100 奇跡的な完結

1999.12


 

 

 昔から何をやっても長続きしたことがない。いわゆる熱しやすく冷めやすいというやつで、はじめた頃は異常に入れ込んでも、必ず冷めてしまうのだ。

 なかでもスポーツはどうも肌があわないようで、体を鍛えよという先生の指導で中学2年の時に嫌々バスケットボール部に入ったが、1年で退部。高校では何を思ったのかこれは自主的に陸上部に入ったが、数ヶ月で退部。もっとも中高6年間、生物部はずっと続けていたのだが、その生物部においても、ぼくの研究は何ひとつ長続きしなかった。

 大学時代には、叔母に勧められてアーチュリーを3ヶ月ぐらいやったが、いざ自分の弓を買うというときになって、やめてしまった。そのあと剣道が半年。これも剣道着は買ったのに、防具を買う段になってやめてしまった。

 就職してからは、大学時代からやっていたボーリングも、マイボールを買ったとたんにやめてしまうし、テニスに半年熱中したこともあるが、それも頓挫。そのあとゴルフをやったが、2年ほどで、新しいクラブを買った直後に突然やめた。スキーにいたっては、一度やって、それでおしまい。これは何も買わなかったから被害はなし。

 囲碁をならったこともある。家内の父が6段という腕前だったから、普通にやっていれば、指導のよろしきを得て、せめて初段にはなれるはずなのに、まったく上達しなかった。「先を読む」こともできなければ、「地を数える」こともできない。そのうえ、地道に勉強もしないし、挙げ句の果てに、負けてもあんまり悔しくないという性格が致命的だった。続けても、自分のバカをその都度確認するだけのことだから、やめてしまった。

 並べていけばきりがないくらい、ぼくの半生は、中途挫折の連続だった。肝心の職業でさえ、教師こそ続けているものの、都立高校を12年勤めたところで突然やめて、私立に移ってしまった。

 唯一続いているのは、結婚ぐらいのものである。これだけは、ぼくの年齢にしてはずいぶん長い。とっくに銀婚式を終えているのだから。しかし、これはむしろ家内がよく我慢したということだろうから、ぼくの手柄ではない。

 何を言いたいのかというと、この100のエッセイが今回で本当に完結したというのは、ぼくにしてみれば奇跡的なことだということなのだ。これもひとえに、激励して下さった読者の皆さんのおかげである。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。ご愛読ありがとうございました。