楽SF」とある。ある種のサイバーパンクだと思う。設定も時代背景も大小の道具も巧くできていて、話としては非常に面白い。ミステリとしても、なかなかにハラハラさせてくれる。が、それに酔わせてもらえない問題点があって残念である。  2002.6.17
高野史緒
ハヤカワ文庫
ブレーメンII 3巻(漫画) ギャグタッチだと思っていたのに、どんどん話がシリアスになって来てる〜。あの点目のすっとぼけ顔で、マジなSFしてるんだよ〜。危ない二枚目も出て来るし、動物さんたちも、ほにゃほにゃの火星人もわらわら。いやほんと、相変わらずの川原泉の力強さを感じるのでしたとさ。  2002.6.14
川原泉
白泉社
はじめての現象学 初めて出会った時、現象学は、矢吹カケルというえらくニヒルな青年と共にやって来た。カケルは現象学を使って、ミステリを解き明かす。これはその現象学の解説書である。しかし、読んでいても本当に哲学の解説書か?と、何度も疑問になる程平易な解説である。くすっと笑いながら読む哲学の解説書などあまり無いので、お薦めである。  2002.6.13
竹田青嗣
海鳥社
ふぶきのあした 「あらしのよるに」シリーズ第六巻完結編。賛否両論だそうな。今まで子供に読み聞かせて来たけれど、この完結編に至って読んでやれないじゃないか… という意見が多いのだという。しかし、喰うものと喰われるものとの友情は成立するか?という命題を、奇麗事無しでやった時、行き着く結末など最初から見えていないか?  2002.6.11
木村裕一作 あべ弘士絵
講談社
さかだち日記 中島らもの日常日記である。こうして見ていると、しょっちゅう海外に 出ている人だなぁ…と、感心する。後書きによると、最近は手が震えて口述筆記だとある。文庫が出た今、どうなのだろう?日記の前後に入っている、野坂昭如との対談がいろいろとエグいしエロい。  2002.5.29
中島らも
講談社文庫
如月小春戯曲集
 より『ANOTHER』
佇む自動販売機が見る幻影… その幻影を見せる薬を売る“くすりや”…。見ているものは夢なのか現実なのか…。かなり嫌な話である。もっと昔ならのめり込んだか、逆に完全拒否か、どちらかだった様に思う。しかし今は、自分はどうなのか…ではなく、何をどう書くか… そんな目で見ている。あとがきの「どうしてよいのかわからない時は、どうしてよいのかわからない、と書けばよいのだな」というセリフが印象深い。  2002.5.25
如月小春
新宿書房
ピアノの森8巻(漫画) 音楽の神を、力でねじ伏せる少年…。何かを、力の限り表現できる才能…。そういうのを見ていると、如何に自分には何も無いか…という事を思い知らされる。でも、神の力をねじ伏せる能力なんて要らない。きっと自分の分に合うだけの何かを持っている筈だから。それが何なのか…。やっぱり、探したいと思った。  2002.5.25
一色まこと
講談社
ドグラ・マグラ 上下 もっと以前に読んでいたら、恐らくは、極めて有りがちな程、傾倒していたに違いないと思える。前半は非常に精密で、科学的(作り物の、であっても)で、アシモフの「空想自然科学入門」の様に興味深い。後半は、中井英夫の「虚無への供物」的メタミステリで、混乱に満ち満ちているけれど、ワクワクハラハラと、続きが気になって仕方が無い。今だからこれだけ楽しめたと思う。  2002.5.17
夢野久作
角川文庫
バベル−17 何度目かの再読。ある言語では何ページもの説明を必要とする概念が、別の言語では、たったひとつの単語で表現する事ができる。言葉というものは、文化であり、習慣であり、思想である。言葉を理解するには、思想を理解しなくてはならないし、思想を理解するには、同じ言葉で考える必要がある。そして、別の言語で考える…という事は、思考の幅を広げる事なのだ。  2002.4.27
サミュエル・R・ディレーニィ作
岡部宏之訳
ハヤカワ文庫
カムイの剣 幕末の北海道、アイヌと和人と忍者、そして海賊王キャプテン・キッドの財宝。それぞれの思惑が入り乱れる中、カムイの剣を持った若者が謎の真相を暴いていく。アイヌの部落(コタン)から始まって、いつの間にか舞台は世界に広がって行くのだけれど、最後の方、いささかドタバタとなっていて、着いて行くのが難儀だった。  2002.4.15
矢野徹
角川文庫
ONE PIECE 23(漫画) たしぎっち、かっこいいです!けむりん、男です!おっさんと女子が、ひたすら格好良い、23巻でありました。いろいろ懐かしい顔も出てきて、分厚い232頁は美味しさ大爆発でありましょう。  2002.4.4
尾田栄一郎
集英社
ソコツネ・ポルカ(漫画) 土地神さまの結界に入ってしまって、バケモンの目付け役の代理をやらされる事になった紀名。助手のシシが無茶苦茶可愛い。で、土地神さまが目茶目茶えらそーである。しかし… 土地神さまの本当のお名前… すっげー綺麗かった。  2002.3.19
わかつきめぐみ
白泉社
キリコ 1〜4巻(漫画) ピジョン・ブラッドの希少価値を持つ暗殺者 キリコに兄を殺され、復讐を誓って台湾マフィアに潜入する元暴走刑事 遊佐朗。その抗争の中で、朗の中に別の目的が生まれる。その殺伐した内容の、どこがそれ程気に入ったのか。キリコの血みどろの過去と、そこから蘇り暗殺者となった、感情の無い目に魅入られたのかもしれない。そしてその目は、朗によって変化する。朗の顔も、キリコによって変わっていく。そこに、真の救いがあるのか、解らなかった。  2002.3.6
木場功一
講談社
アフター・スピード
留置所→拘置所→裁判所
「SPEEDスピード」の続編である。前作において、筆者は取材の為に各種の「薬(ヤク)」を試す。そして、まさにラリっている真っ最中に捕まるのだ。本書では、逮捕され、留置所から拘置所、そして裁判所に至る過程をドキュメントしている。こういうドキュメントの困るところは、けしからぬ事で拘束されるはずの場所が、妙に面白可笑しく書かれている事で、前作同様、変な誘惑がある。 2002.3.3
石丸元章
文春文庫
かめくん これは、オーソン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」か?と思った。でなければ、神林長平の「戦闘妖精・雪風」か?と思った。でも、かめくんは、六畳台所付きトイレ共同の木造アパートに住んでいる。かめくんは、亀型ロボットで、甲羅の中に格納されたデータを駆使して、不可解な戦争(?)をしている。鶴は千年、亀は万年…。記憶されているけれど、不要な記憶はアクセスできない。また、泣かされてしまった。カードの様に説教臭くなくて、神林の様に重くない。けれど、カードや神林以上の出来だと思った。 2002.2.28
北野勇作
徳間デュアル文庫
空気枕ぶく先生太平記 担当編集者による空気枕ぶく先生の暴露本… てな作りのお話。やっけに自分を卑下したような書き方で、どうも何だかなぁ…というのが感想。こういうのを書いてる暇があったら、ちっとも進まない長編のひとつも完結させろよ〜…と思ってしまうのは…、読者の我が儘? 2002.2.27
夢枕獏
集英社文庫
龍の黙示録 東日流妖異変 東日流を“つがる”とあっさり読めるのは、トンデモ本マニアらしい。龍の黙示録の第二弾。龍緋比古は、青森へ飛び、人に似て、人ならぬ者 龍と、その龍に関った人間 透子は、新しい局面を迎える。一作目で、割と有りがちな設定に、大丈夫かな? と思ったが、今回は、結構面白かった様に思う。透子の強さが好きだ。二人の間に生まれた新たな信頼… 次がまた楽しみである。 2002.2.17
篠田真由美
祥伝社 ノン・ノベル
ONE PIECE 22巻(漫画)  2002.2.3
尾田栄一郎
集英社
エキゾティカ 中島らもは、結構好きだが、この作品は、もう少し酔って書いて欲しかった気がした。中島らもは、ラリってる方が良いモノを書くみたいだ…というのは、どこかで書いたかもしれない。それにしても、食べ物がいかにも旨そうに書かれている。あぁ、インドカレーが食べたい! 2002.1.29
中島らも
双葉文庫