ここ数年、ヒット続きのアネット・ベニング。緑の瞳と焦茶色の髪。くっきりした唇。注目のまとです。
96年ジョン・ウッド監督・主演の『リチャード三世』。16世紀が舞台のシェークスピア劇を1930年代におきかえて映画化した傑作です。
アネットはエリザベス王妃役。義弟・リチャードの陰謀で、夫たる国王、実弟、2人の王子が殺され、みずからも、死ととなり合った宮廷生活に身をおかざるを得なくなります。
王妃ともなれば、王子の朝食の世話をするにも絹のガウン。晩餐用のイブニングドレスは、紫色の地模様で裾をひいています。
デザインは、ドレープやフレアーといったベーシックなものが主。なのに威厳があるのは、どの服も鈍い光沢をはなつ、極上の絹ばかりだからです。
海が見える宮殿のテラスで、一度だけ、黒地に紫の花模様のプリントドレスを着ていました。黒い麦藁帽子の縁には、紫の花かざり。真珠のネックレスとイヤリング。肘までの黒い長手袋。
ファッションは、1920年代に現代の基礎が築かれ、30年代に洗練の時期をむかえます。モダンだけれど重厚なアネットの装い。そのなかでひときわチャーミングなのは、カールのきいた短い髪です。
クラシックとモダンがともに香り立つ、アネットのお洒落。いかにも30年代風の贅沢さがありました。