寂然法門百首 23

2020.6.18

 


 


 

菩薩清涼月遊於畢竟空

雲晴れてむなしき空にすみながらうき世中(よのなか)を廻る月かな

半紙

【題出典】『華厳経』四三

【題意】 菩薩清涼月遊於畢竟空

  菩薩の清涼なる月は、究極絶対の空に澄んで(光を垂れている迷いの三界を照らす。)

【歌の通釈】

雲が晴れて虚空に澄みながらも、憂き世の中を廻る月よ。(煩悩が晴れて究極絶対の空に住みながらも、憂き世の中を廻る月であるよ。)

【考】

菩薩は究極絶対の空に住みながらも、衆生を救うために三界の憂き世をめぐる。これを、秋の「月」が晴れた大空に澄みながら、下界を照らすことになぞらえて表現したもの。澄みきった崇高な秋の月が善く地上を照らす姿に、菩薩の利他の行の姿を見る。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)

「清涼月」というのは、どうしても日本では「秋の月」のイメージになりますね。「華厳経」では、必ずしも秋という限定はないのですが。

この歌を知ると、秋の月に、「菩薩」を見るようになるのかもしれません。

 


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