寂然法門百首 82
2023.7.9
人命不停過於山水
瀬をはやみいはゆく水もよどみけり流るる年のしがらみぞなき
半紙
【題出典】『往生要集』大文一
【題意】 人の命の停(とど)まざること、山の水よりも過ぎたり。
人の命が停滞しないのは、山の水に勝る。
【歌の通釈】
流れが速くて岩を行く水も淀むのだよ。しかし流れる年はそれを止める柵はないのだ。【考】
どんなに速い川の流れも滞ることがある。しかし流れる時間を止めるものなどどこにもない。題に言う通り、人命の流れの速さは山川に勝るのだ。(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
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★人命のはかなさは、繰り返し歌われてきたが、改めて身にしみる歌である。