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「僕、この街好きです。」

そう素直に言うと、それはうれしいな。俺も好きなんだ、ここは。と優しい声。
街を見回す表情はとても暖かくて。…この街の雰囲気と、やっぱりおんなじなんだなあ、なんて考える。

「特にここからの眺めは最高だろ?」
「ええ!」
笑ってそう答える。
坂の上になるここは、街全体が見渡せる絶好のポイントだ。
フランスさんの家からだと必ず通る、この場所は、買い物のときはついつい足を止めてしまう。夕焼け空のこの時間が、僕は特に好きだ。
「フランスさんは?」
「昼、かな。」
明るくてにぎやかな喧噪が好きなんだ、って。へえ…。お昼はあんまり来たことないかもしれない。今度、来てみよう。


「これで上り坂がもうちょっとなだらかなら、言うことないんだけどなー…」
上るの結構疲れるんだよなあとため息。うーん…
「そうですか?」
あんまりたいしたことないと思いますけど。
そう言えば若いねえ。だって。
「お兄さんもちゃんと運動しようかな。」
「本当ですか?」
聞けば、うーん、と視線がうろついてる。これは、きっと嘘だな。小さくくすくす笑う。
咳払い一回。さて!声を上げる彼を見る。夕日に染まった、金髪が綺麗だ。
「帰るか!」
「はい。」
答えて、歩き出す。同じように、赤く染まっているだろう、家へ。


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