寂然法門百首 39
2021.2.7
如空中風無依止処
冬枯の木ずゑをわたる嵐こそよるかたもなき心なりけれ
半紙
【題出典】『普賢経』
【題意】 空中の風の依止する処なきが如し
(心に実体はない。それは)空の風に拠り所がないようなものだ。
【歌の通釈】
冬枯れの梢に吹く嵐は、拠りどころもない心なのだ。
【寂然の左注・通釈】
普賢菩薩の法を修する行者が、六根の罪を懺悔し、観想が成就する時に、十万の仏が頭を撫でて行者に告げておっしゃっることには、「心を観察してみると心はない。その心は、妄想から生まれる。空の風に拠り所がないようなものなのだ。」
【考】
心に実体がないことを、拠り所のない風にたとえたのが題の文。さらにその風を「嵐」と詠み冬の歌とした。吹き荒れる冬の嵐は、さびしく不安な心をさそうものであるが、そこに妄想から離れた自在な心の姿を見る。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
●確かに、ぼくらの「心」は、妄想から生まれ、ぼくらを苦しめる。「妄想から離れた自在な心」をこそ求めたいもの。なかなか難しいことだけど。