11. 支給されたCMYK画像の分解テーブルを変更!
(L*a*b*から再変換!作戦)
 最近はコンシューマ向けスキャナーが安くて性能が良くなったりデジタルカメラの普及が進んだりして、それらのRGBデジタル画像をそのままデフォルトセッティングのPhotoshopでCMYKに変換して入稿されたり、海外から支給された画像がブラック・ゴテゴテのGCR分解のままで入稿されたり。
 そのまま色調修正無しで成り行きOK!っていうなら良いんだけど、こういう画像に限ってシャドーが潰れたりスミっぽくなったりで、色調修正の赤字がゴ〜ッソリ・・・でこちらは真っ青!
 自分の分解テーブル通りのCMYK画像ならまだしも、トンデモ分解テーブルのままの画像じゃ修正が大変、 何とかならない?

 最近はデジタルカメラやら簡易スキャナーの普及、さらにパソコンの普及で誰でも簡単にRGBデジタル画像を扱える時代になった。これはとても素晴らしい事である。

 しかしそれを印刷用のCMYK分解データに変更する際、PhotoshopのCMYK分解設定はデフォルトのままでは日本の印刷には向いておらず、設定をカスタマイズする必要があるのだ。
 さらに印刷用の画像として最適化するにはシャープネスのコントロールも重要なのだが、これらはそれぞれ専門家にまかせる方が無難である。

 また、海外では総インキ量を抑えて印刷特性を重視するGCR分解が主流であり、日本とは印刷機のプリセットから異なる環境で印刷されるので、それをそのまま日本のプリセットで印刷した場合問題の出る場合がある。
 簡単に海外と日本のプリセットの違いを説明すると、海外に比べて日本ではブラックのベタ濃度を高めにセッティングしており、そのままでは特に人物の肌などがスミっぽく印刷されてしまうのだ。

 これらを知らずにアマチュアがCMYKに変換してしまった場合や、海外支給データの色調修正で苦労するのは制作プロダクションや製版現場のオペレータ達なのである。

 自信が無ければ下手に自分でCMYK変換などせずに「印刷用にデータ変換お願いしま〜す。」とでもコメントを付けて渡せばプロがきちんと最適な画像に処理してくれるのに、少し操作が出来るようになると後先考えずに自分でやりたがるのは、アマチュアの悪い癖?



 こういった画像に修正が出た場合、可能であればRGBの元画像データを取り寄せる方が早い事もある。RGB画像はCMYK画像よりも色域が広いので、上手く変換してやれば画像の仕上がりをより良くする事が可能である場合がけっこうある。

 しかし元画像が手に入らない場合や、海外からの支給データの場合はそうも言ってはいられない場合も多い。
 そんな時は一度PhotoshopでLabに変換してしまい、CMYK変換テーブルを最適値に変更してから再度CMYK変換を行う、
「L*a*b*から再変換作戦!」がなかなか効果的なのである。

 L*a*b*に置き換えた状態で、色調修正のうちの明度を先に修正してしまえるので、後の修正が簡単になるメリットもある。
 L*a*b*での操作はあまり印刷業界ではなじみの無い形式なので多少とまどうかもしれないが、L*で明度、a*で赤と緑、b*で黄と青を現す色域の非常に広い色空間なのである。
 このうち面倒なa*b*の操作はとりあえず置いておいて、L*の明度だけをトーンカーブで操作する限りは従来の色調修正とほとんど同じ原理なので簡単に操作出来る、是非トライしてみてほしい。

 その後にこのL*a*b*画像を自分の設定したCMYK変換テーブルでCMYK変換すれば、元のトンデモ変換テーブルデータからきちんと思い通りの変換テーブルデータへ置き換える事が出来るのだ。
 もしも明度を操作する必要が無い場合は、L*a*b*ではなく理解しやすいRGBに置き換えてもほぼ同じ効果が期待出来る。



 この原理を簡単に説明すると、L*a*b*もRGBもブラック(スミ)という概念を持たない色空間であり、そこに一度変換する事で元の色域を保ったままで
(CMYKよりも広い色空間のため、元の色域が保たれる。)CMYK変換テーブルのブラック版生成を解除する事が出来るのだ。
 そしてそこから再度設定したCMYK変換テーブルでCMYK変換し直す事で、思い通りのCMYK画像へと再変換出来るという原理である。

 あとは自分の変換テーブルしだい、これが目的通りにきちんと設定されていなければ、再度トンデモデータに逆戻り・・・!


 いかかでしょう、「L*a*b*から再変換!作戦」をご理解いただけたでしょうか。

 今回は初心者向けの内容ではありませんので、自信のない場合は原理だけご理解いただいて、作業は専門家にまかせたほうがよろしいかと思います。
 CMYK変換テーブルの設定値については、UCR、GCR、UCA値などいろいろな意見があり、また使用される印刷機のドットゲイン値、ベタ濃度値等によっても変わってきますのであえて私からは申し上げません。
 必要でしたら実際に印刷進行される関係者へご相談いただき、そちらの設定値に合わせる方が安全、かつ問題が無いのではと考えます。

 こんな私の経験が、少しでも同じDTPに携わる皆様へのお役に立てれば幸いです。

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