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「…ドイツ、兄ちゃんのこと、どう思ってる?」

思い切って、聞いてみた。は?と意表を突かれたみたいな、声。
…でもやっぱり返事聞くの怖い!ブランケットの中で耳を塞いで、それでも、ドイツの低い声が耳に滑り込んでくる。
「……おまえの、兄、か?……俺を嫌ってるのは別にいいんだが、いきなり殴りかかってくるのは止めてほしいな…。」
しかもそれでこけるし…助けてやったらやったで怒るし…呆れたようなため息。
「……へ?」
言葉の意味を、頭の中で考える。…あれ。嫌ってるのは別にいい?じゃあ、あれ、でも、抱き合って、…ん?
「何だ?」
おそるおそる、顔を出してドイツの方を見る。
「…兄ちゃん、と、さっき何してた、の?」
「…スペインとあいつと仕事の話、だが。」
何だ。帰っていたなら顔を出せばよかっただろう。そんなドイツの声が頭を素通りする。あれ、スペイン兄ちゃんも、いたの?
「だって、なんか、兄ちゃん抱きしめて、」
「…だから、あいつがいきなりこけたから受け止めたんだ。」
そうしたらまた烈火のごとく怒り出すしな…深い、ため息。
…なんだ。そう、だったんだ。それだけ、だったんだ!
「えへへ。」
何だか笑顔になって笑ったら、で、お前はどうしたんだ、と聞かれた。
「え、えーと、ちょっと悩み事?」
答えると、ほう、と感心したような声。
「珍しいな。」
「ひどい!」
「で?どんな悩み事だ?」
「…忘れちゃった!」
へら、と笑ってみせると、おまえらしいな。とドイツは微笑んだ。
「それで?ハンガリーにちゃんと手紙は渡してきたんだろうな?」
「もちろんであります隊長!」
敬礼すれば、ならいい。と彼が部屋を出て行こうとむこうを向いた。ドイツ、思わず呼び止める。
「何だ。」
「大好き。」
言ったら、は!?と彼は勢いよく振り向いて。
「俺、ドイツみたいな友達がいて嬉しいよ。大好き。」
そう言ってみせたら、彼は友達でなく宗主国と、と言いかけて、やめた。
「…そうだな。友達だな。」
笑ってそう言ってくれたのが、嬉しくて、でも胸が少し苦しくて。それでもやっぱり、嬉しかった。

ドイツが出て行った後、何かがベッドの上で光った。
「…あ。」
手に取れば、それはやっぱり。


『鍵のかけら』を手にいれた!




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