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年若い時分には 、私は何事につけても深く深くと入って行くことを心掛け、また、それを歓びとした。だんだんこの世の旅をして、いろいろな人にも交わって見るうちに、浅く浅くと出て行くことの歓びを知って来た。

 

 


 

島崎藤村「六十歳を迎えて」(「島崎藤村随筆集」岩波文庫)


 

 

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