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「イタリア、」
ちょっと、と呼び止められて、何ー?と首を傾げる。
どこか真剣な表情に、仕事の話?と聞くとうなずかれた。
「あ、じゃあ、後でもいい?洗濯物干しちゃわないと…」
腕の中に抱えたかごを見せると、わかった、と言われた。
「来るまで仕事の続きをしているから、」
「仕事部屋?わかったー。」
そう答えて、歩き出すドイツを見送り、じゃあ早く干そう、と走ろうとしたら、慌てなくていいからなって言われた。
びっくりして振り返るけど、こっちを見た様子なんてなくて、なんでわかったんだろって不思議に思った。


こんこん、とノックすると、入れ、と声。
「ドイツー。」
がちゃんとドアを開けて顔を覗かせると、ああ、って見ていた書類を机に置いた。…そんな大事な話なのかな?
あっもしかして怒ってる!?お説教!?
「それで、イタリア。」
「ご、ごめんなさい!」
そう慌てて謝ったら何で謝るんだって困った顔。あれ?違う?
「だって、俺怒られるんじゃないの?」
「…誰がいつそう言った。」
ドイツが眉が寄って怖い顔になる。
けれどそれが、ちょっと呆れているだけで別に怒ったりしてる表情じゃないことは知ってるから、怖くない。

「なあんだ。だってドイツに呼び出されるって言ったら怒られるときくらいじゃんかー。」
そう言えば、おまえが怒らせるようなことばかりするからだろう、とにらまれた。
「ヴェー。ごめんなさい…。」
「…まあ、それは、いい。」
はあ、とため息をついて、彼は引き出しを開け、一枚の書類と、箱を取り出した。

差し出されて、受け取る。…何かとっても重要そうな書類だ。折ったりしないようにちゃんと受け取る。
「ヴェ。これ、誰のところに届ければいいの?」
「…………。」
何だかとっても疲れたようなため息。…何?
「……ではイタリア=ヴェネチアーノのところまで届けてもらおうか。」
「はーい…って、俺?」
尋ねるとこっくりとうなずかれた。
「え、何々?何の書類?」
「内容をちゃんと読め!」
…怒られた。目の前にいるんだから教えてくれたっていいのに…。
箱を机に置かせてもらって、ぺら、とそのちょっとしっかりした固い紙を見る。

「えーとなになに…ドイツ連邦共和国は、ここに、属国イタリアの独立を認め……イタリア共和国との正式な国交・同盟を結ぶことを宣言…する…?」
これって、と顔を上げた。これって、これって…どういう、こと?
「独立、って!」
「そういうこと、だ。その方が、いいだろうという話になった。…施行されるのは来週。おまえは、兄と暮らすことになる。」
「で、でも、」
おろおろとそう言ったら、何だ、うれしくないのか?と言われた。


「…うれしく、ない。」
「うれしいよ!」