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俺の仕事は掃除洗濯料理と買い物と、受け取った手紙をドイツに渡したり、逆にドイツのところまで手紙を届けたり。
それから、ドイツの仕事の細かいお手伝い。資料を運ぶのの手伝いだったり、いろいろ。

今回の会議は、ドイツが主催だから、会議のお手伝いに、(って言ってもコーヒー入れたり資料運んだりくらいしかできないんだけどねー…ちょっとでも、ドイツの手助けができたら嬉しいし。)会議場までやってきたはいいけれど。


「…ここ、どこー…?」
会議室にいたとき、ドイツに伝言を頼まれて、ちゃんとドイツが書いてくれたメモを持って、その人にちゃんと伝言を届けた、まではよかった。その後が、問題で。
………迷った…。
最初は帰り道ちゃんと覚えてたんだけど、途中かわいい女の子がいたから、声かけておしゃべりしてたら、どっちから来たかわかんなくなっちゃった…。

ヴェー、と呟いて立ち止まる。こっちかなと思って歩いてきたけど、前も後ろも同じように廊下が続いているだけで。どっちも同じにしか見えなくて。…どこから来たかさっぱりわかんない…。はあ、と深く、一つため息。
ドイツ、小さくつぶやいてみる。…それか日本かハンガリーさんかスペイン兄ちゃんか…オーストリアさん、はダメだな。うん…誰か通らないかなあ…ちょっと怖い国は、ちゃんと道聞く前に逃げちゃうもんなあ俺が…。
そう思ってため息。…今頃ドイツ心配してるかな…俺やっぱり迷惑かけてばっかりだ…。なんだか涙が出てくる…。せめて迷惑かけずに帰りたいけど…すん、と鼻を鳴らす。


「もー…会議室どっちー…?」
呟いても答える人はなく。はあ、ともう一度ため息をつくと、がちゃん、と後ろから音がした。
ぱっと振り向くと、すぐ近くのドアが開いていて。
あ!と思って涙を拭って駆け寄ろうとして、中から出てきた人物に、急ブレーキ。
…スウェーデン…!
向こうを見てからこっち振り返った、そのあまりに怖い表情に思わず、ひ、と声を上げて。
近づいてくる。いつもなら逃げれば終わるのに、腰が抜けたみたいでそれもできなくて、へたりこんで。
ぬ、と伸びてくる手。思わず叫んだ



「うわああんごめんなさいー!」
「助けてドイツ…っ!」