82 団塊の世代への応援歌?

2014.6.1


  たまたまつけたラジオから、「ブラザーズ5」と名乗る連中がしゃべっているのが聞こえてきて、そんなのいたか? と思って聞いていると、かつてのフォーク系の歌手の仲良しが集まって作ったグループらしかった。ネットで調べると、メンバーは、杉田二郎、堀内孝雄、ばんばひろふみ、高山厳、因幡晃の5人である。この中で、高山厳が、意外だと思われる方も多いかもしれない。今から20年ほど前に、「心凍らせて」という演歌の名曲で一躍有名になった人で、ぼくもこの歌に魅せられてカラオケでもずいぶん歌ったものだが、彼がフォークグループの「ばんばん」のメンバーだったことは、その時は知らなかった。

 この高山厳が1951年生まれ、ついでに言うと、ばんばひろふみは1950年生まれ、杉田二郎は1946年生まれ、堀内孝雄は1949年生まれ、因幡晃は1954年生まれである。堀内孝雄がぼくと同い年となるわけだ。

 さて、彼らが何で今更グループを作って、コンサートを開いているのかしらないけれど、ラジオで杉田二郎(だったと思う)が言うには、「団塊の世代を応援したい」という思いがあるのだという。「団塊の世代」という言葉には敏感なので、え? って思った。

 言うまでもないことだが、「団塊の世代」というのは、堺屋太一の命名によるもので、1947年から1949年、つまり昭和22年から24年までに生まれた世代のことを指す言葉である。つまり第一次ベビーブームで生まれた世代のことだ。なんで、この時期にベビーブームが起きたのかなどというのは、問うも愚かなことだけれど、男が戦争から続々と帰ってきて、結婚したからに他ならない。だから「ブーム」というのとはちょっと違うと思うのだ。別に子どもを産むことが「流行した」わけじゃない。「はやりだから、産もう。」って思ったわけじゃないだろう。ま、いいけど。

 ぼくは1949年生まれで、団塊の世代の掉尾を飾る(?)のだが、なぜ最後になったかというと、父がシベリアに抑留されて、昭和23年の夏まで帰ってこられなかったからだ。それでもまだ帰ってこられたからいいようなものの、シベリア抑留になった日本人はは100万人ほどで、そのうち30万人が亡くなったと言われている。(諸説ある。)父は復員して、すぐに見合いをして結婚。翌年24年の10月にぼくが生まれたというわけだ。

 で、何で、えっ? と思ったかは、おわかりいただけると思うのだ。「ブラザーズ5」の面々の中には「団塊の世代」に属する人は堀内孝雄だけなのだ。そういう5人が、なんで「団塊の世代」を応援するのだろうか。「共感」からではないだろう。ぼくより5歳も年下の因幡晃などは、ベビーブームも去ったあとの、どちらかというと「白け世代」の人間だから、とても「共感」なんてできっこない。とすれば、結局、「団塊の世代」が多いから、そこをねらえば売れるということなんじゃないかと勘ぐってしまうわけだ。なにしろ、この世代は、806万人もいる(いた)のだから、巨大な市場である。wikiによれば、1947年(昭和22年度)は267万8792人で、1948年(昭和23年度)は268万1624人で、1949年(昭和24年度)は269万6638人、ということで、1949(昭和24)年がトップである。ちなみに、少子化が叫ばれている現在はどうかというと、2013年が約103万人だから、いかに1949年がすさまじいかが分かろうというものである。

 これもついでに言っておくと、ぼくが横浜市立日枝小学校に入った時は、教室が足りず、午前・午後の二部授業だった。いつそれが解消されたか記憶にないが、とにかく、クラスが8クラスもあるのに、それでも二部授業というのは、すごい。学校の近くには、母子家庭専用の寮もあって、そこから通ってくる友達もたくさんいた。なぜ母子家庭専用の寮なのかということは、そのころは分からなかったが、当然、父親が戦死した家族が多かったからだろう。

 まあ、そんなこんなの「団塊の世代」であり、やがて、その連中が全共闘運動の中核となり、更には、その後の日本の中でどうも劇的に寝返って、今のヒドイ社会の根幹を作ったということらしく、今や「団塊の世代」は、決して快く思われている世代ではない、どころか、蛇蝎の如く嫌われている世代なのではないか。それなのに、「団塊の世代」が一人しかいない「ブラザーズ5」が、どういう風の吹き回しで、「団塊の世代」の応援歌を歌う気になったのか、やっぱり理解に苦しむわけである。

 その歌というのが、「漕げよマイケル」の替え歌で、ちょっと聞いただけだからよく覚えていないが、「お花が咲いた〜、うれしいな〜。」とか「お腹が出てきた〜、いいじゃないか〜。」てな風の歌詞だった。まったく、なに考えてるんだか。いい加減にしてほしい。


 

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