映画を見たとき、えーっこのしようもない男を・・・?
と、愕然とする程、魅力の無いキャラクターでした。ダンスニーって。
嫌な予感をひきずって行った4月末の大劇場。
でも、世間知らずなおぼっちゃまだけど、純粋で一途な好青年になっていて、まずは安心しました。 まあ、、好みのタイプじゃないけど、はっきり言って。しょうがないね ”ひきたて役”なんだし時節柄。
そんな訳で、メルトゥユが、ダンスニーを誘惑し、「もしかすると本当に恋だったかも・・」と、まんざら嘘ばかりでも無さそうに言う 最後の方の場面の気持ちが、よく読めなかったのでした。お顔の美しさに惹かれたのかなぁ とか思ったりして。
でも今回の東京公演では、、色々な場面で説明が増えた事、そして何より、ダンスニーがとても魅力的になっていたので、ようやくストーリーが読めた気がしました。
そこで、劇や、ビデオを ご覧になれない方の為に、ストーリーを私なりの解釈で、けれど なるべく私情を交えず、お伝えしたいと思います。とは言え、大苦手な分野なんです理路整然って。ですから、大劇場から手直しされた所を注目しつつ、「多分」とか「と思う」が省略されてはいるものの、”だいたいそんなとこ”程度の解説だということを、お断りさせて戴きます。
舞台は1830年のパリ。
華やかな貴族達の社交界にも、財力を持った市民達の台頭によって影がさし始め、、人々の価値観にも変化が生まれようとしている。(今回、時代設定の説明が増えました)
ヴァルモン子爵は、没落しかけた家名を、社交界を上手に渡り歩くことで復興させた立志伝中の人。
メルトゥイユ侯爵夫人 は、14・5歳で、親の命ずるまま結婚をし未亡人と言えども貞淑を強要される時代にあって、密かに恋の遍歴を楽しんできた「知恵」のある女。
(二人のキャラクター設定がより多く語られます。)
かつて恋人同士だったこの二人は、もっと自由に恋を楽しむ為に別れて、それぞれ仮面を被って恋愛ゲームを続ける事で お互いを刺激しあう と言う関係。
そうした中、侯爵夫人の夜会で、ヴァルモンが新たに目を付けたのは、貞淑の誉れ高い、トゥールベル法院長夫人。 あけすけなヴァルモンの視線に目を反らすトゥールベルと 彼等を鋭くとらえるメルトゥイユ。(この劇はこうした各々の登場人物の表情が、物語の大切な布石になっているので ぼんやりしてられない。)
夜会が終わり、メルトゥイユは、かつて自分に背いたジェルクール将軍に復讐するため、彼の婚約相手であるセシルを手にいれるようヴァルモンに依頼する。その代償に自分を、との条件で。
しかしヴァルモンは 先に目を付けたトゥールベルの方に惹かれ気乗り薄。
もともとメルトゥイユは セシルにはダンスニーを近づけようと目論んでいて 先の夜会で二人を紹介するが、セシルの母がじゃまをするし、ダンスニーは内気なおぼっちゃん。なかなか先に進まない。
ダンスニーが恋心を打ち明けられないまま結局 セシルはロワールのローズモンド邸に行ってしまった。
ローズモンドはヴァルモンの伯母の館であり、そこには夫の長期出張の間に滞在中のトゥールベルが居た。
ヴァルモンは熱く切ない胸の想いを訴え、激しくトゥールベルに迫る。深い信仰と夫への愛を裏切る事の出来ない彼女ではあったが、一方で 投げかけられた恋の炎に身を焼き尽くしたい想いが自らの心に芽生えている事に気づき苦悶する。
その一方でヴァルモンは、ダンスニーに恋の手ほどきをし、「女は強引に迫られるのを待っている」と教える。
(これまで武術に励み、セシルに出会ってからも 「優雅な身のこなし、綺麗なドレスを誉め、共に歌ってうっとりする」だけで幸せそうなダンスニーにあきれ果てつつも 次にセシルに会ったとき「綺麗なドレスだね」と言ってみせる場面が増えたのは、単純な女心をからかう と言う事ばかりでなく、「気持ち」を掴むということに関心を持ったと言う事かもしれない。)
再びローズモンド邸。ヴァルモンはダンスニーからの手紙をセシルに渡し、返事を預かるので部屋の鍵は開けておくよう指示しつつ、トゥールベルにさらに激しく迫った。けれど「夫人の方から身を投げ出すまで」と 今一歩の所で踏みとどまる。この事はメルトゥイユからも責められることとなるが、彼自身 今までの自分とは違う心の動きに一瞬のとまどいを覚えたからだった。(なにかが違う・・と自問するシーンが増えた)時計の音に我に返り、迷いを打ち消すようにセシルの部屋に向かう。
翌日。メルトゥイユはロワールを訪れ、教会で懺悔を終えたトゥールベルと出会い探りをいれる。その後ヴァルモンとも出会って、セシルを自分のものにした事を聞く。「恋してない女には早いのね」ジェルクールへの復讐という初めのもくろみより、今はヴァルモンのトゥールベルへの想いが気になるメルトゥイユだった。
そこに待ちきれずダンスニーがセシルに会いに来た。ちょうど教会に来る途中のセシルに出会うが、彼女は 自分の腰に手を回しながらすれ違うヴァルモンに怯え、言葉無くうつむくだけだった。
「今度こそあなたを この手に」と恋のときめきをうたうダンスニーに対しセシルは会いたい気持ちを抑えて彼から離れてゆく。
オペラ座前で、傷心のダンスニーを友人達が慰め、別の恋を探すように励ます。(次々カップルになって踊りはじめる。)そこにジェルクールが別の女性と現れた。彼にむかって行くダンスニー。(大劇場では、二人の女性の中の一人を強引に奪って踊り出す。)何度も突っかかって行くのだけど 軽くいなされてしまう。
無力な挫折感におそわれそうなその時、メルトゥイユから食事会に誘われる。
トゥールベル邸の客間。夫からの愛情に満ちた手紙や、司祭からの励ましでヴァルモンとの事に決着を付けようと彼に会ったトゥールベルではあったが、その切ないまでの求愛に墜ちてしまう。
象徴場面で セシルが現れ、ヴァルモンをダンスニーと間違え慕う姿、ヴァルモンと知って拒絶し逃れ去っていくのを見て、自分のものになったと思っていたセシルの 心までは奪えなかった事への虚しさにとらわれるヴァルモン。変わって、メルトゥイユが中央から現れる。ようやく約束を果たし、再び愛し合える筈と喜びのうちに抱き寄せようとする彼を冷たくさえぎるメルトゥイユ。
トゥールベルに恋心を抱いたヴァルモンを許せないメルトゥイユは その嫉妬の中にある彼への思いが「恋の鎖」として自分を縛っている苦しさに耐えられなかったのだった。
「目には見えない鎖だから 縛られても二人は自由」と言う男の気持ちとのすれ違い。しかし結局、真実の心がメルトゥイユだけにある事を証明する為にトゥールベルを捨てる決心をする。
そして仮面舞踏会で、ヴァルモンは法院長から夫人を奪って踊り、やがてメルトゥイユとトゥールベルとの間に立った時、メルトゥイユを選んだ。
トゥールベルは崩れ倒れて夫に抱かれながら去って行く。(法院長ってトシなのに力強くってステキ)
メルトゥイユの部屋。急に踏み込んだヴァルモンは、そこに居たダンスニーに セシルが探している事を教える。
急な事態に 初めはとまどうメルトゥイユとダンスニーではあったが、ダンスニーはセシルがまだ自分を想ってくれている事、また、政局不安の今 彼女に想いを伝えたい衝動にかられ、メルトゥイユからの誘いを「勘違いした」と、非礼を詫びる形で退室しようとする。彼との関係に水をさされたメルトゥイユはヴァルモンの企みをつい暴いてしまう。
メルトゥイユ。「本当の恋だったかもしれませんよ」微笑み、冗談めかして言いながら見せる寂しげな表情。そこから来る怒り。
ヴァルモン。初めは 嫉妬も手伝ってダンスニーを遠ざけ、メルトゥイユがダンスニーを今までの男達と同じようにからかっているだけだと思っていのだが、ルール違反の暴露をしたメルトゥイユの心の奥の寂しさに気づき言葉を飲む。
ダンスニー。気の良いお坊っちゃんの一面をのぞかせてメルトゥイユをかばったりしていたが、セシルを想い出し自省の念にかられ、そして意外なヴァルモンの企みを知って驚きが怒りに変わる。
そして自らが原因とはいえ「決闘」という言葉に愕然とするメルトゥイユ。
(この三者の 一瞬の間の心の動きがとても見応えがあります。)
決闘でヴァルモンは空を撃ち ダンスニーは横に外して撃った。
ダンスニーを案じたセシルは 戦火が迫ろうとしている公演で彼に再会し 彼の愛を確認する。(ダンスニー、”男”になってたのね。うんうん)
メルトゥイユ邸。執事達を残し全ての使用人が去った大広間で盛装して佇むメルトゥイユ。
「形を崩さず、心を弱めず、この世界で位置を占めるために 時にはあなたとさえも戦っていた。
パリか崩れようとしている今、やっとあなたに仮面がはずせます。」
最後の時を過ごそうとおとずれたヴァルモンとの二人だけの舞踏会が始まった。
過去の仮面を一枚一枚はずすように、軽やかに舞う二人。
戦火の真っ赤な炎と響きわたる砲声が 至福の宴の 切ない終焉を予感させる。
長々 失礼いたしました。
いろいろご意見ご感想が出て来そうな作品ですね。物語の内容自体の、特に、宝塚で演じられるという事の問題性ということ、それと、キャスティングの事。
「さよなら公演で こんな悪者の役ってかわいそう」というのを結構耳にしました。へえ そうなんだ。どうしてかな?今までと違うイメージを持つ役を演じるのって、「学校を卒業」する者としては有り難いと思うだけど。特に高嶺さんのように ワルを演じてもどこか優しげな雰囲気を醸し出す人にはぴったりの気がしたけど。 なんと言ってもお衣装、照明効果、全て綺麗でしたもの。
”失楽園”を肯定はしないけど、理解は出来るし見てみたい という人って多い。
神様だったらお許しになるかしら この二人。でも 俗人は見て感じて楽しんじゃう。
清く正しい舞台を観、愛してきた方々のお気持ち、分かる気もするけど、多分わかってないのね。私。
他の劇団にないカラーやポリシーを保つことは とても大切だとは思うのです。
面白きゃいいってものでもない。でも いつも水戸黄門やシンデレラみたいじゃつまんない。
つまんないって言えば 今回、せめてもう一曲 あの方のお歌があって欲しかった。
東京公演では、青年らしい一途さに加えて、まっすぐに生きる男の強さが伝わり、メルトゥイユが誘惑した気持ちが理解出来るようになったけど、でも・・・。
この欲求不満を ぐぐぐっとエネルギーにためて 一気に9月に炸裂させちゃうぞ。
すっきりたっぷりシアワセ気分になれる作品を、期待してます中村先生。
階段の上から 手摺りに乗って滑り降りてくるところの格好良さったら! もうあと10メートル位滑って戴きたいわ。 こういうキザのキワミが最高にお似合い。
もっと好きな場面は その前の、銀橋でダイスを振るとこ。 美しい指先の動き。もうあと10回位振って戴きたいの。へんだね、それは。
死の世界に引き込まれてゆく苦悶の表情もだーい好き。 でも最近、親心が入っちゃって「もう 疲れて御病気になっちゃうといけないから止めて」って言いたくなるのです。
だいたい 今回、ハードなダンス一手引き受けという気がします。
ブロードウェイ・メロディ
黒燕尾っていうのかな あのぴしっと決めたスタイルも さっすがの存在感。
ハーレムナイトでもそうだけど 星奈さんとの組み合わせって大人っぽくて、ゴージャスな雰囲気。 安心して観ていられる。
4月27日3時からの舞台の時、
「夜明けまでの束の間に 命燃やそう 闇を焦がす恋燃え尽きても」
のところが 最高に決まったの。あまりの 歌唱力、発声の妙に 客席の空気もピタッと止まり その後ウワッと感動が広がって・・。バックコーラスとのタイミング等いろいろな条件が生んだ神様からのプレゼントでした。
みんなそうだって言えばそうなんだけど、よくあんなに踊れる。高いジャンプとか・・。たくさん下に着ていらっしゃるのでしょう?
「トゥ ホッート!」のあの方の後ろで、「フリーッ」とか言ってみたくて 密かに踊ってみたけど えらいこと。あまりの息苦しさと 我ながらの見苦しさに 早めに倒れ込み、次のユキさんの「ゴールデン・サンセットおおごんのー」でよみがえると ちょっと元気になれる。あなたも お試し下さい。
フィナーレ ゴールデン・ファイア
さよなら公演お約束の 三人のバトンタッチシーン。
4月の時、声のトーンが、特にはなちゃんが バランスとるの難しそうだったけど、すっかり息があった三人になって、しみじみ良いメンバーだなと思う。
ややこしい問題はよく分からないけど 多分お互いに辛い事が多かったかも。でも、だからこそ、個性の違う男役として高めあってこれたという部分もあったのではないかしら。
卒業されても きっと幅の広い素敵な女優さんとしてご活躍されると信じてます。
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