Y’s えげれす... ほへと            
       

郊外旅行編






 
主ページでご紹介したように、我が家にとっての最大のテーマは、お風呂でした。
いつか、たっぷりのバスタブに漬かる、という夢を追いながら暮らす中、
突然、日本の姉から「緊急帰国命令」が発せられ、
ならば!と、
えげれす観光とバスタブめざしてのプチ旅行に行くことにしたのです。


駅前のレンタカー屋さんで、「一番安いの」と言ったのに、言葉の壁は厚く、
結構スタイリッシュなワーゲンがお借り出来ることになりました。
72時間で200ポンドってことは、約46000円。
相場が分からないけど、とにかく もう フルに走らなきゃなりますまい〜!
どこに?
長年住んでいる方にお聞きすると、
プチ旅行なら ラヴェナム(Lavenham)が一番、
中でも スワンホテルがとっても素敵との事。
どれどれ 日本からのガイドブック参照
ふむふむ  良さげ〜♪
では そこに決め!
いざ出発!

ところで
イギリスは、日本と同じ右ハンドルなので走りやすいのですが、
日本に無い「ラウンドアバウト(Roundabout)」というシステムが、なかなかの緊張を要するシロモノです。
(詳しくは、ネット検索してみて下さいまし)

交差点に信号は無く、右からの車に注意しながら侵入し、まるい円周に添って時計回りに走りながら、希望方向に出て行く。
合理的といえばそうなんですが、あまりに大きなラウンドアバウトだと、「希望方向」が どの道だったか分からなくなってしまうのです。
まるで、大なわとびの輪に飛び込むように 運を天にまかせて交差点に入り、そのまま6周くらい回って考える。
そんなエキサイティングなドライブを楽しみながら・・・

まずは 由緒正しい競馬場のある「ニューマーケットNewmarket」に着きました。

Newmarket

ここは、300年以上の歴史を誇り、世界中の大富豪達が集まる競馬場・・・
だそうですが、競馬が行われる時(次回は5月とか)以外は、な〜んにも無い広大な原っぱでございます。
リッチな方々が来そうな優雅なレストラン・・・も無く、
歴史博物館も・・・休館でしたが、
町はずれの中華料理屋さんのチャーシューメンが ことのほか美味しかったから ヨシといたしましょう。


先に、いろいろなアドバイスをして下さった方は、30年ほどケンブリッジに住んでいる方なのですが、
車の走行に関する注意の中、「フリーウエイ(高速)には、コワイから乗ったこと無い」と言ってらしたんですが、
あらら?、いつのまにやらフリーウエイに入っていてるんでない?
おやぁ これって 正反対の方向じゃないんかい?

ということで、途中で ロードマップを買う事に。
ふつう、出かける前に 地図チェックなどするもんでしょうが、
「少しも早く」と出発した私たち。
でも ま、正解だったかも。
もし早めにチェックしたら、行き先を変えてたかな。


ということで、不必要な寄り道を楽しみつつ
ようやく、目的地のバスタブ、いえ、 ラヴェナムに到着しました。

<ラヴェナムについてのミニ知識>
今回ドライブして廻る「イーストアングリア」と呼ばれるイギリス東部地方は、土壌に恵まれ、
中世期には 農業や羊毛などで かなりの繁栄を遂げた地域だったようです。
産業革命以降は、開発から取り残されてしまいましたが、
かえってそれが、「時」をとどめ、
中世そのままの町並みや建物を残し
歴史を今に伝えているのです。

∞ ∞ ∞

ラヴェナムは、そういう訳で、貴重な歴史保存のため
どのお宅も古い建物(特に 柱)を壊す事なく住み続けているのに驚かされます。、

よくガイドブックに紹介されるのは (写真1・2)の建物ですが、
お分かりになりますか?
隣の家に 寄りかかり、支え合うように建っているんです^^。
(1)    (2)


そして、我々の宿泊予定のスワンホテルでございます。
看板も素朴でしょ〜♪


この 家並みの不揃い加減、微妙な傾きでバランスをとっている感じが、すごく面白いんです。
一瞬 頭がクラッとして めまいを起こしそうになりますが・・・。

そして、ホテルの中も、ビックリハウスでございました。
部屋に行き着くまで、細い回廊を果てしなくアップダウンするだけでなく、
足下にも微妙な傾斜を感じながら、つたい歩き状態で進む その壁もかなりの傾きが。。。

それでも、この由緒正しいホテルに、イギリス各地から多くの人々が
 エレガントにおしゃれして訪れ続けているのでした。

そして お部屋に・・・・

窓が小さくて くら〜いお部屋ですが、通ってきた廊下が もっと暗かったせいか、なんだかホッ・・・。

・・・としたのもツカノマ。
おおぉ〜〜まい ごっど!

お部屋中探しましたが、ユカタも(まぁ これはね・・・)、スリッパも 歯ブラシも無いんですけど。
一応、宿泊予約を入れて、お泊まりのつもりで、化粧類は持って来たんですけど、でもアナタ。
上記3種の必須アイテムが無いっつう事は、「バスタブが無い」ってこと以上に辛いんですけど;;。

その念願のバスタブも、私の身長よりも長くて細いので、
「気を付け」の姿勢で横たわると”ジュリエットの最期”って感じに沈み込んで、
肩までお湯に漬かろうと思ったら、かなりのリキ入れてつかまっていないと。
でもま、念願のバスタブ旅行なので、意地で三回入りましたけど。

こう書くと、文句ったらしくていけませんね。
悲しっぽくはあったけど、悲しいワケじゃなく、
いえ むしろ、たいへんお勉強になったと思う次第です。
だって 文句ナシに”悪いのは自分”ですから。

スワンホテルのお料理は美味しくて幸せでしたし、
ゆったりと流れる時間の中で 豊かな感覚を味わう事ができました。
 この感覚をどう言ったら良いかしら
「歴史の中に居る自分」を意識する・・・、
今 ここに居る不思議・・・
旅人として この場所に呼ばれて来た意味を考える・・・
自分の心臓の鼓動に耳をすますような
そんな 静かな時間。

神に感謝です。

そうは言うても、せめて部屋着と歯ブラシくらいあってもね・・・。

・・・・☆・・・・
到着したのが午後4時頃でしたが、まだ明るく、あたりを散策してみました。


ラヴェナム教会
かつての繁栄をしのばせる 石造りの立派な建物ですが、
どこかにゴースト達が居そうな雰囲気も・・・・


ね。アニメに出てきそうな町並みでしょ?

・・・・☆・・・・

イギリスに行ったら 紅茶を楽しんでね、と言われて来たのに
これまで それらしき美味しい紅茶に出会う機会がなかった私たち。
古き良き時代をしのばせるティータイムを求めて
ラヴェナムの町を あっちこっちさまよい、
傾いた家をカフェにしているお店に入りました。

ラヴェナムの家々の外観は どれも明るい色のペンキをコッテリ塗りこんでいるのですが、
家の中の壁も それは見事なまでに 幾重にも塗り込められ、歴史を感じます。
このカフェもそうで、柱が埋もれてしまいそう@@



ここで ようやく、念願のクリームティーを注文しました。

こんな食べかけ画像でスミマセン!
だって なんだか疲れてお腹もすいてたので、
「お預け」くらったワンちゃんよろしく、「ヨシ!」とばかり食べ始め、
写真を撮らなきゃ、と気が付いた時には4個中最後のスコーンで・・・
(ディナーショーの時もそうでしたっけ。R.さまを改めて尊敬〜)
 でもね、
スコーンには、シロップ漬けレーズンがいっぱい入っていて、
そのせいか 柔らかさと深い甘味があり、今まで食べた中で 最高に美味しかったです。
クリームは 生クリームの濃い感じ、ちょっとチーズも入っていそうな。
紅茶は・・・・ふつうかな。
ずっと後で聞いたところ、<伝統的アフタヌーンティーならスワンホテル>だったんです〜。
そうとは知らず、探し歩いちゃいました。
でもま、美味しかったからいいんだい!



そして、翌日は 海が見たい!と思い、そっちら方向(どっち?)に いざ出発!
何故に海かというと・・・

そもそも イーストアングリア地方は 割に単調な景色なんです。
どこまでも真っ平らな草原や畑は、新緑に輝き、
町に入れば 歴史を語るようなロマンティックな家々が建ち並び
それは美しい風景ではあるのだけれど・・・。

長崎・唐人屋敷の出窓から 遠くの海を見ていた伊佐さんみたいに
海の向こうに「けえりてぇ!」と思ったワケでも
「同じ景色ばっかじゃ げっぷが出らぁ」
など バチアタリな事を言うなんぞは めっそ〜もない。

ただ、ちょっと目先を変えて、海もいいんじゃないかと、そんな軽いノリでございます。


そんなこんなで、
キングス・リンという町を抜けてたどりついた海です。
どこまでも続く広〜い広〜い
真っ平らな海でした。

せっかくなんですが、
雨雲が動いていて、なんかコワイ雰囲気で早々に退散。

と、5分ほど走ったら 晴れてきたので、車を停め、
もう一度 ↓ 写真を。
天気が変わりやすく、それによって表情も一変するんです。

少し高くなった道路から見ると、砂浜に、見慣れないものが広がっていました。

草?それとも、岩に藻が着いてるのかしら?
拡大図↓


下に下りてみようかとも思ったけど、寒いので断念いたしました。

さて、次は・・と ガイドブックを探すと、
この海岸から少し行った所に、 ホーカム ホール(Holkham Hall)という、7代目レスター公爵の邸宅を公開しているとのこと。
地図で見ると近そうなので 出発!
だけど、例によって、「ラウンドアバウト」で なかなか目指す方向に進めず
迷宮の虜(とりこ)となりつつも
ようやくソレらしき所を見つけました。
この先 永遠に続いていそうに見える長い垣根(?)を横目に 走って行くと、
「真夜中のゴースト」のチャールズさまが、アラベラと愛を誓ったような庭とか、
たくさんの「離れ」のような建物とか、
その垣根越しに 見えていながら、なかなか正門にたどり着かない。
そんな 広大なお屋敷です。

やっと正門らしきゲートに到着し、し〜んと静まりかえる中を進むと・・・
<本日休館>の看板が。
が〜ん・・・・・・
「日曜日に休んでどうするよ?」と、怒っても始まるものでなし。

でも、庭は、車で回れるようなので、そのあたりをゆっくりドライブしてみました。
まるでサファリパークのように すぐ近くに 鹿の群れが。



立派な角を持った鹿さんの群れを こんなにすぐ近くで見たのは初めてです。
ちょっと怖いけど、幻想的な風景でもありました。



庭の中を かなりの大きな川が流れていて、
のどかな風が吹いていました。
(寒いので 私は車の中に引きこもり)

こんなに広大なお庭を きちっと管理するって大変。
チャールズ様宅も たしかホテルにするっていうお話でしたよね。
など 経済効率を考えてみましたが
日曜営業してないのは「よゆう」って事でしょうね。


そして 未練たらしくゲートを出ると
お手伝いさん宅や、執事の家、とか風の(違ったゴメンね)家々があり、
その一つが、ホテル兼カフェとして営業していました。ほっ。
なぜか ちょっとインド風。

カップにティーバッグ入れた紅茶でしたが、
優雅なお茶のひととき。

でもね、この窓の外、
ほんの数分前までの、のどかな日差しが信じられないように、
突然 雪が横なぐりに吹き荒れ始めました。


日本でも 「三寒四温」、春は、寒さと温かさが交互になりながら初夏へと向かうものですが、
イギリスの天候は もっとヒンパンに変わるものらしく、
皆さま あわてず騒がずの風情です。
そんな中、我ら夫婦だけが 脱兎のごとく飛び出して車へと走ったのでした。
だって これまで何度も「深夜の迷子&ガス欠」の恐怖を味わってきたので 早く帰らんと!
ふぶきと闘いながら車に着くと まもなく晴れたのは言うまでもありませぬ。

帰路は・・・
「ケンブリッジ」は有名なので、標識に従って行けば 迷うことは無いはず、
と思ったのに、
さっきの あの吹雪は「きつねの嫁入り」?
異次元の扉?
かなり長〜く走ったのに、なぜか1時間ほど前に来た町に戻って、
「え〜 信じられな〜い」と叫ぶ私。
片や、その町とは違うんじゃないかと主張する夫(←方向音痴なんだから)。
お互いに、ノドが枯れるまで意見をたたかわし・・・
ている間に 時計は廻り、お腹も空いて
ようやく イーリー(ELY)の街に着きました。
(ちなみに、後で 地図を見たら やっぱり私が言ったとおりでした。不思議〜)


ここは、クロムウェルの出生地として有名です。



イーリーの教会です。
写真でお伝えしきれないのが残念ですが、石造りの とっても立派な建物で、
品格と重厚さにおいて イギリス屈指の教会ではないかと思える美しさでした。
ちょうど夕方のミサが始まり、空腹をおさえつつ参加することに。
立派な着衣の神父さま達が20人以上 列をなして入場されるのも圧巻でしたが
すばらしいハーモニーでのミサ曲合唱に 身震いを覚えました。

昨晩のラヴェナムの静寂と共に 
今、ここに導かれた意味を思うひとときでした。

とはいえ、どうやら平常のミサでは無く、信徒達の参加するべきものでもないような気配。
なんだか底冷えがして、身震いも現実的となり、自然が呼んでる気もして
途中で退出いたしました。(情けな〜)

さて、
ごくアリキタリの食事を済ます頃には 暗闇の街となっていて、
いよいよ「ケンブリッジ」と書いてある標識どおりに家路を急ぎ
もうすぐケンブリッジね〜
と思ったら、なんとま!あなた。
また、イーリーの教会の前に出てきちゃった、と言ったらウソかと思うでしょうか?
今度は 夫も認めざるを得ない(勝ちほこってどうする?)
迷宮ドライブ。
魔のラウンドアバウトの仕業でしょうか。
間違いなく、帰ってきたぜイーリーに。

今、ここに導かれた意味なんか考える余裕など あったもんじゃなく、
真剣に 反省会を開き、二度と間違いのないよう、注意深くラウンドアバウトを何周か廻って
ようやく見慣れたケンブリッジの街・・・
を目前にしながら、交通規制(街の中心に車を通さない)がよく分からなくて、
たぶんね♪
と入った横道で立ち往生。
通りかかったご夫婦に 道を聞こうとすると、
なんと、なつかしい日本語が!
ご一緒に車に乗っていただき、ようやく帰路を発見できました。
神に感謝!大感謝です。
この先、私も 困った人を放っておいたりいたしませぬ。
(いえ、放っておいて差し上げた方が 良い場合もありますが)


今回のドライブは、こうして無事に終わりました。
もう、一ヶ月位走り続けたような 充分さ加減でございました。

ところで、
せっかくのイギリス初ドライブでしたのに、途中の景色などの写真が無いのは、
単に撮影失敗もありますが
私が ひたすら運転していたせいでもあり、
夫は といえば、あまりの恐怖にかられてか、私の運転にケチをつけるなんぞの失態続きで、
不穏な空気が流れたひとときも、いっぱいあったりなんかしたワケでございます。

(夫) 「さっき ラウンドアバウトでウインカーを出さなかったからバスが怒ってた。」   
(私)
「ウインカー 出さなかったって証拠あるワケ?(なにさ。ナビのぶんざいで)と心の声 
  そんな文句言うなら運転 代わる?」
(夫) 「ああ、いいよ。代わったろか?」 

ああ、それは お互いに「死」を意味する言葉だと知りながらの 無謀な会話。


そんなこんなで
ドラマだったら、バタンと車のドアを後ろ手に閉めて出て行く、なんてこともアリかと思うけど、
ここは大都会どころか めったに人も通らぬ農道のハズレだったり。

私たちは大人ですから、
見知らぬ土地で 一人生きて行くよりは 互いに妥協しながら
力を合わせて とにかく家まで帰り着く道を選んだのでございます。

なつかしの
いとしの
古びたドアにカギを差し込んだのは夜11時過ぎでした。

は〜 お疲れさまでした〜〜

さ〜て。
ここまで読んでくださったあなたには 
「信じられな〜い」って笑われそうですけど
それでも、やっぱり行って良かったと しみじみ思うドライブでした。

行く前より もっとイギリスが身近に思え、
もっと「夫が居てくれて良かった」って思えましたもの。
 
すべての出会いに感謝
生きてる事を 
心から神に感謝

またいつか 出来たらバラの花咲き乱れる初夏に
違うイギリスに出会えますように!

 2007年3月末

えげれすほへと
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