1 真夏のユリ

2007.8


 若い頃と違って、近ごろでは休みの日でも朝早く目が覚めてしまう。典型的な年寄りの症状だが、これはこれで悪くない。早起きは三文の得というが、その通りのこともある。

 今日も6時前に目が覚めてしまい、あまりに暑いので窓をあけて少しは涼しい風を取り入れながら、NHKのラジオを聞いていた。高知の牧野植物園だかの人が、夏の花について話し出した。夏の花といえば、サルスベリぐらいしか思いつかないなあと思っていたら、ユリの話だった。

 テッポウユリというのがあるのですが、これは5月に咲きます。ところがこれによく似たユリで、台湾原産のタカサゴユリというのがあるんですが、これは8月に咲きます。台湾では、台湾ユリといっていて、私が台湾に行ったときもたくさん咲いていましたが、高知で私が初めて見たのは1970年、須崎でした。これを見たときは非常に驚きましたが、今では西日本のいたる所にあります。どうも台湾から輸入した材木に種がついていてそれが須崎で芽を出し、広がったのではないかと思っています。特徴は、テッポウユリは真っ白ですが、これは紫色の筋が入っています。

 ここまで聞いて、あ、それなら今うちの庭に咲いているやつじゃないかと気づいた。我が家の庭には、誰も植えたことなどないのにここ数年、いたるところにユリが芽を出し、この暑いさなかに満開となっていて、きれいなものだから切り花にして楽しんだりしているのだ。しかし、これには紫の筋などない。真っ白だ。じゃあ違うのかなあと思って聞いていると、こんなことを言い出した。

 このタカサゴユリに似ているものに、新テッポウユリというのがありまして、これは真っ白なんです。これはタカサゴユリとテッポウユリの雑種とも言われていまして、関東でもよく見かけます。いずれにしてもこれらのユリは、種から芽を出すとその年にもう花をつけるのです。普通のユリは花をつけるまで3年ぐらいかかるのですがね。ですから猛烈な勢いで増えているわけです。

 まさに、これだ。今まで、どうしてこんなところに生えてくるのだろうと思っていたが、なんというユリだろうと考えたこともなかった。種はきっと鳥が運んでくるのだろうと思って、ネットで調べてみると、何と風に運ばれるのだという。ユリといえば球根だから、種で増えるとは思ってもいなかったのだが、その種が風にとんで広まるなんて想像もしなかった。今度、その種をじっくりと観察してみよう。



我が家の新テッポウユリと思われる花はこちら

 

Home | Index | Next