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「…ちょっとおなか痛くて。」
でも、大丈夫だから。すぐ治ると思うから。頭までブランケットをかぶったまま、できるだけ元気そうな声を出してそう言えば、大丈夫か、と声が近づいてきた。あわあわと焦る。

「大丈夫!ちょ、ちょっと帰り道にジェラート食べたのがダメだった、みたい。えへへ…。」
「…自業自得じゃないか、まったく…。」
「ごめんなさい…。」
「薬、」
「やだやだ絶対やだ!」
即答したらおまえな…と呆れた声がだいぶ近くでした。
ぎし、とベッドに座る音。どうしていいのかためらう気配の後で、ブランケット越しに背中を撫でてくれる大きな、手。
…ああ心配かけてるごめんドイツ俺嘘ついた…!
うう、といたたまれなくなっていると、無理はするなよ、と優しい声。

…ドイツはいつだってそうだ。ああだこうだ言いながら、怒ってお説教して、それでも結局俺に、優しい。
だから。
だから、俺は、つい。
「…勘違いさせないでよー…。」
小さくこっそりと呟いた言葉は、ドイツの耳にはもごもごとしか聞こえなかったらしくて、何か言ったか?と聞き返された。
「ううん、なんでもない、よ。」
「そうか。」
それから、しばらく、そこに黙っていてくれたドイツの心遣いが、
嬉しくて、息が止まりそうなくらいに痛かった。


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