寂然法門百首 25

2020.7.14

 


 


 

重霧翳於太清


玉章(たまづさ)は霧にまぎれて雁金(かりがね)の書き連ねたるかひなかりけり

半紙

【題出典】『法華文句』一・上

【題意】 重霧翳於太清  重霧は太清を翳(おお)い

  (光宅の注釈は甚だ細かい。)濃い霧が天を覆い(月日星の光が翳るように、経文の真意も紛れてしまう。)

【歌の通釈】

文は霧に紛れて(経文の真意は細かい注釈に紛れて)、雁が書き連ねた甲斐もないことよ。

【考】
光宅寺の法雲法師は、あまりに細かく注釈を作ったので、逆に真意を見失ってしまった。これを、雁が空に書き連ねた文が、霧に紛れて見えなくなることになぞらえて表現したもの。秋の歌題である「霧」「雁」を詠み込んでいる。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)


あまりに細かい注釈はかえって有害ということは、こんな昔から言われていたことなのだと感心してしまう。

雁が並んで飛んでいく姿を「文」に見立てるというのは、日本的な発想なのだろうか。それとも、中国に既にあることなのだろうか。

 


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