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「おめでとー!イタリア!」
「ありがと!ポーランド!」

楽しそうに笑う二人に、リトアニアと日本は顔を見合わせて笑った。
「本当になードイツのやつ遅いしー。」
「むー、ドイツのこと悪く言わないでよ。」
「なになに〜?ラブラブ?」
「ヴェー、そうだよ〜。」
幸せそうな笑顔に、よかったですね、と日本は声をかけた。…彼女が、片想いを自覚したのはついこの間のことだけれど。本当によかったと思う。…彼の、ドイツのためにも。

「ありがと、日本!あっ、そう、おめでとーだよ日本も!」
いきなり言われて、え、と固まって、イギリスと!と言われて、あ、いやあの、私は…と口ごもってしまう。
「何々、日本もなん?」
「そうなんだって、イギリスと」
「ちょ、イタリアくんっ!!」

大慌てで止めるけれど、それだけでその場にいた2人には伝わってしまったらしく、おめでとうございます、なんてリトアニアに言われてしまった。ああもう…顔を真っ赤にしてうつむく。
「日本照れちゃった。かわいいー。」
「からかわないでくださいよ、もう…。」
思わず、グラスを額に当てた。…冷たくて気持ちいい。お酒が急激に回ってきた気さえした。

「あっ、そうそう!イタリア、あの衣装今度貸して?」
「ヴェ?いいけどなんで?」
「リトが着てるとこ見たいって」
「ちょっと!!そんなこと言ってないから俺!」
あれ、じゃロマーノの方?違うからそういうことじゃないよああもう!とにぎやかな幼馴染のやりとりに、イタリアの方を見たら、目が合った。楽しそうな笑顔。グラスを近づけてくる。

「俺も日本も、二人とも、おめでとうっ。」
「…はい。おめでとうございます。」
ちりん、とグラスが鳴った。






「すごかった、です。」

客席係だったから、客席の後ろの方で見ていた、というフィンランドに素直な感想を求めたところ、そんな風に言われて、ロマーノはぐったりとつっぷした。

「う〜…明日から学校行けない…。」
同じ学部のやつらも、呼んだのに。そう思って深くため息。なんであいつはあんな濃厚なキスするんだよ舞台上で…!!
収まっていた怒りが再浮上してきて、グラスの中身(オレンジジュースだ)を飲み干して、だん、とグラスを置いた。

「だ、大丈夫ですよ…。」
「そうですよ、ほら、みんなロマーノくんとスペインさんの関係、知ってますし。」 2人の言葉もそりゃあそうなんだけど。それとこれとは話が別っていうか。というかもう論外だろうというか!
「…もう一発殴っとこうかな…。」
ぼそ、とロマーノが呟いたところで、この御馬鹿さんが!という大声。

見れば。話題のスペインが、正座でオーストリアに説教されていて。…あれはしばらく続きそうだ。
「………まあ、もう一発は勘弁してやるか…。」
ちょっとかわいそうになって、そう一人ごちて、枝豆に手を伸ばした。


「…でも、ちょっとうらやましい気はしましたよ。」
「僕も。」
2人が、そう笑う。見れば、フィンランドは壁際でドイツと乾杯しているスウェーデンを、カナダは、イタリアと日本に声かけてる(あいつそろそろ許さねえぞ…)フランスを見て。

「……言ったら、してくれるだろ。」
フランスもスウェーデンも、と言えば、それは遠慮します。とユニゾンで返ってきた。








迷惑なくらいにぎやかなやつらあるね、と隅のほうで巻き込まれるのはごめんだと、少しずつ飲んで、むしろ食べていた中国の目の前に、座る影が一つ。…いや二つ。
さっきまでフランスにからまれていたイタリアと、それを鉄拳制裁でやめさせたドイツだ。

「ほら、イタリア、座れ。」
「はーい。」
「まったく…こういう席でフランスには近づくなといつも言ってるだろう?」
「だって気付いたら後ろにいたんだもん…。」
…甘い甘い雰囲気。…いつもどおり、というところが問題だ。いままでつきあっていないくせに、ずっとずっとこの雰囲気だったのだから。頭をぐしゃぐしゃと撫でるドイツを見て、呆れる。

「喉渇いたー。」
「ああ…中国、メニューを取ってくれるか。」
「はいはい。」
渡してやると、お酒ー!あんまり飲むと、気分悪くなるぞ、ヴェー…とやりとり。
…恋人、というよりは。兄と手のかかる妹、というか。もっと言えば、ペットの世話する飼い主というか。
まあ、今日付き合い始めたばかりじゃ、そんなものでいいんじゃないか、と苦笑して、なんとなく眺める。
そうしていると、食べるものが運ばれてきた。置く場所がない状況に、香港にちょっと持ってるある、と言って、机の上を片付ける。

「わあああ!ピッツァだ!」
香港の手の皿を見て、イタリアの元気な声。
「食べるか?」
「食べるー!」
机の上にスペースを空けて、皿を置けば、きらきら目を輝かせたイタリアのために、ドイツがひとつ取り分けて。
「ほら。」
「ありがとうドイツ!」
「ほら、慌てて食べるな。…悪い、香港、ウーロンひとつ。」
「わかった。」
「むむ…チーズ伸びる…。」
「口に物入れたまましゃべるな…ほら。」
「むぐ…ありがとドイツ。」
「おいしいか?」
「うん!」

チーズを箸で切ってやったり、パクパク食べ始めたイタリアの頬を拭ってやったり。甲斐甲斐しく世話を始めたドイツをみて、ああ、これは。と何かがダブって見えた。

「…小鳥の世話する親鳥…。」
「?何か言ったか?」
「何にも。」




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