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パン、ミルク、卵、砂糖と、後野菜!
だいたい買ったかな。と息をついて帰りましょうか、フランスさん、と言おう振り返ると。

「…あれ。」
いない…。しばらく見渡せば。

あ。めっけ。女の人と話してる。…もう。またやってる…いや別にいいんだけど…いつものことだし。挨拶代わりなの知ってるし。
ああなると長いんだよなあと、ため息。
そしてあまり見ていたい光景ではないので、辺りを見回して。

楽しげに話す人々。響く子供たちの笑い声。どこかの家から漂ってくるおいしそうな夕食のにおい。
夕暮れの街はとても、柔らかい空気に包まれている。柔らかくて暖かい雰囲気に満ちている。
…それは、僕の家とは違うものだ。
明るい活気ではなくて、包み込むような暖かくて優しい空気。長い間、繰り返してきたからだろうか。
長い年月を刻む町並みを見るだけでも、その空気を感じられる。思わずほっと、息をつくような。

彼そのもの、なんだろうなって、思う。この空気はきっと。
僕もいつかはこんなふうになれるのかな。初めて出会ったそのときからある憧れは、今も変わらずに心の中にあって。

不意にとんとん、と肩をたたかれた。
「何見てるんだ?」
「フランスさん。」
挨拶は終わりました?ああ。待たせてごめんな。そんな風に会話を交わして、また街を見る。
ああ、やっぱり、この街が好きだ。
…この気持ち、なんて伝えたらいいのかな?

「綺麗ですね。」
「僕、この街好きです。」