9月19日
ポスターの評判は芳しくないし、公演案内の「物語」では、ご登場場面が少ないのではと言う懸念あり、組生の数が少ない分、元気のない舞台だったら・・ その分 轟さんが頑張って また お痩せになったら・・と、あれこれ ちょっと心配でした。
でも 開演の音楽が流れ あの方の重厚なお声でのアナウンスがあった時から、なぜかホッと肩の力が抜けたのでした。・・いいえ、緊張はしてたのだけど、不安な気持ちが消えた・・・こんなふうに期待して何かを待つ事が出来る幸せに包まれた・・というべきかもしれません。
その時は なんとなくそう感じただけだけど、後から思うと、この気持ちこそ、この物語のテーマでもあったように思うのです。
かけがえのない想い いくつも つみかさねてゆく
憧れの方の晴れの舞台の開幕を待つ私。
人に憧れの気持ちを持てた事、そんな私を見守ってくれる人達。
おおげさだけど、人生を振り返る時があったら、今のこの想いをきっと思い出すでしょう。
観終わって、ぼーっと外に出て、ホームページの方々にお会いした・・。
だけど、なんて言って良いのか、言葉が見つからないんです。
「すてきだったね」「うん。きれいで良かった」とか言うんだけど、なんか(?)と、顔を見合わせて見つめあう合う私達。(どなたと見つめ合ったかあまり覚えてない位ぼーっとしてた)
なんなんだろう?轟さんは 本当にさすがの存在感で、美しさも歌唱力も遺憾なく発揮された舞台でした。作品も適当に分かりやすく、悪くないみたい。でも「良かったあ!」と言う言葉にはならないの。
そして、「レ・シェルバン」。まあ!最初から羽を背負って・・。わあ!ジゴロ、セクシー!やっぱりこうでなくちゃあね。・・レ・シェルバンのページのご報告そのままに素敵な轟さん。最高!!
でもね。ホントの事言うと途中涙出そうになった。だって いっつも花ちゃんとたかちゃんが仲良しでウチのとむちゃんひとりぽっちなんだもん。さみしいじゃん。
というワケで、というか、ワケが分からないまま出待ちの群の中へ・・。
「私達の待っていた日がきました。 これからも轟さんについて行きます」
ファンクラブの方達が声を合わせてのメッセージ。そうね。こんなにたくさんのファンのパワーがあるんだもんね。さみしくないかも。と、早くも立ち直りの兆しをみせる私なのでした。
9月20日
多分、入りの時はいつもそうかもしれない、少し固い表情の轟さん。今日もやっぱり緊張感ただよう雰囲気でしたが、小さいお子ちゃまファンがプレゼントを手渡された時は やっぱりやさしい笑顔を返していらっしゃいました。
開幕のアナウンス 「雪組の とどろき ゆうです」 何度聞いても良い響き!
幕が上がり、黄泉の国から届いた光に照らし出される孤高の人。
その憂いに沈んだ眼差しと、心に響きわたる歌声。・・・・
昨日は、雑念にとらわれ、久しぶりに見るあの方のお美しさにただ見とれていたからなのかしら。
なんだか今日の方が、「良かった」と思える。何が良かったんだろう。
ゴースト チャールズがペンダントに引き寄せられて現れ、過去を語る。その彼の思いが理解出来た気がした。 一緒に行きたいというマリー(これはやはり唐突で無理があるが)を引き止め、エリックの愛を伝える時の表情は、「慈愛に満ちた」ものであり、過去でアラベラに結婚を申し込む時の、熱い想いに満ちた、しかもまだ若くて一途であるがゆえの”もろさ”を含んだ表情とは違う。
そうした細かい演技が、歌の表現の深さが、見る側に良く伝わったということかしら。
昨晩考えたのは、この公演は雪組のお別れ公演なのかもしれないということでした。
うーんだから チャールズの轟さんと重なる部分が切なく感じて、「悲劇」じゃないのになんだかやたら悲しく感じる物語なのね と。
うれしい筈のお披露目公演が、なんだか寂しいって、でもそんなに嫌でもない。だって仕方ないもんね。新しい組に希望を持って旅立つ仲間を送り、新たな仲間を迎える席を空けて置くことも・・。
納得して見たから、今日の公演が「良かった」と思えたのかも?そうなのかな。
やっぱりなんだかワケわからないや。何て言って良いか。
ファンでない人達から見たらどうなのかしら。舞台以外の情報を持たない人達は、この作品、役者達を、どう評価するのかしら。
もっと 観てみたい!
帰りの新幹線からの夜景の彼方に、チャールズの寂しげで、けれど毅然として孤独を選んだ強い意志の感じられる眼差しが浮かび、あのメロディがいつまでもリフレインして聞こえてきました。
ありゃーおヤバイ事!終電に間に合わないかも。
後日の物思い
なんとか終電で帰り着いた(1時過ぎ)我が家は 廃墟と化していた。
でも怒れないわ。そりゃあ。
で、慣れない忍耐と不向きな家事をしながら、ホームページでの新しいページ作り・・アホなん。もっと早くに準備しておくべきだったのに。 熱が出てきちゃったけど寝込んでもいられないから、真っ赤な顔に目の下真っ黒のおばけ顔であいそ笑いなぞ浮かべる私。思わず目をそらして恐怖に怯える家族たち・・・。
そんな中、掲示板やwith yuに届いたメールを読ませていただいて、(読むの大好き)自分の考えを整理してみたのです。
「真夜中のゴースト」を どう評価するか。
宝塚観劇経験が浅く、あれこれ言える身分じゃないけど、「お客様のお部屋」でのように夢があって華がある為には、先ずトップが光ってなくては。
この作品では、誰がみても主役はチャールズで、その神秘的な美しさと、過去の勇ましく若々しい姿が光って まさに轟さんならではの華がある。
「夢」の部分でも アラベラとのまだぎこちないまでの一途な愛と、マリーを諭す時の強さを秘めた慈愛と、例によって”ラブラブなりきりモード”で2度うっとり出来ちゃう。
テーマは「永遠の愛」かしら。若しくは、マリーに言った「生きてある幸せ、生きる意味を大切にしなくては」という事かな。ちょっとこの辺 弱いかも。でも余りテーマが重いのもね。この程度で良い気もする。
音楽は宝塚調というか耳に残る聞き易いメロディー。私は好きな方かも。(ショーのジゴロみたいなロック調の方が良いけど) 衣装はちょっと つまらない気もするけど時代設定からしてこんな所だろうね。 髪型とかって評判はイマイチだけど、確かにいつものお美しさはおさえられちゃってるんだけど”芝居がかって”いるんだから仕方ないような・・。
役どころ・・・色の濃い役がお似合いではあると思うけど、今回のゴーストの孤高の貴公子っていうのはあの方のキャラクターそのもの。過去の、戦闘シーンなどもステキだし アラベラに求婚する時のまだ苦労知らずで一途な雰囲気っていうのも悪くない。
・・・じゃあ文句なく良かったって事なんだ。え?でも・・うじうじ。けど けど・・なの。
10月4日
11時公演では、轟さんには珍しく喉の調子が良くなさそう。
大劇場に来る前には、他の方達(ネット以外も)のご感想などを 頭に入れて、ちゃんとした劇評を書いてみるぞ と密かに思っていたけど やっぱりあの瞳の魔力には勝てない。まして、お声が疲れているなんて思ったら心配で つい また 目の周囲半径20センチ以内しか見れない。そこから伝わるものだけが メッセージなんだもの。
でも、3時の公演の時には、多少 お声は不調気味でも、舞台からぴーんと伝わるものがあった。
前の公演が辛そうで、余計に、気合いを入れて見たせいかな。
そして 形で表せない この作品のテーマが 私なりに見えたと思ったのでした。初めて。
「私なり」だから、私自身を納得させるテーマであって、中村先生が意図したテーマとは違うのかも。
それは「変わらぬ愛」でも、「生きる幸せ」でもない。それらは 補足的なものにすぎないと思う。
「孤高の美学」。 チャールズの 時間の中で濾過された精神そのものを見せる作品なのだというのが私の解釈だ。
ラストシーンで見せるチャールズの姿は、例えば「エリザベート」での昇天シーンと似ているけれど、その目の奥の深い孤独と憂愁の影がここまで表現されてはいなかった。
熱く激しい思いを閉じこめ、怒りも悲しみも封じ込めた気高さを ここまで感じさせてはいなかった。
この ラストでの孤高の美しさというものは 今回トップになった轟 悠の技量があって初めて成功したし また 彼女の新たな側面を見た思いがした。
誤解のないよう言えば、「トートを演じるより技量を要した」という意味ではない。同じ「死の影」を漂わせたものであっても両者のスタンスは異なり、そのキャラクターの違いを はっきり演じ分けた と言う意味の技量の事である。 こうなったら是非 轟トートが見てみたいと思う。惨いまでの激しさと、エリザベートへのかなわぬ想いに耐える死の帝王。あぁ〜 気が遠くなりそうに素敵なはず。
10月7日
今日は新人公演の日なので、昼の部も立ち見が出る盛況ぶりだった。
(いつも こうだと良いのに。 震災以来の不況と 組子の人数不足等で満員の日が少ないとか。)
ビデオ撮りがある日でもあって、全体に気合いが入った舞台が展開し、大満足。
ショーのジゴロで「今夜も 俺に抱かれたい女がいる」の科白には、思わず後ろの高校生団体から歓声が聞こえた。雰囲気壊すし品位に欠けちゃうけど でも素直な反響が嬉しい気がした。
今日は、ニコルの姉さんと神戸の友人とで5列目23あたりで観劇し、ショーのフィナーレで、ちょっぴりミーハーしちゃった。ビデオのフィナーレで轟さんの視線に注目してみて。あきれた笑顔のその先に私達 居るんです。大した事じゃないけど 笑って元気に頑張って欲しくて・・。
新人公演を見て
お断りしておくと、どの舞台を見ても、「轟さんだったら」という観点からしか見れない つかえんやつです私は。 で、今回の新公は、いつにも増して練習時間が足りなかったらしく無理もないけど、他の人達が言う程 レベルが高いとは思えなかった。・・・だいたい「レベル」って何が基準なんだろ・・・
過去のシーンでのチャールズ(貴城けい)は 純粋で一途な青年として生きていた。
でも、ゴーストにもその初々しさが出てしまって、「黄泉の国から ふとネックレスの事を思い出して出てきちゃった」みたいな軽さを感じたし 悩みや哀しみがあまり感じられなかった。
霊的なものの「存在感」の難しさを思い知った気がした。はかなく、透明感がありながら 立っているだけでその人格の気高さや威厳を感じさせ”ただならぬ雰囲気”を漂わせる。 それは、一朝一夕で出来る芸当ではないのだと 改めて思った。
10月14日
今日は 舞踊会の日。
11時公演では、もう何も迷いなくどっぷりゴーストの世界の住人になって見れた。
轟さんも すっかりふっきれた(もともと ふっきれてないのは私の方だったかも)雰囲気で、トップとしての自信と気迫、それが気負いでなく今までの延長としての自然な流れとして受け入れたものとして満ちていた。ただ やはり体力的には さぞハードだろうと心配。がんばって!
夕方4時からの舞踊会では、ひときわ目立つ優美な舞い姿を見ることが出来た。
お祭り帰りの鳶職の頭と、芸者との恋のかけひきが粋に表現されていた。
さすがの身のこなしで 美しい表情とあわせてうっとり。「この方のファンですの」って周りに自慢したくなっちゃった。カフェの翠真さんの絵の通りのあでやかな御衣装。よく振りを覚えられたと感心してしまった。だって結構長い踊りだし 複雑な振りだし・・。えらい えらい。
前日、今日の夕飯をいつもより気合いを入れて作ったし 近所の実家にバレないようにいろいろ根回ししたりで、睡眠不足だったからかしら 帰りの新幹線で 全身かみなりが起きたみたいにしびれちゃって・・。こんな所でノタレ死にしたくない。死ぬならあの方の舞台を見ながら夢の続きで逝きたいわ。
10月25・26日
ツアー親睦会 お茶会は、お茶会報告にあった通りです。
お茶会に来てくれた下級生達は みんな可愛らしく、それでいてしっかりした方達で、さすが宝塚なのね と思った。一見普通の子と変わらないけど、上級生をたて、慎みと自己主張のバランスを厳しくコントロール出来る人達。
こういう世界でトップまで上りつめたのですもの。凡人があれこれ悩むのは余計なお節介ってものなのね。
かなり痩せていらしたけど、舞台のパワーは全く衰えることない迫力だから、きっと大丈夫なのね。
少し風邪気味らしいけど。
26日はVISAの貸し切りで 「じじばば」が出ました。
今回 あの方らしいアドリブを効かせる場がなかったから しょうがないね。大まじめでやってるところが何ともおかしい。
帰りは高速バスが 工事と事故で大渋滞。朝帰りがばれちゃった。
千秋楽をむかえて
前夜、花の道で ファンクラブの人達が一人づつお手紙を渡した。
行きの新幹線で書いたのを ホテルに置いてきちゃった。残念。
ファンレターなんてもの、去年12月に生まれて初めて書いて これで3回め。
読んでいただきたいけど、じゃあ それがどうなるって考えると、自己満足にすぎないんだな。多分。
でも、たとえば、こんなしようもないHPでも、たとえ一言でも「見てます」とお声を戴くと嬉しいもの。
自分の為に勝手にやってる事だけど。
だから、あんな風に しっかり自己の目標の為に頑張ってる轟さんだって、そんな一言が嬉しくないハズはないと思う。 一言で済まないのが申し訳ないけど、こんなふうに書きました。
轟さんの舞台に魅せられてから この一年間で 思いがけない新しい自分を発見しました。
まず こうして見知らぬ人に お手紙を ファンレターなんてものを書く事
タイプも ワープロも触った事なかったこのトシで ホームページを開いた事
そこで知り合った方達との交流
夫の赴任先には行かないで 何度も通った大劇場
「いただきもの」のお礼状以外に 文など書いた事なかったここ数年、やっとの思いで書いた
つたない文だけど投稿して掲載された事
たくさんの こうした「初めて」は、すべて轟さんの素晴らしい舞台からのエネルギーで動き
始めたのです。貴女の舞台にかける情熱が 私をつき動かして下さった事 とても感謝して
います。
だいたいこんなとこ。(たまたま、帰ってメールを開けたらニコルの姉さんが同じようなこと言って下さってました。)
翌朝、その手紙を持って入り待ちの列に加わった。 驚く事に、皆 またお手紙持ってる!
それも 朝日の中で見ると 可愛いシールとか貼っちゃって! で、聞いたら「そんなん さっさと書けますやん」とか。・・・なんと公演終了後の出の時も山のようなお手紙。
こりゃあ すごい。
私のだらだら やたら熱くてうっとおしい手紙なんか 読んでらんないでしょうね。
ま いいか。
たくさんのファンに、熱烈なファンの思いに囲まれてこそスターなんだもんね。
どんどん遠くなる寂しさと、人気が高まる嬉しさに複雑な心境。
(・・・この、ファンレターに関しては 何とこの日の「出」の時も皆さん持ってて、感心してしまった。)
それに、寒い中文句も言わずじっと「一瞬の時」を待つ情熱! 当然よね あんなに素敵なんだもん・・
舞台を見る・・・ こちらの感情移入が強いせいか チャールズの 孤高に生きる者の強さ 哀しみが痛いほど伝わった。
プロローグの、城壁に浮かび上がる姿、その表情に 既にチャールズの生きざまが凝縮されて伝わってくる。「亜麻色の髪 風にゆれ・・ 想いの火は熱く 激しくて 過ぎた幻 なつかしむ・・」
たくさんの好きな場面があったけど、特に印象的なのは 弟ウイリアムがアラベラの兄を殺す場面のチャールズさま。 壁際に佇むチャールズが、話の展開と共に表情を微妙に変える。
ただ立っているだけ。目で語る怒り 失望 自責。
マリーからついて行きたいと言われ 「ロマンティックに愛されたい」のシーンも大好き。
優しいまなざしで 諭し、けれど彼女の手をそっと離す時の寂しく けれど決然とした意志が感じられる表情。
そしてエンディング。
「愛することを おそれずに 愛されることに とまどわず
かけがいのない想い いくつもつみかさねてゆく」
もう この歌を この舞台で聞く事は出来ないんだね。
たかちゃん はなちゃん 矢吹さん 他にもたくさんの仲間と作ったこの舞台の幕を 降ろそうというこの瞬間をいとおしむように 大切に歌い上げた轟さん。その熱い心が 響いて 胸を刺した。
幕間の ピアノの前で待ち合わせをちょっぴり後悔した。
案の定、優しくおだやかな笑顔のラディシュさんのお顔を見たら、なんだかいろいろな想いがこみあげてきちゃった。
素敵な千秋楽の舞台を見れたこと 神様に感謝しました。
(プロローグ)
哀愁を帯びた音楽と共に 浮かび上がる城壁。
その前で よみがえる妖しげなゴースト達の群
城壁の上に 黄泉の国から墜ちてきたような光線が注がれると、軍服の貴公子が現れ歌う。
(「過ぎた幻に」)
イギリス式オークションを取材に来た雑誌記者のエリック(和央ようか)は、そこで不思議な雰囲気を持つ首飾りを目にし、新人記者のマリー(花總まり)のために それを競り落とした。
数日後、スコットランドの古城で 貴族達の大舞踏会があると聞き、取材に訪れた折り、その日22才の誕生日を迎えるマリーに、その首飾りをプレゼントする。(ペンダントを胸に付けたとたん 妖しい雷鳴が轟く。)
ポドロー城では、城主バーランド子爵夫妻が主催する仮装舞踏会が華やかに開かれていた。
ダンスを楽しむマリーの耳に ふと哀しげな歌声が響く。
「想いの火は熱く 激しくて 過ぎた幻 なつかしむ
遠い日の恋 よみがえること
今宵また 夢みて さまよう 」
周りの人々がフリーズする中、一人の軍服の貴公子が現れ、彼女の胸のペンダントに引き寄せられるように近づく。 「あなたは 誰?」マリーの問いに答えず 何かを訴えるような哀しげな眼差しを 彼女の心に残したまま その姿は消えてしまう。
蒼い月の夜空の下、白いベッドが置かれ、夜の精達が踊る。
その夢の中で、マリーは 再び彼に出会い、手をとって問いかけるが 青年は答えず去って行く。
城館のホールで、子爵夫妻は 銀行家から、城の財政が逼迫している事、破産を避ける為に、城を取り壊しゴルフ場を建設するようにと勧められる。
そのホールをエリック達と訪れたマリーは 壁に飾られた肖像画が あの青年である事に気付く。
それは、城主の先祖の一人、海軍将校チャールズ・バーランド(轟 悠)であった。
不思議な思いで肖像画の前に佇むマリーの前に、チャールズが現れ、彼女に過去を語り始ようとするが エリック達が来た為に 一旦姿を消す。そして、子爵が城の維持が限界に来ている事を話していると エリックの様子がおかしくなり、神懸かった声で 城の取り壊しをいさめる。
やがて若者達の前に チャールズが現れ そのペンダントにまつわる過去を語り始めた。
チャールズには親の決めた婚約者のマーガレット(星奈 優里・10月より紺野 まひる)が居たが、彼女は心狭く我が儘な女性であった。一方 チャールズは 幼い頃から心を惹かれ愛してきた召使いの少女アラペラ(貴咲 美里)を妻にする決心をしていた。
ところが この身分違いの恋を利用し 跡継ぎをねらう弟のウィリアムの策略で チャールズがクリミアの戦地に赴いている間に、アラベラは兄と共に命を奪われてしまう。
戦功をおさめたものの チャールズは厳しい状況の中に置かれていた。その逃避先の野戦病院で 命尽きようとする部下から 貴重なペンダントをアラベラとの結婚の折にと渡された。
しかし、アラベラとの愛を心の支えに 命からがら帰国したチャールズを待っていたのは 彼女の訃報であった。 やがて チャールズも亡くなり ウィリアムが家督を継いだのだった。
過去を語ったチャールズは、マリーの首に架かるそのペンダントこそ 彼がアラペラに捧げようとして果たせなかったものであり、せめてアラペラの墓前に捧げて欲しいと依頼するのであった。
エリックは マリーがチャールズに心を惹かれている事への嫉妬から 初めは断るが 仲間の説得もあって 協力する事になった。
そして 彼等が皆で資料室を調べて居る時 不思議な光景を目撃する。
それは 壁のむこうで、アラベラの兄がウィリアムの手にかかって殺される場面であった。そして埋葬する村の名前を聞いたエリック達は村に向かう。
部屋に残ったマリーは チャールズのそばにずっと居させて欲しいと頼む。彼の瞳に見つめられ深い愛にうたれて、自分もその愛に包まれたいと願うのだった。けれど チャールズは マリーを失った後のエリックの悲しみを思い起こさせる。
アラベラの墓は発見された。一方、城を取り壊す話しを聞いたエリック達が子爵を問いつめていると、チャールズが現れ、資料室の壁を壊すよう命じる。すると そこには 昔ウィリアムが[盗まれた]と日記に記した宝石と、 アラベラの兄の白骨死体が発見された。その亡霊の導きで 時間を越えてチャールズがウィリアムの部屋から持ち去った宝石だった。それによって、城は再び維持される事になったのだ。
アラベラの墓にペンダントを捧げながら エリックは、チャールズがアラベラを愛したようにマリーを愛する事を誓う。
この世での思いを果たし 光に包まれて天に昇って行くチャールズ。
「そばにいるだけで 胸がふるえ
そばにいるだけで 心があつくなる
愛することを おそれずに
愛されることに とまどわず
かけがいのない想い いくつも つみかさねてゆく 」
幕