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どたどたばたん、とドアを開けて飛び込んで、目の前にあったベッドに思わずばったり倒れこんだ。
「…なにあれ。」
何、あれ、何あれ、何あれ!
信じられない、だって、ドイツ、でも、そんな、兄ちゃんと?でも、そんなの、だって!
ぐるぐると、さっき見た光景が頭の中から離れない。でも、信じられない!
何でドイツと兄ちゃんが抱き合ってたの!?

ドイツに頼まれて、ハンガリーさんに手紙を渡しに行ったんだ。
久しぶり、から始まって、いろいろ話してたらいつのまにか結構長い時間経ってて、それじゃあ、とハンガリーさんと別れて、ドイツの家に戻ったら。
「ドイツー、あれ?」
仕事部屋にいないから、あれって、それでどこだろって探してたら、応接室のドアが少し開いてて。
誰かお客さんかな、って思ったからこっそりのぞいて。

「……え?」


その光景に頭が真っ白になって、後のことは、よく覚えて、ない。
「…ドイツ、」
小さく呼んだら、胸が苦しくて苦しくて仕方なくなった。ぎゅう、と両手で服を握り締める。瞬くと、涙がこぼれた。
「…す、き…。」
言えない、けど、好き。ドイツが好き、好き…!
溢れてくる気持ちに息が苦しい。涙は止まらない。好き、こんなに、好き。さっきの光景だけで、兄ちゃんを憎いって、思ってしまうくらいに、兄ちゃんのことも大好きなのに、でも、それじゃ止まらないくらいに、好き、好き、大好き!
「…う…!」
でも、ドイツは兄ちゃんと、そう思って顔をくしゃりと歪めた。
すっごく近くで見つめ合って、まるで。
キスする、一秒前、みたい、な。

こんこん、とノックの音が、意識を引き戻した。
はっと体を起こして、はい、と答えてしまってからこんな顔で会えない!と気付いて慌ててブランケットの中にもぐりこんだ。

「イタリア?帰って…どうした?」
…ドイツ…!
ああもうあたりまえなんだけど、ここドイツんちだもんでも!
今顔合わせられないのに…!
「具合でも悪いのか?」
心配そうな声に何でもないよ、と平気そうな声を出してみせる。
「…嘘をつけ。」
なら、こっちを向いて言ってみろ。厳しい声が、そう告げる。…どーしよー…顔なんて上げられない、よ…泣きはらしたみたいな顔になってるもん絶対…。
体調悪いって、嘘ついて、やりすごす?でも、嘘、なんて、つきたくないし、それに。
聞いてみたい。兄ちゃん、とのこと…でも怖い!!
どうしよう…

「…ドイツ、兄ちゃんのこと、どう思ってる?」
「平気だよ、ほら!」
「…ちょっとおなか痛くて…。」