寂然法門百首 96
2025.6.16
娑羅林
たれもみな今日の御法(みのり)を限りとて鶴の林になくなくぞきく
半紙
【題出典】一般に通行した固有名詞であり、出典を特定せず。
【題意】 娑羅林(さらりん・しゃらりん)
【語釈】娑羅林=釈迦が『法華経』の次に『涅槃経』を説いた場所。 鶴の林=題の娑羅の林のこと。釈尊が涅槃に入る時、白色に変化しあたかも白鶴のようであったことから「鶴の林」という。
【歌の通釈】
誰もがみな、今日の説法が最後だと思って、鶴の林で泣く泣く聞くことだよ。【考】
涅槃時の歌。娑羅の林の中、釈尊が最後の説法を行うのを、聴衆が泣きながら聞くという場面を詠んだ。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
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娑羅林とは、「娑羅双樹(さらそうじゅ)」の林のことです。「娑羅双樹(さらそうじゅ)」については、以下のような解説があります。
1 フタバガキ科の常緑高木。高さ約30メートルに及び、葉は光沢のある大きな卵形。花は淡黄色で小さい。材は堅く、建築・器具用。樹脂は瀝青(れきせい)(チャン)の代用となり、種子から油をとる。インドの原産。さらのき。さらじゅ。しゃらそうじゅ。 2 釈迦がインドのクシナガラ城外のバッダイ河畔で涅槃(ねはん)に入った時、四方にあったという同根の2本ずつの娑羅樹。入滅の際には、一双につき1本ずつ枯れたという。しゃらそうじゅ。 3 ナツツバキの俗称。
〈デジタル大辞泉〉このうちの「3」の「ナツツバキ」は、日本でもよく植えられています。これが「娑羅双樹」と同じだというわけではありません。あくまで、「ナツツバキ」の「俗称」です。